ソノサキニアルモノハ
気が付けば僕はどこかの部屋にいた。いや、部屋にしては狭く、細長いような気がする。なら廊下と言えばいいと考えるかもしれないが、廊下にしては壁とドアの距離が短すぎる気がする。ならこの場所をなんと例えようか。上に細長い部屋とでも言おうか。
とりあえず、今僕の目の前には一つのドアがある。なんの変哲のない家にあるようなドアが。
壁は灰色で塗られている、もちろん床も同じ色で統一されている。天井は高すぎて分からない。
僕はただここで立って時間を過ごすのはいやだった。
人は狭い空間にいると無性に落ち着かなくなる。いや、広すぎてもそうだ。だから人には程よい空間が必要となる。
僕は狭い空間から逃げるようにドアに指をかけて開ける。
ドアは簡単に開いた。
僕は一瞬拍子抜けしたが、ドアの先にある部屋を見て変な気分になった。
開けたドアの向こうにはまた同じ狭い空間の部屋が広がっていた。ただ違うのは壁と床の色である。
ドアの向こう側の部屋は白かった。
僕はその部屋に足を踏み入れる。そしてまた次のドアを開ける。
次のドアを開けるとまず最初に目にいたい色が飛び込んできた。次の部屋は真っ赤な部屋だった。僕は一瞬躊躇った。なんだかこれより先に行ってはいけない気がしたからだ。だがその部屋からする匂いがそうさせてくれなかった。
バラの匂いに僕の脳は安心したのか、僕は真っ赤な部屋に足を踏み入れた。これで錆びた鉄の臭いでもしてくれれば僕はこれ以上踏み入れる事はなかっただろう。
バラの匂いに半分酔いながら、僕は次のドアを開いた。
その先にはこの真っ赤な部屋と対照的で真っ青な部屋が同じ狭さで向こう側にあった。匂いは石鹸だったが、僕は気味が悪くなり、踏み出せずにいた。
来た道を引き返そうと振り向くと、そこにはドアがなく、真っ黒な壁になっていた。
壁には目やら蛇やら気持ち悪いものが色んな色で描かれていた。僕はゾッとして前を見る。すると、そこにはあの真っ青な部屋が消えていて、同じ壁が床が続いていた。
壁や床の目が見てくる。そんな錯覚までしてきた。
ドアが無くなり、ただの気持ち悪い廊下と化した場所が怖くなり、僕は走り出した。
背後から視線が追いかけてくる。壁に描かれた口がけたたましく笑いだす。
僕は在るはずのない出口を探してひたすら走った。
そしてその先にあったのは…
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