第2話 日常

スゥ〜...

『おきろーーーーーーーーー!!!』

『ん?今日は日曜だろ?』

『いつまで休みボケしてんのよ!バカ兄貴!』

『あれ?』

『あれ?じゃないよ!いつまで寝てるのよ!昨日学校行くって言ってたじゃん!』

朝比奈家の平日はいつもこうだ。

俺の目覚ましは基本、妹の怒鳴り声だ。目覚めは良くないが寝坊もしない。

『そういえば蒼太(そうた)?今日は何しに学校に行くの?』

『ふん、気の弱い生徒にカツアゲに行くんだよ。』

『ふーん。で、何しに行くの?』

さすがだ妹よ。見事なスルーっぷりはあっぱれだ。

『出されていた課題が終わったから提出しに行くんだよ』

『頭の悪いお兄ちゃんでも解けたんだ』

『それは酷いぞ妹よ。俺は頭が悪いんじゃなく、勉強ができないだけだ』

『変わんないよ!』

『ん?そういえば蒼蘭(そら)、時間平気か?』

『げっ、行ってきまーす!』

妹に手を振りつつ俺自身も久々に行く学校の支度をしなくてはならない。

俺たちは兄妹2人で住んでいる。

両親は1年前、突然姿を消した。雨の日に俺たちを残して。

妹の蒼蘭はまだ中学3年生。運動神経が良くなんでもできるが、剣道部に所属している。進学はおそらく剣道の強い高校に行くのだろう。対して俺の方は高校2年生だが、妹が高校に入るまで、1年前のあの日から休学しているため学校へは行っていない。ほぼ毎日バイトしてお金を貯めている。今現在の生活費は両親の残した貯金を切り崩している形だ。しかし、全く学校へ行かないわけではない。校長に高卒は取りたいとわがままな相談をした結果、各教科の一月分の課題をやり、提出すれば卒業させてくれるそうだ。楽そうに見えて、そうでもないのが現実だ。

今日はその課題を提出しに行く日だ。

一応俺のクラスの担任らしい先生に会いに行くので制服に着替えながら歯を磨く。

そういえば来月は妹の引退試合だとか言っていたな。

見に行けたら見に言ってやろう。

『次のニュースです。昨日の早朝に発生した通り魔事件についてです。被害者の身元は田中 涼介君17歳。犯人は現在逃走中で…』

ほう、通り魔なんてあったのか。物騒になったもんだ。しかも近所ときたもんだ。妹にも呼びかけよう。

ん?田中涼介って聞き覚えあるな。まぁいっか。

などと考えつつ、うがいをして学校へ向かった。

『よお、朝比奈。調子はどうだ?』

『ぼちぼちですね。すいません。出席できなくて』

『気にするな。お前はお前のできることをやればいい』

この人が担任の塩見先生。30代前半の男性教師だ。生徒思いで、俺のことも理解してくれている優しい教師だ。

『たしかに受け取った。これ、次の分』

『ありがとうございます』

そう言って受け取り、職員室を出る。

『蒼太!』

そう呼ばれ振り返ると、そこには懐かしい顔が2つ並んでいた。

『一樹(かずき)と春香(はるか)か?』

去年のクラスで仲良かった2人がそこにいた。

1人は鈴江 一樹。一樹とは中学の頃から一緒になり、一番仲良くなった友達だ。

もう1人の女子は城山 春香。一樹と同様、去年クラスが一緒で一番仲の良かった女子だ。

『知ってるか?俺たちまた一緒のクラスなんだぜ?』

『本当に?』

あえて、春香の目を見て問い詰めるように聞いてみる。

『ほ、本当だよ?』

『動揺すると言うことは嘘だな』

『嘘じゃないもん!』

春香は基本いじりやすく、反応も面白い。

『蒼太は相変わらずだな。クラスまた同じになれたんだから、たまにはクラスに顔だしてくれよ』

『そうだよ。私たちの他にも何人か同じだった子もいるから馴染みやすいよ?』

『2人ともありがとな。落ち着いたらそうさせてもらう』

と、お互い別れを告げ俺は家に帰るため学校を出る。

今日の1番のビックイベントである登校が終わったのであとは暇になる。

家に帰ると制服を脱ぎながらテレビの電源を入れニュースを見る。すると、昨日の通り魔のことが取り上げられてた。

『犯人は未だ逃走中です。付近の住民の方々は注意してください』

人間死ぬときは運ではなく運命で決まっているものだから注意しても意味ないと、心の中で思う自分がいる。

次のニュースの内容はアイドルについてだったが、興味もないし、もう一眠りしようと思い自分のベットに潜り込んだ。

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