目には目を、嘘には嘘で
蘭子
第1話 プロローグ
いつも通りに目覚めると、そこにはいつも通りの天井が見える。
やはりいくら寝ても夢ではなく現実ということなのだろうか。試しに右頰をつねってみる。
『痛い、よ、な』
自分で何をやっているのかと考えたら呆れて笑えてしまう。
果たして、俺はこれで満足なのだろうか。
後悔はないか?そう自問自答しながら薄暗い部屋の中で考える。
コツ。コツ。
部屋の外で遠くの方から乾いた革靴の音が響いてくる。通り過ぎてくれないものかと願ってみたものの、やはり自分の部屋の前で止まった。
『時間だ。行くぞ。』
そう男に言われ、俺は力なく立ち上がる。
以前の俺なら抵抗していただろう。諦めずに最後まで抗っていただろう。しかし、今はもうそんな気力もないし、自分自身でも驚くほど受け入れている。
男の後ろを付いて歩く。最初の頃は両腕は後ろで結ばれていたが、今では自由になっている。俺がすでに無気力なのを知ってのことだろうか。それとも、今日だからか。
前者でも後者でもどちらでも良いが、気づいた時には[目的の場所]に着いた。
『上がれ』
俺は、台の上へ上がった。
首元に縄がかけられる。
大丈夫。俺の行動は間違っていない。自信をもて。そう、自分を落ち着かせその時を待つ。
なぜこうなったのだろうか。
そう考えようとした瞬間、足元の扉が開いた。
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