第6話駄目ばかりの夜空に

清野はコロ助を連れ村の資料館に来ていた。数多くある古い資料を隅々まで目に通して行った。


「ん~、現在言われて村の言い伝えや伝統は、かなり新しいものばかりだ」

「ご主人様、あったナリ。」

「どれどれ、子守歌も九尾様の解釈が違うな」


起きろや起きろ。

九尾のきつねさまがやってきて

九尾のたぬきさまがやってきて

二匹が出会い喜んだ

お礼にあげよう、至宝の宝


「かなり昔の子守歌みたいナリね、鎌倉時代って書いてあるナリよ。」

「九尾様は狐と狸の尻尾で9本だけど、九尾様は2匹いたんだ」

清野は腕を組んで考え始めた。何かを思い付き

「コロ助君、この村ができた新聞とか資料ってあるのかな?」

「ちょっと待つナリよ」

そう言うと、コロ助は白目を向き検索を始めた。

「あったナリ、戦後すぐの新聞ナリね」


【九尾村と阿里村が統合され九尾阿里村と改名される】


「こんなのもあったナリ」


首都圏への水確保の為、X県にダム建設案が固まる。

候補地は九尾阿里村。

地形的降水量共に十分な土地で、完成すれば首都圏や近県の水確保は30年持つだろうと予想される。

住民は一斉に反対姿勢を取り、県職員や工事関係者を威圧し村内に入れず


「5年前くらいまで記事になってるナリよ」


「5年前か‥‥‥なるほどね。村の人や九尾様の銅像も何か変だと思っていたんだ」

「段々見えて来たナリね」

清野は携帯電話を取り出し、電話をかけた。


「あっ、ルミコ君。そちらの様子はどうたい?」

ルミコから何かを聞いて清野は電話を切った。


「どうだったナリ?」

「黒だよ、紛れもないね」

そう言うと清野はニヤリと笑った。


「その顔の時のご主人様が一番怖いナリ」

「コロ助君、そういうなよ。さっ、全員集めてくれ、被害者の方々もだよ」

「了解ナリ!でも、ご主人様?」

「ん?何だい?」

「ちょっと2人で真面目にやり過ぎじゃないナリか?」

「そういえば、そうだね」

清野はそう言うと指をパチンと鳴らした。




ガゴーン!




集会所にいた佐藤の頭に突然タライが落ちて来た。


「だっ、大丈夫ですか警部補!」

「なっ、何なんだ!」

メイは落ちて来たタライを取り上げて裏に何か書いてあるのを発見した。


【診療所に全員集合!】

それだけ書いてあった。

清野の呼び掛けにより一同は診療所に集まった。遅れてメイがやってくる。


「警部補!やはり睨んだ通りです。丸米の部屋から凶器らしきものが見つかりました」

「やはりな。ピアノ線の怪我も自作自演のようだしな!」

「それと…こんな写真が出てきました。」

その写真には、小さな赤ん坊を抱えた女性の姿が写し出されていた。

清野はその写真を手に取り語り出した。


「この女性は、元この首あり村の住人です。今から20年前にこの村を出ましたが、約5年前に謎の死をとげています。彼女の名は…」

【九尾沙江子】


「九尾って!ここの伝説になってる名前じゃないか?でも探偵!なんで知ってるんだ?」

「ええ私もある物を見つけ当てましてね。コロ助君と行った資料館にも、過去九尾家が存在した事が記されていたんです。そして現在はその性を変えて生活している。ですよねミソさん?」

ミソは何も言わずただ震えていた。それを横目に清野は話しを続けた。


「過去この村において九尾家は村の守り神として称えられていた。ところが、村人の一部があるものを見つけてしまい状況は一転した。」

「あるもの?」

「はい。村人がダム建設を反対した理由がそこにあります。そしてそれを知った九尾沙江子は村を追いやられた。その後の沙江子さんの生活はそうとう大変だったんだと思いますよ。」

更に話しを続ける。


「その沙江子さんには一人の子供が いたんです。沙江子さん亡き後、その人物が計画した犯行なんです。」


「そう犯人はこの中にいる!」

とおいしい所だけルミコが持って行った‥‥

「犯人は佐藤警部補!あなたです!」



一同が静まり返る‥‥



「あの…ルミコ君違うから…。」

呆れた様子で清野が言い、そのまま話しを続けた。


「沙江子さんが知ってしまった事実とはこれなんです。」

といいながら、清野はカバンの中から包み紙に包まれた物を取り出し、その包み紙を取り外した。


「探偵さんこれは…?リカちゃん人形ですよね?」

「はい。そうです。首ありリカちゃん、この村のものです。これ、首を回すと首取れるんですよ。」

と言ってリカちゃん人形の首を取り外した。更に人形を逆さにすると、大量の白い粉が落ちて来る。


「探偵…!これは…ドラッグ?麻薬か?」

「そうです。一部の村人が見つけたというもの、ダム建設の反対、そしてその事実を知ってしまった沙江子さんが追いやられた理由、全てこの村で取れる植物からできる麻薬が原因だったんです。」


「あっ!ちなみにこれは、そこの駄菓子屋で買った粉ジュースですけど…」

と言いながらその粉を舐めた。


「うんうん。なつかしい味だ…ってすいません。まっ、警部補にもだいたい見えてきましたよね?」

「うーん。でも、この事件は未遂で結局だれも死んでいないし…よくわからんな。」


「はい。そこが一番悩みました…が、それも“これ”で謎が解けました。」

と言って清野はあるものを手にしたのであった。

さてこの連続未遂事件の犯人は誰か?

清野が手にしたあるものとは?

そして真相とは?



◎心臓が右にある第一の被害者

【大村田権蔵】

◎第二の被害者

【砂王健吉】

◎清野に怪盗ヒゲゴリラと間違いられ怪我をさせられた第三の被害者

【武田鉄】

◎東京で薬を飲まされ倒れた第四の被害者

【山寺弘幸】

◎コロ助に借金をし、腕を怪我した第五の被害者

【丸米太郎】

◎何か思いを隠している様子の

【丸米ミソ】

◎襲われた砂王を発見した

【柳沢正平】

◎柳沢の娘であり九尾祭りの唯一の女性踊り手

【柳沢孔美】

◎ルミコにはバイト代、一銭も払わないと思っている

【ドクターカトー】

◎探偵なので犯人ではない

【清野耕助】

◎カトーからバイト代を時給一万にしてもらわないと田舎の兄弟達を食わしていけないと嘘をつく

【納谷ルミコ】

◎大学時代の友人と約束があるとの事でいなくなった

【コロ助】

◎【ブタ】

◎ルミコの傲慢さに、少しあこがれを抱く

【早月メイ】

◎結局登場しなかった残りの踊り手

【サブロー、シロー、トミー、マツの4名】

◎現首あり村村長

【安本しげる】

◎今日は愛しいあの娘が来るかなぁと待ちわびる

【コンビニ店員牧村君】

◎鶴亀旅館で清野からの手紙を受け取り、300万は高いなと素で悩む

【怪盗ヒゲゴリラこと山田健二】

◎ギター1本で勝負すると決めた

【元アイドル松田あい】

◎占い師

【アブドゥル】

◎都会で一人暮らしをしている息子に、電話をかけようと思っている

【上沼静江】

◎昼ご飯はラーメンにしようか、チャーハンにしようか悩む

【大東京淳】



犯人はあなただ!

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