第3話愛のままにわがままに僕は君だけを許せない
「あれ?誰もいないですね?」
集会所に集まっているはずの容疑者達は誰一人姿を見せない。
「どういうことだ?」
これには粉塗れの佐藤だけでなく、一同皆、首をかしげた。
その時だ!
「皆さーん!大村田さんが息を吹き返したぞー!」
佐藤達の背後から白仮面の男がそう叫んだ。
「でも、今度は砂王さんが大変な事にー!ハンマーで殴られ意識不明の重体ですー!」
白仮面は続いてこう叫んだ。
「本当か!白仮面!現場はどこだ!」
コロ助は渋い口調でそう答えた。
「とにかくこちらへ!私が案内します!」
「いつもすまんなぁ!白仮面!」
コロ助はさらに渋い口調で答えた。そのやりとりに佐藤や丸米だけでなく、清野やルミコまでもが不思議に思い、コロ助に目をやる。
そしてコロ助は続いて吐き捨てるようにこう言った。
「誰だあいつ?」
そしてそのまま、白仮面は行方をくらました。
「あいつ絶対犯人だな‥‥」
「私もそう思いますね‥‥」
「けっ、警部補!なっ、何ですか今のは!任意で引っ張りましょう!」
ああっ今回の展開は、こうなんだなと清野と佐藤はしみじみ語っていた。その隣りでメイは訳がわからずパニックになっているのだった。
「メイちゃん。大丈夫、後で出て来るから。たぶん‥‥」
佐藤は自分のことも心配してほしいなと思いながら優しく答えた。
「皆さんあれ見て下さい」
マルコムが集会場を指差した。その中央には9体のリカちゃん人形が並んでいる。中の2体は傷付けられていた。
「これは何だ!」
「ん~、これは‥‥。普通の人形ですね」
清野は1体取りパンツの中まで確認した。
「それは九尾様の尻尾の数と同じだよ、清野耕助君」
一同の後ろにはブランドの洋服を着こなしていないが、いかにもインテリ感を出した男が立っていた。
「この人形も謎だが、砂王さんの現場に行かなくていいのかい?」
男はクネクネしながらニヤ付いている。
「コロ助君、データ」
「はい、ご主人様!」
清野は振り向きもせず、コロ助に合図した。白目を向いたコロ助の口から長い紙が出てくる。それを清野は黙って読んで話始めた。
「砂王さんは後ろから殴られた。第一発見者は柳沢正平氏、散歩中草むらの中で倒れていた砂王さんを見つけ通報。争った形跡なし。周辺には緑のたぬきが散らばっている。今はねITの時代ですよ。山田健二いや怪盗ヒゲゴリラこと白仮面!」
「ガビーン!!」
「今だ!ルミコ君!」
「ちっ、違う!」
清野がそう言うと尽かさずルミコが吹矢を吹いた。男の額にクリーンヒットする。
「さあ!姿を現せ!お前もオーバーボディなんだろ!」
その時だ!
ピュー!
男の額から勢いよく血が噴出し、そのまま倒れてしまった。その振動で中央の人形が一体倒れた。
「まさか!あと5人やられるというのか!」
清野は自分の間違いを謝らず、無理矢理3人目の被害者を作った。
「着きましたよ皆さん!ここがこの村唯一の診療所です。」
丸米の案内の元、一同が訪れたのは木目の立て看板に
【ドクターカトー診療所】
と書いてある、どっかで聞いた事あるような診療所だった。
「痛い痛い!丸米!早くカトー先生を呼んでくれー。」
清野達にあらぬ疑いをかけられ、おまけに額に吹矢を食らってしまった インテリ風の男。幸い大きな怪我には至らなかったようだった。
彼の名は武田鉄(たけだてつ)彼も村長選立候補者の一人だった。
中に入ると丸眼鏡をかけ、白衣を着た50代くらいの男がおり、不機嫌そうにこう言った。
「今度はあんたか!まっ罰があたったんだな。」
そういうと、武田を連れ、奥の医務室らしき部屋へ入って行った。
「罰?」
清野がふとつぶやいた言葉に丸米は答えた。
「武田さんの事を怪しんでるんですよ?」
「何故だいマルコム君?」
「襲われた大村田さんも砂王さんも、村長選に立候補した方です。今回立候補したのは三人の方でその最後の一人が武田さんなんですよ。」
「ふむふむ、当選したいが為に手をかけたか。でも、あの医者もうさんくさいぞ?」
二人の話しを聞いていた佐藤が割って入ってきた。
「何を失礼な!このブタキムチが!」
その言葉にマルコムは激怒し、続けて語りだした。
「ドクターは“神の手”を持つ男と言われているんですよ!」
「神の手…。そんなにすごい人なのか…。」
「何故そう呼ばれているかは私から説明しましょう。」
と丸米ミソが語りだした。
「あれはもう四十年くらい前の出来事じゃ。その日は朝から雷がなっており不吉さを物語るような天候じゃった…。村の体育館では、隣り町の団体とわしら首あり村の団体で、バスケットボールの試合があった。
事はそこで起こったんじゃ…。
それはわしらが負けており、最後、笛が鳴ると同時になんと3Pシュートが決まり大逆転したんじゃ!
そして、それを決めたのがあのドクターなんじゃよ。」
「あのー、それって…」
「止めときなお嬢さん。ツッコムだけ無駄な小説なんだぜ。」
コロ助がニヒルな表情でメイに語るのであった。
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