とある父子の会話

「なぜ、父さんがお前の部屋に来たか分かるか? 分からないだろうな。でも俺にはお前が何を考えているかわかる。その背負った大きな荷物や動きやすい服装、帽子、丈夫なブーツを見れば一目瞭然だ。お前、旅にでも出るつもりだろ?」

「……凄いな、父さんには全てお見通しのようだ! そうさ、オレはこれから旅に出る。行先は教えられないけど、帰ってくるのは5年先になるとは思う」

「行先なんて大体検討はつくさ。お前と俺は似てるからな。だが、旅に出るのは許さぬぞ」

「どうして? この世界はこんなにもロマンに溢れているというのに、なぜ旅に出てはいけない? オレは見てみたいんだ。バミューダトライアングルのその先や、海底に沈んだアトランティス! 地底にある世界や宇宙の外側、ブラックホールの中。誰だって気になる筈だ!」

「そうとも、俺も気になる! しかし、俺の父…つまりお前の爺さんはその好奇心に殺されたのだ! バミューダトライアングルに先はない! 海の藻屑になるだけだし、海底に沈んだアトランティスなんてまやかし、本当はただの朽ちた遺跡あとで何もありゃしない! 地底に世界があるとしたらそれは暗闇と鉱物の世界だ! 宇宙の外側なんて何も無い、ブラックホールの中は消滅した星の残骸ばかりだろう……。ロマンなんて何も無いんだ」

「それでもオレは行くよ。全てこの目で確かめたくなった! 父さんが見たかったものを代わりにオレが見てくる! そしてロマンはそこにあったんだと証明してやる!」

「母さんにはどう言うつもりだ? まさか俺に任せるなんて考えてないだろうな? 俺は嘘が下手だぞ? もし、バレたら母さんは死にものぐるいでお前を探すに違いない! それでも行くつもりか?」

「母さんには悪いけど、オレは行くよ……行かなきゃいけない気がするんだ! ……父さん、母さんを宜しくね」

「待て!話はまだ終わってないぞ! おい! ……はぁ、母さんにはなんて言おう……」

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