第4章~新しい家族とお引越し。時々人探し~
4-1 新しい家族
ココは浅葱町。一応、異世界。年が明けて早や三週間。そろそろ両方の世界でバレンタインという製菓業界の陰謀が渦巻く時期だが気にしない。そして
「うう~寒い。浅葱にも寒波が来ているのね。」
「………。」
ケイさんは相変わらず不機嫌なのでワタシは努めて明るく喋ります。
「いやあ。コタツにみかんは日本人には必須のアイテムやねえ。あるとは思ってたが、浅葱にも存在していてよかったわ。」
「………」
「コタツにみかんとくれば、あと欠かせないのは…。」
「………これなのか?」
彼が冷たく言い放った先には茶トラのかわいいお客さんがいた。
「ニャ~~。」
やはり誤魔化せないか。攻防戦が始まることを覚悟してワタシは腹をくくった。
「う…。だ、だってネコはコタツで丸くなるというし。」
ケイさんはさらに冷たく畳み掛ける。
「お前なあ、わかってんのか?俺らは浅葱町にしょっちゅう来てても住んでないんだから、飼えないんだぞ。それにここはペット禁止だ。」
「そ、そんなあ。この寒空に捨てられていたこの子を見捨てていけというの?体からして秋生まれの子猫よ。」
「ニャ~ニャ~。」
「う、うるさいな。とにかく元に戻して来い!」
「いやだ~!そんなことできない!」
そうやって言い争っているとまたもチャイムが鳴った。
『ぴんぽ~ん』
どうして揉めている時に限って来客が来るんだ。って、ここたまり場になってないか?
「キョウさ~ん。居る~?今日は私の…きゃああ~!ネコ!」
みっちゃんがずかずか入ってくるや否や悲鳴を上げる。
「「??」」
ワタシ達が不思議がっていると、彼女は聞かれた訳でもないのに説明するように捲し立てる。
「私、ネコ苦手なの!今日は帰るっ!」
バタンッ!
あっという間に帰っていった。多分、この部屋の滞在時間はみっちゃん史上最短だろう。しかし、子猫を留める好材料だ。
「ほら、この子のお陰で魔よけになってるわよ。」
「魔よけってアンタね。」
『ぴんぽ~ん』
またか、今度は誰だ。
「ちょっと、ここはペット禁止ですよ!」
やば!心臓がドクンッ!と早打ちになるのがわかる。会ったことは無いが、ここの大家さんか!?
「な~んてな。声、似てた?役者たる者、声色も演技のうちさ。」
「なんだ、サトシさんか。びっくりさせるなあ、もう。」
心臓に悪いなあ。サトシさんがいつもの格好で遊びに来たが、心臓に悪いのはそこではない。しかし、子猫が彼を見た途端に大声を上げて怯え始めた。
「!!ギニャ~!ミャ~!」
「?なんで怯えてるんだ?」
…そりゃ、血まみれのカッコ見ればフツーは怯えるでしょ。しかも生後数ヶ月の子猫なんだから。
「ふうん、それでどうするか揉めてんの?」
血まみれのカッコでコタツ使用は汚れるからと、ケイさんに命じられて着替えてきたサトシさんはお茶をすすりながら尋ねてきた。ワタシは半泣きで答える。
「ペット禁止だろうし、捨てるなんて可哀想すぎるし、ケイ兄さんもワタシもしょっちゅう空けてるから飼えないし。もう、どうしたらいいのか。」
「ここ、一応禁止だけど、どの部屋も飼ってるぜ。」
サラッとサトシさんは解決策を言ってのけるので二人同時にハモってしまった。
「「え?」」
「タカヒトも小鳥飼ってるし、2階のカシワギも室内犬飼ってるし。皆、大家さんには内緒だけどな。」
そっか、他でも飼ってるのか。
「ニャ~ニャ~。」
うっ。そうやって鳴かれると弱い。…よし!
「決めた!」
「?」
「ワタシが元の…地元に連れ帰って飼う!それで週末には
「ええ~この部屋に週末連れてくるのか?!楽器に爪とがれたらやっかいだな。」
渋るケイさんに耳元でボソッと魔法の言葉を呟いてあげた。
「魔よけ効果…。」
「…わかった、ネコ連れ込みを許可する。」
「なんかよくわからないけど、解決したんだね。良かった良かった。」
こうしてワタシはネコを飼うコトに決めたのでありました。
「ニャ~~♪」
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