5-4 ワタシ、リベンジ策を閃く
ココは浅葱町。一応、異世界。今日もこちらに通っています。
とりあえず、昨日はアサツキ三人娘の学校に「オタクの生徒がネコいじめをしていた」という苦情を入れといた。
あとは彼女らを知っていそうなトコに聞き込みに…となると女子高へ聞き込みはちと難しいから、あそこしかないだろう。
と、言う訳で花月堂にやってきた。タカヒト君以外に彼女らの評判を聞くのがいいだろう。今日は日曜だから学校も休みだし、あの3人娘もいないはずだ。タカヒト君はケイさんのアパートに海苔佃煮のケーキとやらを持参してやってきたのでベランダから逃げてきた。裏を返せばタカヒト君は店にいない。
「カラン♪」
扉を開けると雑誌に載っていたのと同じスマイルの店員さん、通称ペコさんがいた。
「いらっしゃいませ~。あら?タカヒト君なら今日は遅番ですからまだいませんよ。」
「いえ、タカヒト君と例の3人娘がいないから来たんです。確か、ペコさんでしたよね?ちょっと聞きたいんですが。」
「え?私に?お話は聞いてますよ、達子さんですよね。あのタカヒト君の創作ケーキを完食するツワモノの彼女ってあなただったんですね。焼きもち焼かなくても私とタカヒト君とは何もないですよぉ。」
「いや、そうじゃなくて。彼女でもないんだが…まあいいや。あの浅葱女子高の3人組について聞きたいんですが。」
「ああ、アサミちゃん達ですね。うちの常連ですよ。タカヒト君のファンクラブなんて作っていてかわいいですよね。」
「真実を知らないって…。」
ワタシが言いかけた時、先回りするようにペコさんが遠い目をして言った。
「ホントに幸せですよねえ。」
「あ、やはりそう思います?」
「ええ、ここの店に採用する際に作らせたんですが、創作性が破壊的でして。でも、基本技術は素晴らしかったんで採用したんです。時折懲りずに作っては店内に微妙な空気を作りますけど。父…店長は試作品を出すのは禁止と厳命しているから大丈夫ではあるのですが。」
なんと、そんな舞台裏があったとは。まあ、現場で働く人達はあの破壊的センスを目の当たりにしているのだろう。
「やはりそういうことでしたか。で、あのアサツキさ…浅葱女子高の子たちは?」
「アサミちゃん達はテニス部で、部活帰りにここでサンドイッチやケーキを食べていきますよ。」
「ふむふむ。ところで浅葱女子高はどの辺りにあるんでしたっけ?」
「あれ?知らないんですか?図書館より北側500メートルくらい先ですよ。ただ、テニスコートは改修中とかで図書館そばの町民体育館内のテニスコートで部活をしてますね。」
「ワタシは兄さんがここに住んでるから遊びにきてるよそ者なんで地理は疎いんですわ。そっか、ワタシの行動範囲内だな。だからよく出くわしてたのね。」
それからもいろいろ聞いたのだけど、たいした収穫はなかったので、あとはいつものケーキセットを頼んでお茶して花月堂を後にした。
ふう、後はどうしようかしら。とりあえず、アパートに帰ろっと。そう思って歩きだした時だった。
「ニャ~ン」
あれ?聞いたことある鳴き声がする?キョロキョロとしてるとタマがいた。確か今日は室内飼いにすると決めたはずなのだが…。そばにケイさんがいた。
「おや、ケイ兄さん。タマと遊んでる?」
「ああ、アッキーが外に出たがってニャーニャー泣くから。リード付けて一緒に出れば大丈夫かな、と。どうだ、アサツキ三人娘の対策はできたか?」
「ううん、たいした情報ナシ。」
「ニャ゛!」
ん?タマの鳴き声が変。なんか咥えて…!!ぎゃああ!ネズミ!
ワタシがあわてふためく間にもタマは地面に置いて前足でいじっている。
「ひえええ、食べるワケでもなくいたぶってるよ。いやぁぁぁぁぁ!」
「いや~浅葱猫もアサツキばっかじゃなくちゃんとネズミを狩るんだな。」
ケイさんはけろっとしている。何を冷静に分析してるんだよ。
「ニャ!」
タマは再びネズミを咥えて、ワタシの足元へ落とした。
「ひぃぃ~ワタシに進呈しなくても結構ですぅ~!食べてしまうなり、ケイさんなり好きなトコへあげなさい。」
「ニャ~?」
「なんでオレなんだよ。」
とりあえず平気そうなケイさんにネズミを捨てさせて、いや、逃がしたのかわからんが、とにかく事態を落ち着けた。
「まったくもう。ありがた迷惑なんだから。この街にはタカヒト君のケーキといいありがた迷惑が多い…ん?そうだタマ、こないだのアサツキのお礼をしないかい?」
「ニャ?」
あからさまに不機嫌そうな声で鳴いている。
「ううん、怒らないで。相手にダメージ与える『お礼』、いわば『お礼参り』よん。」
「ニャ?」
こうしてワタシのリベンジの火蓋は切り落とされたのでした。
「まさか、このネズミを彼女らに…?」
「んなワケないでしょ。」
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