第6話小康状態
「川名君っ!」
「ん?ああ、白鳥さん」
付き合ったとはいえ、お互い奥手なせいで全く進んでない感じだ。呼び方さえも、変わってない。
でも、そんなシャイなところも好き。
それにしたって、今の応対はちょっとそっけないわね。いつにも増して。
「…なんか、元気ないね、川名君」
「べつに」
「どうしたの?」
「何でもないって」
ちょっとイライラしてるみたい。なんだろう、悩みとかあるなら私に言ってくれればいいのに。川名君を悩ませるものなんて、全部ぜーんぶ私が消してあげるのに。
でも、きっと恥ずかしがってるんだよね?
ちょっとだけ、照れちゃってるんだよね?
そうだ。
そうに、決まってる。
もう、私と川名君を邪魔する奴なんていない。
いないんだ。
だって私が全部封じた。
手抜かりはーーないはずだ。
これで、川名君はわたしだけみてればいい、そうできるようにしてあげた。
なのに。
川名君は私を見てない。
なんで?
余計な奴は封じた。もう惑わす奴はいない。
それで合ってる。
ダメだ。確認しなきゃ。
本当に川名君を惑わす奴がいないかどうか。
あの女か、その手のものが何かしてないか。
確認しなきゃ。
それとも、川名君はもうあの女に誑かされてたというの⁉︎
もう、遅かったと…?
ううん、そんなはずない。いたとしたら別の人間だ。
だってあいつは今でも監視してる。
余計なことをしないように。あいつだってわかってるはず。
確認しなきゃ。そして、始末しなきゃ。じゃなきゃ…
また、川名君が遠くなっちゃう。
「…あのさぁ」
「ん、なあに、川名君」
「別れたい」
「…え…?」
なに、何を言っているの?嘘でしょ冗談でしょ冗談よね川名君そんなこと言わないよねエイプリルフールでもないのにお茶目なんだからほら早く嘘って言ってよ撤回してよねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
「俺は答え変える気ないから。もう付きまとわないで」
そう言って川名君は背を向けた。
…誰よ。
川名君は私と両想いだったのに、きっと結婚する運命だったのに。
それを壊したのは誰よ。
可哀想な川名君。
きっと、悪い奴に洗脳されてるのね。
…なら、私が助けなきゃ。
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