―迅雷―
「さて……これから、どうするか――」
黒ずくめの男が手にした剣を一瞥し、広場に繋がる大きな通りに視線を移した時。
「いたぞっ! こっちだっ!」
「こ、これは……た、隊長っ!?」
「く、くそっ!」
「漆黒の……化物めっ!」
数十人の兵士達が広場へとなだれ込み、目にした惨状を前に慄きながらも黒ずくめの男を取り囲んだ。
「……全く、愚かな奴等だ……ちっ」
ウンザリしたように兵士たちを見回すと、黒ずくめの男は舌打ちをしながら剣を構え、対峙した。
「相手は一人だっ! この数に勝てる訳がないっ!」
「かかれぇぇっ!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーっ!」
勢い込んで一斉に突撃をかけてくる兵士たちを、黒ずくめの男は蔑んだ瞳で見つめ――。
「頭の悪い。殲滅してやろう」
そう吐き捨てると、その場で強く踏み込んで空高く跳び上がった。
「なっ?!」
「飛んだっ?!」
「な、なんて跳躍力だ……本当に、人間か?」
黒ずくめの男の尋常ではない行動に、兵士たちは驚愕し、足を止めて見上げた。
その場から数十メートルも跳び上がった彼を――。
「なるほど。数十ってところか。ならば――」
黒ずくめの男は上昇しながら俯瞰して状況を把握すると、片手で剣を振り上げた。
「汝、与えよ。深遠の雲。永劫なる轟。煌く閃光。我、授かん。全知、汝、服せよ」
詠唱を終えた黒ずくめの男は空いた腕を伸ばし、掌を刀身に翳した。
「
黒ずくめの男がそう発して剣を振り下ろすと、雷鳴のような轟音と共に刀身が火花を弾けさせる白い光に包まれた。
「な、なんだ?! あれは?! 」
「剣が……」
「何をするつもりだ?」
「構うなっ! ヤツが降りてきたところを狙うぞっ!」
「よ、よしっ! 分かった!」
見上げていた兵士たちが、予想もしない状況と黒ずくめの男に対する言いようのない不安に戸惑いながらも、武器を構えて備える。
「ふん。終わりだ」
黒ずくめの男は下降しながら剣を連続で薙ぎ払うと、雷鳴と共にその刀身から雷撃が次々と放たれた。
「ぐわあぁぁぁっ!」
「がぎゃあああぁぁぁ!」
「ぐががぐぐうううぅぅぅぅ!」
轟音を上げ空から放たれる雷撃に為す術もなく、感電して痙攣する者や雷撃に貫かれて胸に大きな穴を空ける者、燃え上がり黒焦げになる者など、数十に上る兵士の半数以上が瞬く間に絶命していった。
「嘘、だろ? そ、そんな……」
「あ、ぁああ悪魔だ……」
「え、詠唱術なのか? 兵器、なのか? な、何なんだ?」
仲間を襲った得体のしれない攻撃に、残った兵士たちはただ戦慄するしかなかった。
「ただの人間に……こんなことが……」
立ち竦み、後退り、戦意を喪失した兵士たちの前に、白く輝く剣を携えた黒ずくめの男が降り立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます