第2話 ご利用は計画的に

 20XX年、遂にタイムマシンが開発された。

 自動車メーカーや電機メーカーなどが次々と実用化へ名乗り出る中、ある懸念も議論されていた。

 そう、某タイムマシン映画の題材にもなったギャンブルへの不正使用に関する懸念である。

 しかし、この問題については開発を主導した国土交通省と文部科学省の合同チームによる会見にてあっけなく幕引きが行われた。

『少し考えればわかることですので、敢えてギャンブルに対する規制は行いません』

 この会見に人々はどよめいた。

 そして、量産型タイムマシンが販売されるやいなや人々はこぞって未来の情報を得て、当たり馬券などを買い占め始めた。人々の狙いはタイムマシン発売のタイミングから秋の天皇賞に定まっていた。

 これで大金持ちになれる。誰もがそう思って浮かれていた。中には仕事を辞める者、全財産をギャンブルに注ぎ込む者、金を文字通り街中でばらまく者も現れた。

 そうして浮かれた熱気の中、開かれた天皇賞。結果は予め得た情報通りであったが、誰もが同じ馬券を買っていたためオッズが天文学的に下降しており、配当は元本割れを通り越し、雀の涙というレベルだった。

 以降、誰もタイムマシンをギャンブルに利用する者はいなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る