第9話 現場
プルルルルルル プルルルルルル
『出ないなー』
岸田の野郎何回かけても電話に出やしねえ。あいつのことだ。寝てるのだろう。そのうち折り返しがかかってくるだろう。
『高井さん!』
そう勢いよく部屋に入り俺の名前を呼んだのは古池だった。
『岸田さんが...』
『なに?』
起きてみたらすでに時計の針が7時をまわっていた。
『もうこんな時間か〜』
14時からバイトだったのでもうすこし寝ようとも思ったがぐっすり眠れたのだろうか、眠気が無かった。
『昨日は楽しかったなぁ』
昨日は本当に楽しかった。蒼蘭の意外な一面も見れたし、変な料理対決になってしまったが一緒に夕飯作ったのも楽しかった。
『昨日はありがと!先いってるね』
そう置き手紙があったので蒼蘭はもういないだろう。
『そういえばあの事件、どうなっただろう』
ふと、この間起きた通り魔事件のことを思い出す。犯人は捕まったのだろうか。
そう思い、ニュースで何かやってないか見るためにテレビをつけた。
(先日起きた通り魔事件についてです)
ようやくきたか。5分程度しか待っていなかったが、ニュースの5分はとても長く感じる。
(未だに犯人の手がかりは掴めてはおらず、捜索が続いている模様です)
まだ、犯人は捕まらずにいるらしい。この近辺の事件だったから物騒な話だ。
(昨夜未明、マンションで殺人事件が起きた模様です)
そんなニュースが続いたが朝からこんなニュースばかりでは気が滅入ってしまうので朝飯を食べることにした。
『こりゃひどいなぁ』
マンションの部屋の玄関で人が死んでると通報があったので来てみたら岸田のマンションだったのですこし嫌な予感がしたが、見事にその予感が的中した。
『岸田ぁ...』
案の定、被害者は岸田だった。しかも、、
『これじゃあ何かの見せしめにしか見えないです!』
そう。古池の言った通り普通の殺人現場とは訳が違う。岸田自体、おそらく無抵抗で滅多刺しにあったようだがその死体を壁に貼り付けているのだ。
『とにかく下ろしてやれ』
そう言って岸田を下ろしてあげ手を合わせ目を瞑る。
安らかにな。岸田。
『高井さん!』
古池が何かを見つけたようだ。岸田を貼り付けていた壁に何かあったみたいだ。
『なんだこれは??』
そこには証拠品でもなければ岸田の残したダイイングメッセージでもない。
壁には大きく[だーれだ?]と書かれていた。しかも岸田のものと思われる血で。
『こいつ、人間じゃありません!』
古池の言う通り、こいつは人間じゃない。
常軌を逸脱してる。
『高井さん。これは私の推測なんですが』
古池には思い当たる節があるのか?
『同一犯の可能性はありませんか?あの通り魔事件の犯人と。このメッセージといい惨虐性といい。同じだと思うんです』
確かに、メッセージの残し方も似ている。
前回のメッセージも同様、メモに被害者のものと思われる血で書いていた。その可能性は十分にある。
『この殺人事件を通り魔事件犯人と同一犯とみて捜査を続けるぞ』
『わかりました』
プルルルルルル、
『もしもし安田です』
『もしもし、お父さんですか?』
『なんだ、菜々か。何の用だ』
『その、最近私の住んでるところで通り魔があったでしょ?だからその、怖くて』
『何かと思えばそんなことか。気にしなくていい。お前の父は警察だ。簡単には手は出させやしない』
『でもやっぱり怖いよ。ニュース見たよ。またあったんでしょ?』
『気にするな。犯人の思う壺だ』
『だって犯人の手がかりすらつかめてないんでしょ?』
『今全力で探している。そのうち見つかるさ。2人も殺しているんだ。追い詰めてやるさ』
『でも...』
『そんなに心配ならお前に見張りをつけてやろう。一人で出歩く際に限るがな』
『うん。お願い。ありがと』
『では仕事に戻るぞ』
『家に帰って来れるのは何時くらい?』
『0時回るだろう。明日は休みにしてあるからな』
『そう。ごめんなさい。お仕事頑張ってね』
菜々が怖いと言うのは珍しいな。何かあったのだろうか。まぁ私にとっては関係のないことだがな。
『今夜は楽しみだなぁ♪歓迎の準備しなくちゃ♪』
私はそう胸を高鳴らせてその時を待ったのであった。
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