勇者ハイネケン、日本に来るパート2
第26話「勇者と日本①」
どうも勇者ハイネケンだ。
元の世界に帰ってきてからは、どうも私の性格の悪い部分ばかりを見せてしまってるル様な気がするが、私が勇者としていかにすごい人間かは、私が田中剛華として日本にいた時の話を聞けばわかるだろう。
ふたたび、私が日本にいた時の話に付き合ってほしい。
さて話をテレビデビューしたころの話に戻すとしよう。田中鋼華あらため、勇者ハイネケンは、バイキングという昼間の番組で奇跡の魔法を見せたのだった。
その後、私は現在売り出し中の魔法使い芸能人勇者ハイネケンとして早くも、マスコミの格好の的となった。バイキングの放送後にはなんと坂下さんのサインをもらうどころか、今度一緒にお酒を飲みに行く約束までしてもらった。
日本に来てからは美味しいものを食べてばかりの私だが、果たして坂下さんはどんなおいしいものを食べさせに連れて行ってくれるだろうか。
そういえば、私に批判的だった大和田教授は実は大気電気学の権威で、私は彼の本を必死で読んでいたのだ。なので、批判された身でありながらも、彼のもとにあいさつに訪れ、ぜひ研究室にお邪魔したいと伝えた。
彼は私の魔法のことは全く信じていないといっていたが、どういう仕組みで炎などを起こしてるかはぜひ研究したいというので、二人の利害が一致した。
後日、研究室に行く約束を取り付けることができた。
私の心は踊った、勇者アサヒにしかできなかった雷の、いや電気の魔法が私の手で実現できるかもしれないのだ。この鋼華君の体では心もとないが、もし現実世界に戻ることができたなら、私は魔法史の歴史に名を刻むことができるだろう。
そんな様々な出会いを経ながら、私とカスミは順調にテレビ出演をこなしていった。出演依頼は続き、私たちをテレビで見ない日はないほどであった。
所属するファイヤープロダクションの方には海外出演はもちろんのこと、日本の研究機関、海外の研究機関、様々なところから協力依頼が舞い込んでるという話を聞いた。
プロダクション的にはもうこれ以上、政府からの要請は断り切ることができないらしい。日本政府としては、研究のために自由を奪うわけにはいかないという紳士姿勢を貫きたいらしいのだが、アメリカや中国の圧力がすごいのだという。
もしかすると、近いうち私の身柄は人知れず何者かに拘束されてしまうかもしれないという噂まで流れている。
「それで、社長は日本政府の研究に協力するっていってるのか?」
2週間ほど前から、私につくことになったマネージャーに尋ねた。
マネージャーの名前は『
ぎんぶちの眼鏡をトレードマークにしていて、いつも髪の毛をひとまとまりのお団子にして後ろで束ねている。願わくばもう少し巨乳である方が好みなのだが、あまり私にドストレートなタイプだと、カスミに嫉妬されてしまう。
事務所も考慮して地味めな女にしたのだろう。
「ええ。社長はなるべくなら政府関係者にはあってほしいとおっしゃってました。あと、ホテル周辺で怪しい動きが多いのも確かです。社長の友達の話では公安も動いてるらしいので……。」
ゆらめきは、どこか他人行儀な話し方をする。ビジネスライクというべきか、もちろん親しげな感じは出すのだが、一線を引いてこちらには踏み込まないという姿勢を崩さないようである。私としては少し寂しい。
「……まあ、日本政府の関係者に会うくらいはかまわないが、研究対象にされるのはかなわないな。正直、私の魔法なんていうのは君たちの役には立たないと思うぞ。」
これは本格的に何か手を考えないとまずいな。
意外とテレビの仕事が楽しくて、調子に乗ってバラエティとかに出過ぎた。公開生放送とかでも魔法を使ったりしたから、今となっては私の魔法を疑うものの方が少なくなってきたような気がする。
プライベートでは坂下さんとか毎日私を酒に誘ってくる。2,3日は付き合ったがさすがにいまは私の方が忙しいし、正直坂下さんが
「ハイネケンさん、それでさっそくなんですが明日文部科学省の方と、あと防衛省の方に会っていただきたいのです。ご理解いただけませんか。」
ゆらめきは、深々とお辞儀をして私に頼み込んでくる。困ったな、女性の頼みは断りづらいし、どのみちいつかは会わなければいけないのだろう。
「分かったよ。ただ本当に話を聞くだけだ、万が一のために事務所の人間は何人か配置してくれよ。」
私はしぶしぶOKした。
「ありがとうございます。助かります。」
「で、明日はカスミも一緒なのか?」
出来ればいない方が話は早いのだが……。
「えっと……カスミさんは明日グラビアの撮影ですね。」
「グ、グラビア!?」
カスミにそんなオファーが来てたのか、しかもカスミもそれを受けるとは……。
「カスミさんもハイネケンさんのおまけのようでいて、意外に人気があるんです。話しはしっかりしてますし、美人で、色気もありますからね。」
それにしてもテレビに出てから2週間くらいでグラビア撮影とは、芸能界は動きが早いな、人気のあるうちに売っておこうということか。さすがやりて社長は行動が早い。
「カスミは、グラビアを許可したのか?」
「許可もなにもノリノリだったようですよ。一週間前にはすでに、打診があったそうなんですけど、さっそく衣装選びに行きたいって言ってましたし。」
そういえば一週間前くらいからあの大食いのカスミがかなり、食事減らしてたな。そうか、なんで急にダイエットなんかと思ったら、グラビア撮影が待ってたのか、もともと自己顕示欲の強い女だ、この機会を逃すわけがない。
「心配しなくてもそんなきわどい撮影はないですよ。載る雑誌も女性向けの雑誌ですからね。かっこよく見せるのがコンセプトです。」
ゆらめきは私が考え込む姿をみて、何かを察したようにそんなことを言ってきたが、悪いが私はカスミにそこまでの思い入れがあるわけではない。グラビアだろうがヌードだが好きにやってもらいたい。
「カスミにそこまで女性人気があるとは思えないがな。」
憎まれ口的に私はそういった。
「ひどいですハイネケンさん。結構人気あるんですよカスミさん。スタッフ受けもいいですし。……じゃあ明日は一時に文部科学省、三時からは防衛省の方と会うのでよろしくお願いしますね。」
あとで改めてラインしますといって、ゆらめきは私のホテルの部屋を出ていった。
私はタバコを手にして、自らの魔法でそれに火をつけて、煙をくゆらせながら今後のことを考える。やはり、このホテルから見る東京の景色はいい。この景色はずっともいてても飽きないな。
それにしても、先ほどどうでもいいといったとはいえ、カスミの体が他のいろんな男の目につ触れると思うとやはり悔しいな。明日はカメラマンもかなりきわどいところまで見るはずだ。
ふーむ、そうだな今夜は思い切りカスミをいじめて遊ぶとしようか。そういえばここ一週間忙しくて、二人きりの時間を取れていなかった。
そう思い私は、タバコの火を消して、隣のカスミの部屋へと出向くのであった。
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