5-3 ワタシ、小説家のリスクを知る

 ワタシは腹立ちながらも夕飯タイムを迎えてた。

「で、夕飯は鉄火丼アサツキ特盛りかよ。」

 ケイさんはがっつりと肉を食べたかったようだが、残念だな。

「誰かさんのメタボ対策&タマへのお詫びもこめてるのよ。タマ、うんとお食べ。お代わりはたんとあるからね。」

「ニャ~♪」

 タマにはご飯のない鉄火丼、つまりマグロの刺身アサツキ特盛だ。タマはさっきのことは無かったかのように食べている。良かった、トラウマにはなってなさそうだ。

「しかし、エグイというか、せこい嫌がらせだなあ。」

「絶対にあの3人組に違いない。タカヒト君への想いがこうも歪むとは…ケイさんも似たような目に遭ったコトあるの?」

「そりゃあ、しょっちゅうな。知ってるか?手作り食べ物のプレゼントは開封しないで処分しているのを。」

「なんで?もったいない。」

「異物が混入されてる恐れがあるんだよ。嫌がらせのガラス片や髪の毛とか、黒魔術の一種らしいが。他にもぬいぐるみ類には盗聴器が仕掛けられたりな。」

「ひえええ!有名になるって代償デカいんだ。」

「そう、それだけの覚悟がたっちゃんにはあるのか?」

唐突に真面目な顔をしてケイさんが問いただしてきた。

「え?ケイさんと違って小説家は顔が出ないから平気でないの?」

「甘いな、本を出せば裏表紙に顔写真が載ることもあるし、新聞や雑誌のインタビューに出ることもある。世の中広いんだ、一度見ただけで妄想を膨らませ、ストーカーと化す者も多い。今回のはアッキーを傷つけてないだけまだかわいい方だ。」

 確かに職場でゴミ捨て場所を教えただけで「ボクに親切にしてくれた!気があるに違いない!」と勘違いされた経験あるが…。世の中、何がスイッチになって暴走するのかわからない。

「デビューって、そんなに大変だったなんて。ワタシのせいでタマに迷惑をかけてしまって…。」

「ニャー…。」

「悪い、言いすぎた。とにかくタカヒトに一言言った方がいいな。」

「いや、それはまだ最後の手段にしようよ。タカヒト君はあの子達を信頼している。それが裏切られたら辛いよ。」

「しかし…。」

 ケイさんは渋るが、あまり揉め事は大っぴらにしない方がいい。

「とにかく情報収集してみるわ。対策はそれからよ。タマはしばらく室内飼いか、S市の大家さんに見てもらうわ。」

「そうか…ムリするなよ。」

 ワタシは鉄火丼をかっこみながら答えた。

「だってワタシには小説書く夢があるし、浅葱の皆も好きでいたいもの。」

「タカヒトもか?いっそ付き合っちゃえば?」

「う…。スネオさん、みっちゃんは?妻子あることオープンにすれば?」

「う…。」

 …ココは浅葱町。一応異世界。いろいろ複雑な要素が絡まりつつ、夕飯は進むのでした。

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