勉強

私はメイド服を着る事になった。


メイド服はこの屋敷のメイドであれば、漏れなく着ているし、雪乃様に仕えているメイドならば皆、雪乃様がデザインした露出度の高いメイド服と首輪をしている。


「晶用のメイド服はまだデザインしてないんだけど・・・とりあえずこのメイド服着てちょうだい」雪乃様はカフェオレのような色のメイド服を私に渡した。


確かに雪乃様にデザインされたメイド服は露出が激しく「ザ痴女」というものだ。


だが雪乃様がデザインするメイド服はもっとピンクとか水色とかのテレビでよく見るメイド喫茶のメイド達が着るような色鮮やかなメイド服だと思っていた。


「失礼ね、確かに私は可愛いメイド服が好きよ。


だけど仕事だってきちっとしてもらいますし、その結果メイド服が汚れたとして汚れが目立ってみっともなく見えるようなメイド服の色にする気はありません」雪乃様は憤慨しながら言った。


そうだった、私の考えは雪乃様に筒抜けだったんだ。


メイド服に機能性を付加するなら、どうして奴隷戦士の戦闘服に機能性を付加しなかったのだろう?


エナメル素材を中心にした戦闘服に伸縮性はほとんどなく「戦闘服は弾丸も刃物も通さない」と言っても戦闘服の面積は非常に狭く露出度は高く、しかも急所と言われる頭や心臓は全くカバーされていない。


それどころか胸の布地は着脱可能で急所・・・胸は丸出しになる。


「しょうがないのです。


雪乃様は病気のようなモノなのです。


『奴隷にこんな恰好をさせたい』と雪乃様が思うような方であるからこそ、雪乃様は女王様に選ばれたのです」スレイプニールが私に言う。


いや、わかってるんだけどね。


愚痴みたいなもんだ。





食事まで雪乃様の勉強を見る事になった。


そりゃ私にしてみると雪乃様のやっている高校二年生の勉強は去年学んだ内容だ。


それに私は学年一位の成績だ。


いつの間にか雪乃様が私に勉強を教えてくれていた。


「雪乃様は小学校低学年の時には既に高校を全国一位で卒業する程度の学力はあったそうです。


雪乃様は飛び級で12歳の時にはオックスフォード大学の大学院を主席で卒業されています。


今の高校には『近いから』と言う理由で通われています」スレイプニールが言う。


何その新事実・・・道理で学年一位の成績のはずだよ。


私は某学園都市第一位が『視力検査で2.0までしか測れないのと同じだ、差が天と地ほど離れてても同じ指標で測るしかないんだ』って言うのはこういう意味だと痛感した。


「晶、わからないところはないかしら?」


雪乃様が私を覗き込んでくる。


何もかもがオーダーメイドなのだろう。


勉強している机は背が高く、座高が低い雪乃様のサイズに合わせて作られている。


背が低い私は「椅子に登る」と言った感じで雪乃様は座高が低く一旦座ってしまえば勉強出来るか・・・と思っていたのだが、私は背が低く、さらに座高も低かったので机は高過ぎたのだ。


一生懸命机の上を覗き込んでいる私を見て雪乃様は「子供用の椅子を光希に取り急ぎ準備させるとして・・・晶、今日は私の膝の上に座りなさい」と太腿をポンポンと叩き私を呼んだ。


雪乃様の背が高くて私の背が低めなだけで、子供用の椅子に座るほどじゃない。


「雪乃様は子供を、妹を可愛がりたい」という欲求をみたしているだけに思う。


「雪乃様のご厚意に甘えたら如何でしょう?


机が高過ぎて勉強しにくかったのは紛れもない事実ですし。


それで雪乃様の庇護欲も満たされるなら誰も損しない良い申し出だと思いますよ」スレイプニールは言う。


「それでは雪乃様、お膝の上に失礼します」と私が椅子を登ろうとしたら雪乃様が私の両脇に手を入れ、ヒョイと持ち上げると雪乃様が座っている膝の上に下ろした。


「軽いわねぇ!


晶はもう少し大きくならなきゃダメよ?」雪乃様は私を後から抱き締めながら言った。


背中に雪乃様の胸が押し付けられる。


私が軽いのは背が低いのも痩せてるのもあるだろうけど、雪乃様のような大きな重りを胸につけていないからだと思う。


(雪乃様が胸が大きい事を『羨ましい』と思ってるんですか?


まだ女性になった初日ですよ!?


私は晶さんの『美少女戦士』としての適性の高さに驚くばかりです)スレイプニールは心の中で驚嘆した。


100人いたら40人はマゾの素質がある者だと言う。


59人はSMの気が全くない者だ。


そして100人に一人がサドの素質がある者だ。


しかしあくまで『素質がある者』というだけで全員がサドに目覚める訳ではない。


目覚めるのはその中で更に100人に一人である。


目覚めた者の前に立ち塞がるのは『社会倫理の壁』である。


「そういう性癖がある」と目覚めた者の中で、実際にサドになるのは目覚めた者の1000人に一人だ。


その中で本当に奴隷を持つご主人様になるのはサドになった者の1000人に一人だ。


そのご主人様の中で一万人に一人が『奴隷戦士』のご主人様となれる。


その『奴隷戦士』のご主人様の適性を持つ者の中で百万人に一人の適格者が雪乃様なのである。


つまり人類70億人で雪乃様以上の女王様の適性を持つ者はいないし、向こう5000年は比肩する適格者は現れない。


だがいくら女王様が優れていても、その奴隷戦士が優れている・・・という事ではない。


言ってみれば、女王様の優秀さはその器の大きさであり、大きな器の中に少しの水、つまり奴隷戦士が一人しかいない状態では、器が大きい意味がない。


つまり晶のご主人様が雪乃様である必要性はない。


正直なところ奴隷戦士など数が物を言う存在だ。


今日の晶の戦闘は確かに未熟であったが、成熟しても大して代わらない奴隷戦士も数多いのだ。


しかし晶は女性としての、奴隷としての才能の片鱗と適応性の高さを見せている。


「もしかしたら晶さんは噂でしか聞いた事がない『伝説の奴隷戦士』なのかも知れませんね」スレイプニールは囁いた。

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