第4話 疑い
『明日暇?』
そうメールを送って来たのは一樹だった。
珍しくバイトも休みだったため、
『うん。休みだよ?』
と、返信した。
『明日お前の家行っていいか?』
一樹のその返信を見て俺は嬉しくなり、
『ぜひ!』
即返信してしまった。
そして翌日。
『『『おじゃましまーす』』』
てっきり一樹だけだと思ったら春香ともう1人、初めて見る顔がある。
『はじめまして。安田菜々って言います。朝比奈君のクラスメイトです』
『安田さんは俺たちのクラス委員だ』
一樹の説明で納得した。そういうことか。
『で、春香は何しに来たんだ?』
『でって何よ!菜々ちゃん1人じゃ不安でしょ!付き添いよ』
春香はいじりがいがあるのは変わらないな。
『まぁとりあえず中入ってよ。お茶出すし』
そう言って、3人を中へ招き入れリビングまで案内した。
みんなにお茶が用意できたところで一樹が切り出した。
『さて、本題に入ろう。今日蒼太の家に来たのは伝えることがあったからだ』
『そんな大事なことなのか?』
『ああ。実はだな...』
急に3人は深刻な顔つきになる。簡単な問題ではない事は容易にわかる。
『何があったんだ?』
この沈黙の空気に耐えきれず、思わず聞いてしまった。口を開いたのは安田さんだった。
『先日、この付近で通り魔があったのをご存知でしょうか?』
『ニュースでも見たし、近くだったから妹にも呼びかけたから覚えてるよ』
『はい。その被害者の田中涼介君は私たちと同じクラスです』
『え?』
まてまて。通り魔にあった被害者が俺のクラス?そんなことあるのか?だが、こいつらか嘘をつくようには思えないし、もし嘘だとしても笑えない。だが、問題はそれだけではなさそうだ。
『田中君の遺体のそばにメッセージ?みたいなものが置かれていたみたいなんです』
『メッセージ?』
『はい。おそらく、犯人からのものだと』
そう言って安田さんは携帯の中の写真を見せてくれた。そこにはたしかにそれらしいものが写っていた。
[あ な た の そ ば に い る よ]
なんだこれは。狂気そのものじゃないか。
安田さんは続けてこう言った。
『これを見て警察は私たちのクラス内に犯人がいるんじゃないかと疑ってるみたいで』
『疑われてるのか?』
『そう。それで、今全員に警察がアリバイ調査で聞き込みをしているの。この意味わかる?』
アリバイ調査?まてよ。嫌な予感がしてきた。一樹がその予感を見事に的中させる発言をした。
『唯一クラス内で動きが把握ができない蒼太に1番疑いがかかってるんだ』
変な汗が全身から出てくるのを感じる。視界がぼやけてくる。頭の中で色んな考えが浮かんでくる。今何をすれば良いかが全くわからない。どうしたら良い?わからない。追い討ちをかける様に春香が続けた。
『だから、その、私たちは伝えることしかできないの。かばうことができない』
3人が帰った後も1人で放心状態が続いていた。
『はぁ』
ため息をつくのも何回目だろうか。
『今日中には警察が来ると思うわ』
安田にそう言われてたが、心の準備もまだできていない。あの日はバイトが休みだった。よってアリバイが皆無なのだ。どうしたものか。正直に言うしかないか。
[ピンポーン]
インターホンが鳴った。その音に全身が反応した。おそらく来たのだろう。居留守を使おうか一瞬迷った。いや、潔く出た方が良いかもしれない。
『はーい、今行きます』
気は進まないが行くしかない。そう思い玄関のドアを開けた。しかし、一番最初に見た顔はとても見慣れた顔だった。
『ただいま。お兄ちゃん』
蒼蘭だった。一気に緊張が解けてまたため息が出た。
『なんだ、蒼蘭か』
しかし、蒼蘭は浮かない顔をしてる。
『朝比奈 蒼太さんですか?』
開けたドアの陰から1人の男が出てきた。
『今回の通り魔事件の事でお聞きしたいことがありまして』
と言いながら、警察手帳を見せてきた。
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