第2話朝焼け
川名君は相変わらず照れ屋さんだ。
せっかく付き合うところまで漕ぎ着けたのに、全然それらしくしてくれない。
ちょっとだけよそよそしい、今迄と何ら変わらない川名君のままだ。
私…彼女なんだけどな。友達じゃないんだけどな。
ちょっと寂しいって思ってみたり。
だってだって、付き合ったなら付き合ったなりのことをしたいのが乙女心ってものじゃない。
私は全て、何もかも川名君に預ける準備が出来てるっていうのに。
全くもう、私だから良いようなものだからね⁉︎
他の女の子ならきっと、とっくに愛想尽かしちゃってるんだから。
女の子はね、ちゃんと構ってあげないと死んじゃうんだから。
寂しがりやの小鳥さんとおんなじなんだから。
こんな構われ方で怒らない私にいっそ感謝してほしいくらいだ。
あ、でも、もしかして、ツンデレってやつだったりするのかな。
ふふ、そう思ったらちょっと可愛いかも。
そうだよね、川名君だって私のこと好きだもんね。
だって付き合ってるんだもん。好きじゃなきゃ、付き合わないもんね?
そっかあ、川名君はツンデレさんかぁ。
でも、もうちょっとデレても良いのになあ。川名君、デレ少なめなんだよな。
ツンデレっていうか、ツンツンデレくらいにはデレない。
ってなわけで、今日も一緒に下校中だ。足の早い川名君に置いていかれないよう歩くのって結構大変だ。
「あのさ」
斜め前を歩いていた川名君が私を振り返る。
「付いてくるのやめて?ストーカーじゃないんだから」
「あ、バレた?」
「普通気づくでしょ、影見えてるし、なんか笑ってる声するし。こんなことすんの他にいないし」
「そかそかバレてたかー。ちぇー」
てっきりバレてないと思ったのに。でも、気付いてて黙ってたって事はさ…
「やっぱり川名君ってツンデレ?」
なるほど、こういうデレか!もう、分かりにくいよ。私じゃなかったらわからなかったかもよ?
「は?」
キョトンとした顔。なんだかなぁ、私、この表情好きだわ。
少しして、川名君は不機嫌そうな顔になった。
「な訳ないじゃん」
それだけ言って、川名君は歩き出す。ああ、また先行っちゃうの?もう、これだからツンデレはー。ちょっとデレたと思ったらまたツンツンするんだから。
…でも。
それでも嬉しいのは、惚れた弱みかな。
✳︎
川名君とは、ふとした事で知り合った。友達の友達…ってやつだ。
前々からの男友達。川名君は、さらにその友達だった。
違うクラスだから、もし、共通の友達がいなかったら、知り合うこともなかったかもしれない。
正直最初は興味なんてなかった。だって普通に地味な、真面目な男の子って感じだったから。第一印象からして女子受けしない感じの男の子だった。
でも、いざ話してみると、とっても面白い人だった。
捕まった事こそないけど、校則違反は意外とやっているとか、
想像力豊かで、自分に隠し設定があったりとか。
他の女の子に受けるかはわからないけど、私にとってはどストライク。
こういう第一印象真面目っぽいのに仲良くなると変わる人、好きなんだよね。ギャップ萌えっていうか。
それから気が合って仲良くなった。好きになっちゃったから、意図的に関わる時間を増やしたりもした。ずっと一緒にいたい、ってのもそうだけど、私のことをもっと知って欲しかったから。
それに、一緒にいたら私のこと好きになってくれるかも、って思って。
こう見えて結構まともな手段使ってるんだよね、私。
もちろん、その中で相棒が登場することもなかった。
そんなのが続いて続いて今に至る。
だから、私の計画は順調ってこと。何もかも全てが私の思い通り。
ふふ、素敵。
私達は恋人同士。想いあった素敵な仲。
誰も私達を邪魔できない。
私が絶対に邪魔させない。
そう。
どんな形でもいい。彼とーー川名君と一緒にいれるのなら。
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