第4話見つめ合うとおしゃべり出来ない
「計画は順調かしら?」
電話の主からの質問に男は
「それが警察や変な奴等が来て思う様にいかないんだ」
「東京に行った山寺はちゃんと始末したの?」
「始末って‥‥、あんたから貰った睡眠薬を飲ませた。しかし東京で倒れて意識が戻らなかったんだぞ、何の薬だったんだ!」
声の主は押し黙っている。
「意識が回復して戻って来るらしいが‥‥。ホントに大丈夫なのか?」
男はもどかしくなり大声をあげた。
「おい、聞いてるのか!」
「聞いてるわ、計画は完璧なはずなのに誰も死んでないとは予想外ね」
「死んでないって!最初の計画では候補者達を少し懲らしめるだけだったんだぞ!話が違う!俺はもう降りる」
「もう、後戻りはできないわ。貴方には付き合って貰うわよ。列車は動いてしまったんですもの」
電話の主はくすりと笑った。
「そんな‥‥」
「元々この話は貴方から持ち出して来たもの。そして私は計画を立てただけ。実行したのは貴方。私は空想話をしただけだから罪にはならないわ。」
「俺が捕まったら道連れにしてやるからな、早月メイ!」
「連続殺人未遂を犯した犯罪者と現役の刑事の言うことではどちらが信用されるかしら?丸米太郎さん‥‥フフッ」
「‥‥‥‥」
「とにかく、貴方には私の計画どおり動いてもらうわ。多少の変更は構わないから」
「多少の変更‥‥‥?」
「そうね、邪魔なブタキムチを始末して。失敗は許されないんだから」
「わっ、わかった‥‥」
「という展開だったら面白いナリねぇ~」
東京で倒れ意識が戻り、村に帰って来たという山寺弘幸(やまでら ひろゆき)に事情を聞く為、一同は車で移動していた。その車中、ルミコとコロ助の寸劇が披露されていたのだった。
「そんなぁ~、コロちゃんもルミコさんも酷いじゃないですかぁ~。私、犯人じゃないです」
「清野さん酷いですよね?」
清野は運転しながら噴き出していた。
「ルミコ君もコロ助君もあんまりからかったら駄目じゃないか。メイちゃんは真面目なんだよ」
2人は大人しく手を上げては~いと返事をした。
「それに僕も犯人じゃないですよ」
「マルコム、黙れ!」
ルミコとコロ助は一転し、丸米を睨み付け一喝した。
「まあまあ2人とも、その辺にしておきなさい」
清野は笑いながら、ルミコとコロ助をなだめた。車はスピードを上げて進んで行く。後ろには粉塗れの佐藤が、必死に走って追っかけて来るのだった。
「何故東京へ行ってたんですか?」
「はい。村興しの打ち合わせに行ってまして…。」
いかにも不健康そうでガリガリな体型のこの男が、東京に行って倒れたという山寺だ。この事情聴衆中もやたらと栄養ドリンクを飲み続けて風変わりな男だ。
「村興し?」
「はい。この村限定の【首ありリカちゃん人形】のPRに行ってまして…。」
「集会所にあった奴ですよ警部補!」
メイは集会所から持ってきたリカちゃん人形を取り出した。
「はい。それです。首ありますし…。急遽打ち合わせに行く事になって行ったんですけど…。でも道中の新幹線で急に眠くなってしまい、結局打ち合わせ出来ませんでした…」
「本当に東京行ったのかい?大村田さんを襲ったのはあんたなんじゃないかい?」
粉ブタが疑いのまなざしで見つめる。
「まさか!実の兄を…!」
「兄?」
「警部補!大村田さんと山寺さんは兄弟みたいです。東京に行っていたのも本当のようで、駅員も証言してますから犯行は厳しいかと…。」
「アリバイ成立か…。」
「それに…。本当にやろうとするなら、あんな襲い方しませんよ!」
険しい表情で山寺は語った。
「どういう事だ?」
「ダウト!!」
白熱した事情聴衆の最中、佐藤とメイ以外の連中は白熱したトランプを行っていた。
「オー!マルコムおまえ強すぎナリ~。マルコムの一人勝ちナリよ。ほら勝ち分の30万ナリ!」
「えええええ!探偵さん!30万っていいんですか!」
その様子を見ていたメイが驚く。
「大丈夫ですよ。このお金、サラ金とかのじゃないですから!」
さわやかな表情で清野が話す。
「いやいや、そういう問題じゃなくて…っておい!探偵!おまえもちょっとは手伝わんか!」
さすがの佐藤も不真面目な連中に堪忍袋の尾がきれたのだが、すかさず清野が言葉を返した。
「警部補、ダウトってことですよ。」
「はぁ?」
「ダウト。すなわち間違いなんです。」
「いやだからその意味がわからんのだよ」
「襲われた大村田さん、特異な体質の持ち主でして… 心臓が右にあるんですよ。右に…。」
そう言って清野は、自分の右胸をポンポン叩いた。
「兄弟だけに、山寺さんはそれを知っているって事ですよ。さっき行ったドクターカトーさんの診療所から、カルテを拝借しましてわかりました。山寺さん、殺すなら右を刺すって事ですよね?」
「はい、そうです。さっきそこのお嬢さんに聞きましたが、兄はロープで拘束された上で、胸をひと突きされたんですよね?幸い発見が早かったので助かったようですが…。そこまで用意周到なら、私なら右を刺します。」
「なるほど。では犯人はその事実を知らない人物」
「まだなんとも言えませんが。」
その時だ!
ダーン!
「ロイヤルストレートフラッシュなり!これでマルコムの50万負けなり!」
「3回連続ロイヤルストレートフラッシュって…」
マルコムは文句を言いかけたが、それを察したルミコが必殺仕事人ばりに、素早く首筋にナイフを当てマルコムに何も言わせなかった。
誰にも見えない角度で…
「ひとつ気になったのですが。マルコム君とミソさんは白仮面が出て来た時、なぜさほど驚かなかったのですか?」
清野は思い出した様に質問した。
「あれは九尾祭で【九尾の送り火踊り】の時着る衣装なんです。なあ、ばあちゃん?」
「そうじゃ、毎年代表の男が8人集まって踊るんじゃ」
「9人じゃないんですか?」
「9人目はおなごと決まっておる。今年はほれ、あんたがさっき言っとった柳沢さんとこのロバートじゃったかのう?」
「ばあちゃん、孔美ちゃんだよ」
「では、被害にあわれた大村田さん、砂王さん、武田さん、山寺さんは?」
「今年の踊り手じゃよ」
「そうか‥‥‥」
清野は腕を組んで考え始めた。
「じゃあ、コール10万上乗せだ」
推理をしていると思いきや清野はコロ助を相手にブラックジャックをしていた。
ザワザワ‥‥ザワザワ‥‥
周囲のざわめきを余所に清野は、自分の前にあるチップ9枚の上に1枚置いた。
「ご主人様、相当自身あるナリね。悔しいけど降りるナリ」
そう言うとコロ助は2枚のカードを見せる。
「21ナリ、ご主人様は?」
「コロ助君、悪いね。僕はブタなんだ」
そう言うと清野は6枚のカードを見せる。が手札は21をオーバーしていた。
「ご主人様、卑怯ナリリリリリッ!」
コロ助は手をベアクローに変えて清野に向かって襲いかかろうとした。
「コロ助君、今付け替えた腕見せてくれるかな?」
コロ助の攻撃が清野の顔の前でピタリと止まる。清野は表情ひとつ変えず笑顔で
「コロ助君、カードは一組だよね‥‥」
清野は顔をコロ助の顔の前まで近付け満面の笑みで
「カードは一組だ・よ・ね?」
コロ助は後ろを向き、元の腕を付け替えてから清野に向き直り引きつった笑顔で
「そっ、そうなっ、ナリ~。ごっ、ご主人様のせっ、戦略には叶わないナリ~」
それを聞くと
「じゃあ、マルコム君から巻き上げた分の半分の50万頂くよ」
清野は50万をポケットに入れた。それを見てマルコムが近付いて
「清野さん、ありがとうございました。取られたお金取り返してくれたんですね」
それを聞いて清野は
「自分の負けは自分で取り換えしな、あんた背中がすすけてるぜ」
そう言うと歩いて言ってしまった。
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