3「異世界の冒険へ」
「⋯⋯え、お⋯⋯俺を死なせないようにする? そんなの誰に言われたんだ?」
「それがね、私もよくわからないの。私の世界にその人物から手紙が届いて、それでそんなことが書いてあったから来たの」
「⋯⋯ていうか、お前死神っていったな。⋯⋯おちょくってんのか?」
「えぇぇ? お、おちょくってなんかないわよ! しょ、正真正銘の死神よ!」
蓮はこの少女が死神だなんて信じられなかった。
あり得るわけがない。この世に死神がいるなんて。
「じゃあ、お前が死神だっていえる証拠があんのかよ」
これでこの少女の正体が判明する。死神ならなんか紋章? とか、呪いの書かなんかもってんだろ。蓮は絶対に死神なんて存在するはずがない、そう思っていた。──が、
「はい、これが死神の紋章よ」
「いや、あんのかよ!!!」
それは黒くて、真ん中の赤色のダイヤみたいなのが太陽に反射して光っている。蓮は少しの間見とれていた。
「で、この包丁を持った超危ないおっさんどーするわけ?」
「んー⋯⋯じゃあこの国のケイムショに連れていきましょうか」
「⋯⋯いや、何で刑務所そんなにカタコトなんだよ」
「だって私この国の事よくわかんないんだもん。この国にもケイムショあるでしょ?」
「いやぁ、あるけどさぁ⋯⋯。まぁいいや。そこに持っていくか」
二人は包丁を持ったいかついおっさんを運んでいく。
ここから刑務所、というより警察署は遠くはない。歩いて約5分程度の場所にある。
しかし、蓮にはそれ以前に気になっていたことがある。
「なぁ、このタイムストップ的な能力のことだけど。⋯⋯まさかだと思うけど時間制限とかないよな?」
「あるわよ」
「やっぱりあったぁーー!!!!」
やっぱりゲームとかと共通なんだな。そう思って蓮は急いで運ぼうとした。時が動き始めてまたこのおっさんに殺されては困る。
──だったが、
「あぁ⋯⋯。疲れたぁぁ⋯⋯。ねぇ、重いからひとりで持ってくんない? 私疲れちゃった」
「いやいやいや! 今の状況わかってる? 時動き始めたら俺死ぬんだよ? おわかり?」
「だったらもう一度殺されかければいいじゃない。私がもう一回時を止めてあげるから」
「あぁ、そうか⋯⋯っじゃねーだろ! 何をひとごとのように言ってんだよ! 死ぬのがどんだけ怖いのか知ってんのかよ!」
「知らなぁーい」
「⋯⋯っくぅ⋯⋯」
蓮は必死に怒りの感情を抑える。もう少しでこの少女を殴りそうになっていた。
それから俺の努力もあり、やっと警察署に着き、殺人犯を警察署の目の前に放り捨てた。
「──時よ、動きなさい」
すると一瞬にして、辺りのありとあらゆるものが動き始める。音も、人も、車も。⋯⋯あの殺人犯も。
その頃、警察署の前は、
「⋯⋯あれ? ガキはどこ行った? ⋯⋯ここどこだ?」
殺人犯が辺りを見渡すと無数の警察官が円を作って男を囲んでいる。
「連続殺人事件の容疑者 霧乃島 惣五郎 、逮捕だ」
「ふぇ?」
間の抜けたような声を出し、殺人犯は手錠をかけられて警察署の中へと消えていった⋯⋯。
──その頃蓮たちは警察署から少し離れた場所にいた。
「⋯⋯で、セレシアはこれからどーすんだよ。俺の傍でずっといられちゃ困るんだよ。⋯⋯その⋯⋯あれだ、トイレに行けない」
「⋯⋯何言ってんの? レンにはついてきてもうわよ」
「え? ⋯⋯どこへ?」
「どこって、私の世界に決まってんじゃない。あなたはある偉い神様から呼ばれてるんだから、あなたが来ないと意味がないわ」
「俺に異世界へ行けとぉ?」
「うん。そうよ」
「またもや即答!!!」
セレシアの即答に圧倒された蓮。
だが、突然異世界に行けと言われても行けるわけがない。何一つわからない世界に行かなければならない。しかも偉い神様と言うがもしそこに行って速攻殺されたら? ⋯⋯大体そういうパターンになることは予想される。
「わかったなら早くいきましょう。とりあえずワープするから私にしがみついて」
「いや、まだ行くとは言ってないよ? 聞いてた? セレシアさん!」
「早く行くわよ! ⋯⋯あぁもう、じれったい!」
「え」
セレシアは俺の制服を引っ張ってワープし始める。
「ワープぅぅぅぅ!!!」
「いやいやいやいや、ちょっと待てい! まだ行くとは言ってな──」
蓮たちは異世界に飛び立った。
──何が起こるか、何があるのかも分からない未知の世界へ。
──何も見えない。暗くて何も見えない。
俺は死んだのか? ⋯⋯だがなんだか宙に浮いている気がした。
「ふぉべでぶぅ!」
「到着したわよ。さぁ早く立って」
「いや、怪我させといていきなり立てと言われましても! 無茶ぶりにも程があるよね!」
地面に直撃した蓮は未知の世界へ到着して早々、セレシアに愚痴を放ちまくる。
蓮たちは濃く、黒く染まった霧のなかを並んで歩く。
前は見えない。後ろも見えない。ただ見えるのはセレシアの綺麗な横顔だけだった。
「⋯⋯何をじろじろ私の顔を見てるの? 顔になんかついてる?」
「いやいや! 何もついてねーよ! っははは⋯⋯」
セレシアの横顔に見とれてた、なんて言えるわけがない。言ったら当然の自爆行為だ。
それから数分間歩き続けてもまだ黒い霧のなかだった。
「⋯⋯なぁ、いつその場所に着くの? 早く帰りたいんだけど⋯⋯」
「まだその神様には会えないわよ。ここから多分数ヶ月かかるかな?」
「す、数ヶ月だぁぁ?! む、無理無理無理! 絶対に無理! 数ヶ月たって家に帰ったら怒られるし! ていうか、俺歩くの本間に無理なんだよ! 数百メートルで即アウトだよ!」
「文句言わないの。神様からの命令なんだから。従わないと殺されるかもしれないのよ」
いや、多分そこにたどり着いたところで殺されるのがオチだろ。
蓮はセレシアの発言は絶対にフラグだと思った。
「⋯⋯とにかくまぁ、セレシアの家まで歩けば俺にしちゃあ上出来だ。そこまでは頑張るよ」
「⋯⋯いや、私の家ここから百キロ位あるんだけど⋯⋯。大丈夫?」
「むっちゃあるやんか! 死ぬわ!」
蓮は暗闇で悲鳴をあげた。
声は遠くまで響く。果てしなく。
「そろそろ小さい町につくころかな。あ、私の住んでる町じゃないよ」
「⋯⋯大丈夫。それくらいわかってるよ⋯⋯はは⋯⋯」
セレシアと蓮は苦笑の状態のまま歩き続ける。
やがてうっすらと霧が消えたように感じた。すると、
「見えた! 町よ!」
「⋯⋯やっとかよぉ」
──蓮がそこで目にしたものは到底町とは思えないような荒れ果てた場所だった。
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