第7話 暴雨

まずは川名君に余計な事を吹き込んだのが誰か突き止めないと。

私は川名君につけていた盗聴器の録音データをチェックする。あの女を始末したことに安心して、最近はろくに見ていなかった。

「…!」

繋がらない。昨日から盗聴器の音声が届いてない。

…壊したってこと?

盗聴器の存在までバレたっていうの?

直前のデータをチェックする。

『なあ、川名ちゃん』

男子の声だ。これは確か、あのチャラ男で有名な水上翔みなかみしょうの声。

中学が一緒だったから知っている。忘れるわけない。

『なんだよ』

『川名ちゃんさぁ、白鳥八重と付き合ってんでしょ?』

『ああ、まあ』

『やめた方がいいぜ〜?冗談抜きでな』

『は?』

『いや、あの子さぁ、訳アリなんだよ。なかなか可愛い顔してんのにモテないじゃん、中学ん時は有名な病み女子だったんだよねえー』

『どういうことだ』

『好きな男つけてって家突き止めたりとか、カッターとか鋏持ち歩いて情報集めのために脅したりとか。川名ちゃんもあるんじゃねーの?白鳥が知るはずないこと知ってたってコト。なんつーの?ストーカーってやつ?そういう子なんだよねー』

…何を、言っているの?私が、ストーカー?

『…それは、確かに、あったけど』

好きな人の事を知りたいのはおかしな事じゃない。川名君もわかっているよね?

『やっぱり。あんま深く関わんな。

『…そうなんだ。うん、気をつける。…別れる』

『それがいいぜ、お前のためだ。白鳥が可哀想とか、おもうんじゃねーぞ?』

『ああ、今更、そんな気持ち微塵もない』

…どういう事?

川名君も、私のこと好きだったよね?

それなのに、どうして?

…遅かったのかもしれない。

あの女を始末するのが、遅すぎたのかもしれない。

川名君の気持ちに風穴を開けるのに、充分な暇があったのかもしれない。

だったらそれを、埋めなきゃ。

埋め合わせをしなくちゃ。

次は…そう、次は水上翔だ。

あいつを始末する。

きっと、脅すだけじゃ川名君に私の気持ちは伝わらない。

殺さなきゃ。

そうして、川名君に愛を証明してもらおう。

そうだ、それがいい。

それが一番いい。

そうと決まれば善は急げ。

待っててね、川名君。私への愛、証明してね。

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