初恋

「メイドがご主人様の食事を手伝うのは普通にある事なんですが・・・」スレイプニールが困惑しつつ言う。


「ホラ晶、あーんして。


あーん・・・美味しい?」雪乃様は言う。


「あーん・・・はい、美味しいです。」私は雪乃様の膝の上で言う。


勉強の時から私は雪乃様の膝の上に乗っていた。


身長差は30センチ弱で、体型は違いが激しいが、大人と子供というほどではない。


確かに私は座高は極端に低いが、座高が低いという事は「足が長い」という事で、子供っぽさとは無縁だろう。


だが上に兄、姉が四人いるけど弟、妹はいない雪乃様は「お姉ちゃんぶりたい」のだ。


それが既に末っ子あるあるだが「いい?私の事は『お姉ちゃん』と呼びなさい」という雪乃様の命令は「他のメイドに示しが付きませんし、晶さんのほうが歳上です」というスレイプニールのツッコミで何とかナシになった。


兄姉達と歳が離れていてもみくちゃに可愛がられて育ち、歳老いた父親に「妹が欲しい」とねだった事もあった。

兄達や姉達は父親の前妻、または前々妻、前々々妻の子供達で、一番上の兄の子供より雪乃様は歳下だった。


正確な兄弟姉妹の数はわからない。


父親が愛人達に産ませた子供がどれくらいいるのだろう?


今日もまたどこかで父親の子供達が産まれているのだろう。


『英雄色を好む』山上家の男子はこうでなくてはならない・・・と自分達を演出している節がある、と雪乃様は思っていた。


雪乃様は祖父に会った事がない。


産まれた時にはもう亡くなっていた。


当然である、自分が産まれた時父親がもうお爺ちゃんだったのだから。


その祖父が生きていた時、遊郭通いしていたと言う。


『色を好んでいるから英雄』そう自己プロデュースしている身内を雪乃様は『小物』と軽蔑していた。


雪乃様は性癖を隠し、色を隠し・・・その結果、雪乃様の性癖は歪んだ形で成長してしまった。


そして雪乃様の中に眠る山上の血、王の血、女王の血は歪んで大きく成長した性癖と結びつき、雪乃様はこの世界で随一の女王様になった。


そんな雪乃様が男性時代の私に恋をした。


何も矛盾しない。


SMのパートナーと恋愛相手は別の事が多い。


ドマゾ男でも家族の頼れる大黒柱のお父さん・・・なんて話は別に珍しくない。


夫婦揃ってマゾの夫婦が共通のご主人様に調教してもらう、なんて話も聞いた事がある。


つまり私と雪乃様はマゾ奴隷女と女王様であり、恋愛関係は有り得ない・・・という事だ。


その事に私が気付いた時、スレイプニールは既に雪乃様と私が軽くキスをした時に気付いていたという。


こうして私の初恋は終わった。

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