カクヨムに熟練度が追加されたらきっと幸せになれる!!

ちびまるフォイ

これ絶対にカクヨム特集で紹介されないな

「あれ? なんか変なパラメータ増えてる」


小説管理ページには新しい項目が増えていた。



熟練度:1



気になって熟練度をクリックしてみると、

今度はさまざまなスキルパラメータが表示された。


―――――――――――

 文章力:0

背景描写:0

ジョーク:0

キャラ力:0

アイデア:0

 演出力:0

 速筆度:0


+もっと見る

―――――――――――


よくわからなかったので放置しながら小説を投稿していると

熟練度が徐々に増えていった。

そのうち、フォロワーからのコメントで使い方を知った。


>熟練度、どのスキルに入れてますか?


「あ、熟練度使えるのか」


リストを見直してどこに振り分けるかを考える。

特化型で入れたほうがいいのか、バランスよく入れたほうがいいのか。


「うん、まずは文章力と背景描写だろうな。

 小説の基本はきっと文才だ。読んでて風景が浮かぶようにしたいし」


―――――――――――

 文章力:5

背景描写:5

ジョーク:0

キャラ力:0

アイデア:0

 演出力:0

 速筆度:0


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―――――――――――


熟練度は小説1作に対して1~3ほど増える。

短すぎる小説を連発して熟練度上げようとする人もいたけれど

内容がぺらっぺらだと熟練度が増えないので今では沈静化した。


俺はというと……。


「なんで人気でないんだよぉぉぉ!!!」


"正しいスキルの振り分け"とか"熟練度の正しい使い方"とか

まとめているエッセイ作品を読み漁って入れたというのに

俺の小説はまるで人気が出ていない。


「もしかして……スキルの振り分けミスった……!?」


―――――――――――

 文章力:10

背景描写:10

ジョーク:3

キャラ力:5

アイデア:2

 演出力:2

 速筆度:1


+もっと見る

―――――――――――


見れば見るほど「こうしたほうが良かったのでは」と

脳内否定がエンドレスに続いていく。

このままではうつ病に入りそうなので運営に連絡した。


『はい、カクヨム運営です』


「あのスキルポイントリセットできないですか?

 熟練度をもう一度振り直したいんですよ」


『は? 寝言言ってんじゃねぇよ』


「ひぃぃ」


『人生ってのは失敗したと思っても戻れねぇんだよ。甘えんな。

 自分で決めたスキルである以上、最後までやり抜けポンコツ』


「あたりが強いな……。

 ちなみに、運営からのおすすめのスキルはなんですか?」


『そうだな。運営愛だな』


「そんな項目ねぇよ!!!」


スキルリセットは見事に却下された。


必死に投稿しても作品はまるで評価されないので

しだいにモチベーションが下がり、アイデアも出なくなる。


「はぁ……思いつかないな……前までどうやって書いていたんだ……」


真っ白いパソコンの画面を見てさらに落ち込む。

スキルを上げれば人気になる突破口になるかもしれないが、

小説のアイデアがないので熟練度も上がらない。八方ふさがりだ。


「いや待てよ……いい事、思いついた!!」


手段としては禁じ手の部類だが、この際なんでもいい。

友達に連絡して俺の部屋に集まってもらった。


「押忍。話ってなんであるか」

「つか、あたし超忙しいんですけどーー」

「この僕に話があるってことは……金かな? お金の相談かな?」


「いや、みんなに俺のアカウントで小説を書いてもらいたい」


「「「 小説ぅ!? 」」」


それぞれ顔を見合わせて、お互いに経験がないことを再確認する。


「あ、大丈夫。コンテストに出すとかではなく

 熟練度を上げるためだから。協力してくれない?」


「押忍押忍! 他ならぬ漢の頼み! 断る理由など無し!!」

「別にあたしは嫌じゃねーつーか……あんたがそう言うなら……///」

「熟練度ってお金で買えないの? 回りくどいなぁ」


「みんな! ありがとう!!」


みんなが協力したおかげで小説の投稿頻度はぐんと上がった。

人気になるかどうかはともかく、数は投稿できたので熟練度が上がる。



熟練度:100



「みんなありがとう! おかげで熟練度が上がったよ!」


「押忍、水臭い。友のために汗を流すのが真の男」

「ま、あたしもいろいろ経験できて楽しかったしーー」

「みんなに小説でお金の素晴らしさを知ってもらえて満足さ☆」


「よし、それじゃスキルポイントを……」


「押忍。待つべきである。これはみんなのポイント」

「どこに振り分けるか、あたしたちも決めていいじゃん」

「お金の運用って項目があれば全部割り振らないとね」


「え……でも俺のアカウント……」


「「「 こっちだって振り分けたい!! 」」」


お互いにマウスを取り合う取っ組み合いに発展した。

誰よりも早くマウスを手にしてスキルを配分したい。


ドタバタもめているさなか、画面を見ると……。



熟練度:0



「ええええ!? 熟練度なくなってる!」


「押忍!? どういうことであるか!?」

「ちょっと! あたしなにもやってないわよ!」

「誰かにお金で買収されたのかな」


―――――――――――

 文章力:10

背景描写:10

ジョーク:3

キャラ力:5

アイデア:2

 演出力:2

 速筆度:1


+もっと見る

―――――――――――


「あれ……スキルポイントは変わってない。それじゃどこに?」


「この"もっと見る"ってとこじゃない?」


プラスマークが出ている部分をクリックするとさらに項目が開いた。

その中の1つにポイントは割り振られていた。



友情:100



「押忍、これなら納得であるな」

「ふふ。ま、共同アカウントで楽しかったしね」

「お金で買えない経験ができてよかったよ」


「みんな……!」


結局、俺の小説は今も相変わらず人気は出てないけれど

小説を通して友達との仲がより深まった。ありがとうカクヨム!









後日、運営に「友情」の効果について確認した。


『ゆうじょう? ああ、ちがうちがう。ルビ忘れてた。

 友情と書いて"うんえいあい(運営愛)"と読むんだよ。

 お前にゃ運営への尊敬がたりないから振っておいた』


「ますます運営愛さがったわ!!!」

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