第4話 束の間の息抜き、ですかね
ところで、
「ご主人様、このホットパンツとか絶対似合いますって」
「そうか」
「あ、あの下着可愛い」
「そうか」
「こんなやり取り前にもしましたよね?」
「そうだな」
人間と同じように生殖機能の欠けたブランクは、
「もう、ご主人様のために選んでるんですからね?」
「そうなのか? お前の趣味で選んでいるのかと思っていたぞ」
「それは否定出来ませんけど」
「そうか」
「ぶー、そうか、じゃないですよー」
世界政府なしでは子孫が残せない時代であるはずなのに、
「うーん、でも、なんだかんだご主人様って白い服が一番似合いますね」
「そうなのか? 俺にはよくわからん」
「おしゃれとかしたことないですもんね」
「する必要がなかったからな」
「引き籠り良くないですよー」
「お前もな」
「私は、ほら、召し使いですから」
機械の力を借りなければ子供が作れない時代であるはずなのに、
「なら俺も召し使いに――」
「それはダメです」
「……どうしてだ?」
「召し使いとして産まれた私と違ってご主人様の場合、特別な訓練を受けないと召し使いにはなれませんよ」
「どんな訓練だ?」
「詳細は話せませんけど、なれなければ良くて死にます」
「うん?」
「悪くて死ぬまで廃人です」
「召し使いになるのにそんなリスクを支払うのか……」
「そうですよー。なれたとしても一年に一回身体のメンテナンスしないと大変なことになりますからね」
「それはお前を見ていればわかる」
「そうなんですか?」
確かに私はメンテナンスを二回もサボったりしたけど、そんな目に見えてわかるほどガタがきていたのだろうか。
「前に比べて、我が強くなった」
…………、
「それメンテナンスしてないからじゃなくて、メンテナンスしたからです」
「そうなのか?」
「そうですよ。なんですかその、使っていた機械に知らない機能が追加されたら故障かなって疑う思考回路は?」
「悪かったな」
確かに使い慣れたものの方が使い易いっていうのは共感出来るけど、
「とにかく、これも私なんです。あんまり文句言うようですと、悲しみのあまり甘いもの食べさせますよ」
「やめてくれ……」
うーん、私のせいでご主人様の甘いもの嫌いがますます酷くなっていくような気がする。でも、表情豊かなご主人様が愛らしくって、ついつい弄ってしまうのだ。駄目だなあ、私。
まあ、今更ご主人様が甘いものを好きになるわけもないので、
「そんなことより主人様、さっさと服買ってホテルに戻りましょうか」
「そうだな」
「取り敢えず、気温に合わせてホットパンツと長袖のパーカーですかね」
「おい、今は冬だぞ。脚が寒いだろ」
「そこはパンストで補いましょう」
肌の白さもある程度は隠せるだろうし。
「マフラーも必要ですよね」
「そうなのか?」
「はい。後はブーツに手袋に、あーん、もう、でへへ……」
「おい」
おっといけない。『私』が強くなりすぎた。『私』はご主人様のこと好きすぎるからな、自制しないと。
そう、ご主人様をこの時代の美少女のように仕立てあげないとね。
「ところで、お前は服を買わないのか?」
「私はほら、召し使いですから」
「そればっかりだな」
だってそうなんだもん。
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