3-14 エピローグ
「お前、バカか?もっといいもの頼めただろう?」
ココは浅葱町。一応、異世界。冬のイベント&ミニツアーから一旦大掃除のために帰ってきて、ワタシの話の一部始終を聞き終えたケイさんの第一声がこれだった。
「まあ、お金も迷ったけどさ、他はともかく、貸出カードは金積んでも作れないしさ~。ワタシもそうだが、役所の仕事は賄賂効かないからね。」
ワタシは書きまくった原稿の整理をしながらのほほんと答えたのに対し、ケイさんは頭を抱えている。なんで、そんなに呆れているのよ。
「ホント、のんきと言うか、天然と言うか、バカと言うか。俺だったらこの町にしかないお菓子詰め合わせ1年分にするぞ。」
「…あまり大差ない気がする。天然は人のコト言えないじゃん。」
「俺のどこが天然だ?」
本当にキョトンとして言う辺り無自覚なんだな、ケイさん。こういう似た性格だから浅葱側で兄妹と言っても疑われないんだろうな。
待てよ、性格?…天然でぐだぐだで…ルーズで変人…もしや?閃いた仮説をケイさんに聞いてみることにした。
「そういえば、ケイさん。招待した人間は無条件で浅葱町に来れる、その中でも浅葱町の存在に気づいた人だけが行き来できる。今まで気づいた人は何人かいたけど、この世界の微妙さについていけずに脱落したんですよね?」
「あ?いきなり何だ?そのとおりだが」
「その気づいた人達って皆、天然というかぐだぐだとか、変人ばっかではなかったですか?」
「そういや、そうだな。言われてみればそんな奴ばっかだ。変な奴が多かったな。」
…もしかしたら元の世界から浅葱側へ行き来できる人は浅葱側の気質に近い人間のみ。そして浅葱側は変人だらけだ。だから変人のみが浅葱を自由に行き来できるのではないか?
ってコトはワタシも…。
元 の 世 界 で は 立 派 な 変 人 と 言 う こ と だ。
「それがどうしたのか?って何、頭を抱えているんだ?」
「あるもっともらしい仮説に行き着いて、なんだかヘコんできたんです、ほっといてください。」
「なんだそりゃ?」
ケイさんにこの仮説を言っても認めないだろうし、わかったところで
「知らない方がいいかも。そういや、ケイさんは何故こちらの図書館カード持ってたり、このアパート借りられたんすか?」
これも前から思っていた疑問だ。どんな方法で住民票を取ったのだろう。
「あ?そりゃ浅葱側にいる俺に頼んで名義を借りてるからだが。」
「ふうん、名義を借り…“浅葱にいる俺”ぇ??だってアーティスト“ケイ”はいないっていつか言ってたんじゃ???」
あまりのことに衝撃を隠せない、ワタシは身を乗り出して聞いていた。
「ケイはいなくても長岡
「ええええええ!!何でそんなコト黙ってるんですか?!」
衝撃だ、ケイさんが二人いるなんて。
「んなモンいちいち言うか~!!」
「いちいちってレベルの問題か~!!」
そうして二人でワーワーとわめきあっていた時、チャイムが鳴った。
『ぴんぽ~ん♪』
「よう、兄妹ゲンカ中ですかい、お二人さん。ところで窓拭き洗剤切らしちゃってさ、貸してくれない?」
返事を待たずにサトシさんが入ってきた。ホント、この世界の人はずかずかと来るね。
「サトシ…。」
「サトシさん…。」
「「今日はサスペンス物の撮影だったのか?」」
思わずケンカを止めて二人でハモってしまった。
「カンがいいねえ。ま、被害者その1だけどな。」
そりゃあ、胸に血糊を付けてりゃわかりますって。相変わらずな人だな。なおかつそのカッコで大掃除とはいろいろわからん。
「あ、そうだ。サトシさん。」
「何?たっちゃん。」
「今度、殺され方の極意を教えてください。」
「はあ?」
…次にそんなシチュエーションがあるとは限らないが、殺され方の極意を知った方がいいよね、うん。こんなことを知りたがるワタシはやはり認めたくないが、変人なんだろうな。
それにしても異世界側にケイさんがいるのなら、こちらにワタシも居るのだろうか?ややこしくなりそうだから会いたくないなあ。
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