第5話☆1つ目の約束

その夜 夢を見た 子供の頃の夢 小さく 何も知らず何も疑わなかった頃の俺


「おねーさん なんで おめんしてるのー」


小さい俺は 神社のお祭りで 白いお面のお姉さんに声を掛けた。


「君は… これかい?これは厄災避けなんだよ…」


「やくさいって?おいしいの?なべに いれるやつ?」


小さい俺は 厄災が何か分からなかった 美味しそう! と思っただけだっだ。


それから 俺達はたびたび会った 雨の日も風の日も 白いお面のお姉さんはそこに居た…しかし そんな関係も唐突に終わる。


「ぼく あした ひっこすんだって だから おねーさんに これあげるね!」


小さい俺が渡したのは 小さな手袋 姉さんの手に入る大きさでは無いのだが 大事な物を渡すのが小さい俺の覚悟?だったようだ。


「つぎに あったら どんぐりあげるから ばいばい!」


手袋を受け取ったお姉さんを置いて駆け出す 小さい俺 この後 号泣する。


引っ越しトラックで号泣する子供をあやす父と母 それを遠くから眺める『姉』その後 どんぐりは渡されていない…


そして俺は目が覚めた 約束を思い出して…


今日は高天原の天照様に『返事』に行く日だ。


「答えは出たのかい?」


『姉』の問いに無言で肯く 俺の覚悟は決まった。


既に『妖狐族』からの派遣組は決まっている 他の派遣メンバーの目通しなども終わり、装備や備品 あらゆる準備は出来ていた。


後は俺が『行くか行かないか』だけなのだが…そして俺は高天原に向かい その返事をしてきた。



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空から見ると その町はとてもちっぽけで でも どこの角を曲がれば何処に行けるのか…あの家には誰が居たのかなど おぼろげだが覚えている。


小さいがここが俺の『ふるさと』である ここに最後に来れる事が出来た事にとても感謝した。


ここに来た ようやく来た 随分と待った。


「姉さん 待たせてゴメン これどんぐり」


「待つのは慣れている」


2人の九尾は約束の場所で 抱き合った 『1つ目の約束が今果された』




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その日 多くの者が『日本』を去った…もう戻って来ないかもしれない…しかし彼らを思い出す人間はとても少ないだろう…何故なら『新しい物』にこれからも 埋もれて行くのだから。


「よかったのですか?御方様」


狐面の巫女が空に問いかける。


「あの子は強い そして約束を守る子だ」


空に溶けていく『姉』はそう言うと 溶けて消えていった。


「… … …」


『姉』はしばらくは空に溶けて消えてしまうが…また何時かふと現れる。

新たな白い面を被った巫女はそう思う…自分の一番新しい『妹』は『異界』に行ってしまった。

本来ソレは自分の役目であったと巫女は思う『天孤』となった『姉』を『妹』に代わり奉り 祈りを捧げて行こう『妹』の無事を祈って…



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異世界の扉は意外に簡単に開いた。


その扉は鳥居の形をしており 渦を巻き時空を繋ぐ渦が恐怖を駆り立てる。

『別れ』は既に済ませて来た 次にこの転移門が開くのは100年後、それまで日本とお別れだ。


天孤になった『みくず(姉)』も100年もあれば『また会える』3つ目の約束をして 笑顔で分かれた俺達だが、魂の繋がりが有る今では 距離も時間も関係は無い ただアチラでコレが使えるのかは未知数ではあるのだが…


「では 出発」


俺は1番に門を潜る 後に続くもののけ達 新しい世界に不安は有るが、これ以上ない位の『味方』を引き連れていくので『怖さ』よりヤバさを感じる。


「異世界侵略しちゃうかも…」


俺達の異世界百鬼夜行が今始まった。


鳥居のアッチ側は 森であった 原生林と言うヤツだ 人を拒み寄せ付けない 謎の動物の声も彼方此方で響いている。


何よりも纏わり付くような強烈に濃い『何か』これが情報に有った魔素に違いない、平安の町を取り巻いていた『妖気』と似て異なる狂気…


これは手ごわそうだ『御霊』から歓喜の震えが伝わってくる。


白面金毛九尾狐的には殺戮と破壊の限りを尽くし…蹂躙に次ぐ蹂躙で数多の国を火の海に…


「って 違うだろ!ミサザキ先生! 上空からこの周辺の大まかな位置把握と 索敵を! 金剛は配下と 周りの安全確保!脅威の排除!それから意志疎通が出来る相手が居たら丁重にここに来てもらって!!」


素早く指揮を執る 俺 結局この『移民集団』のボスを押し付けられた。


てめえら!こき使ってやるから!覚悟しやがれ!!勿論俺も頑張るから!!100年生き残って姉さんにまた会うぞ!!


「分かりました 御嬢様 直ぐに確認してまいります」


スチャリと一礼して 空を掛ける大天狗


「意思疎通できぬものは問答無用で潰しますわよ?」


ドでかい『金棒』をグォングォンと振り回す美遊女…絵になる!!


「その時は 確実に潰して! どんなモノを潰したかは報告を下さいね!」


其々の長所と力で『あやかし連合』はこの『異世界』に大きな楔を打ち付ける!


「日本妖怪ここに在り!」


この後 この一帯を支配する『強力無比』な勢力にこの世界の意志ある物が気付くのは随分と後になってからの事であった。




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