第4話暗雲
やる事は簡単。まず向かうのは川名君の担任の先生のところ。朝一で来ていて、30分位職員室で一人で作業している、朝霧先生。
朝霧先生しかいない早朝を狙って登校し、真っ先に職員室に。
「失礼します、二組の白鳥です」
「ああ、白鳥さん、今日は早いのね」
朝霧先生は何も悪くない。そんなことわかってる。でもこれは、全部、川名君の為なんだ。
私は川名君のためならどんな犯罪だって犯せるから。
人を殺すくらい、何でもない。
「先生は、生徒のためなら犠牲になってくれますよね?」
「?ええ、もちろん」
「では」
返り血を浴びないよう、後ろに回り込み、隠し持っていた相棒で、無防備な先生の頸動脈を搔き切る。
「え、あ、が…なに、を…」
「ごめんなさい、先生。これも全て、川名君の為なんです」
血に飢えた相棒は、もう一度先生の傷を深める。
そう、これは全部川名君の為。
川名君が余計な女に騙されないようにする為。
私、めっちゃ健気じゃない⁉︎
めっちゃいい彼女じゃない!
あは、川名君の好感度上がっちゃうかも!
そう、私は川名君が全てなの。
一であり全てであり。
私は川名君なしじゃ生きていけないの。
相棒が気管を切ったみたいだ。
もう声ももれてこず、ヒューヒューという風の音のような音しか聞こえない。
私は、先生の机から目的の資料を貰っていった。
*
一度学校を出た。
学校にある監視カメラは、電気代の関係で朝霧先生が来てすぐに切ってしまうのが習慣だった。不審な人物を、というカメラなので、先生と生徒がいればまず問題はあるまいというわけだ。いつも、こんな不用心でいいのかと思ってたけど、それがかえって幸いした。
時間を置いて、いつもの時間に再登校。
学校は、朝霧先生の殺人事件で騒然としていた。学校は当然のごとく休校。
誰も私を気にしなかったし、怖がる振りをした私に、川名君は優しかった。
そうそう、そうでなくちゃ。
それでこそ私の川名君だよね。
それでも少し、私の心の中は穏やかとは言い切れなかった。
次にはあいつを殺さなきゃいけないんだ。
私の大切な川名君。
たぶらかす奴は許さない。
大丈夫だよ、川名君。
私が守ってあげるから。
*
動機のない私にかかる嫌疑はなかった。
監視カメラを切った習慣が悪かったと、警察の人が言っているのを聞いた。
ふふ、警察が私に辿りつくことはない。
だって私は可愛い一生徒でしかないもの。増して、朝霧先生とは仲良かったんだよね。
川名君の担任の先生、媚びといて損はないと思ってさ。
実際損はなかった。良いもの得られたし。
媚びっていうのは、むやみに使えば良いってもんじゃないのよ。自分にとって利益のある相手に媚びないと。
さて、と。
まだ終わってない。
私のやるべき事。川名君を守らなくちゃいけない。
次はあの女だ。
でも、朝霧先生みたいにただ殺すだけじゃ全然足りない。
だってあいつは、私の川名君をたぶらかした。
何の罪もない朝霧先生とは違う。
もっともっと、川名君をたぶらかした事を後悔させないと…ね。
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