第7話:国家権力

『涼介?』

俺は無言で通話を終了し、携帯をポケットに戻す。

「面白い力を持ってるなお前」

「ああ、人間を止めたからな。んで、あんたも人間止めたのか?すげえ禍々しい気配を背負ってるけどよ」

「気配?......ああ、そういや超能力者は他の超能力者との距離が近いと気配を感じられるんだよな」

男はすっとスーツの内側に手を入れる。

「危険因子群の一人、鋼鉄人間。並大抵の武器では倒せない厄介な超能力者。ただ、組織の監視に同意を得ているため社会に共存する事が許されている」

「なぜそれを知っている!?」

組織の人間しか知らない情報を、目の前の男はすらすらと語る。

「戦闘能力は低く、武術スポーツなどの経験は皆無。戦闘は相方に任せ、自らはあまり攻撃せず囮になるスタイル。実銃はハンドガンのみ経験ありだが滅多に使わない」

まるでプロフィールを読み上げるかのように喋る。その姿がひどく不気味で、気配の気持ち悪さも相まって吐き気がしそうだ。

「さて、以上の情報からお前を倒すのは不可能だ」

そう言って男はスーツの内側から拳銃を取り出した。

日本では珍しいが、欧米では知名度が高い銃が俺に向けられる。

「コルトガバメント......」

「化物相手に威力の弱い銃を使っても意味ないからな。だが、お前の前では無力だ」

「だけど出したって事は撃つってことか?」

「おいおい、日本で発砲すると瞬く間に通報されるぞ。俺は武器を公表した。お前を倒せない武器をな。つまり、お前の敵ではないという事だ」

そう言って男は拳銃を戻す。

「一体何者だ?」

「武藤和樹。ただの公僕さ」

そう言って武藤と名乗った男は胸ポケットから警察手帳を取りだし、俺に見せる。

「ただの警察にしては超能力を知っていたり、ごつい拳銃を持ってたりおかしくないか?」

「警察にもいろいろあるのさ。さて、お前さん。腹は減ってないか?よかったらモーニングでもどうだ?」

お前さんの仲間も一緒になと武藤は言葉を付け加える。

こいつが何を企んでいるのかは知らないが、相手は国家権力。下手に逆らわない方がいい。

俺は黙って携帯を取りだし、トモエさんに電話を掛けるのであった。

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