第2話 もう大丈夫だよ。

「これでμチップは破壊した。最も貴様達きさまらの脳みそには一切、損傷ないから安心しろ。」


「ありがとう。ところでアンタは誰なの?」


 私は、このお兄さんは強くて頼れる存在だと感じた。

 それ故に彼が誰なのか知りたかった。

 そしてこのお兄さんは私たちが装着したμチップを消滅させ、更に『マジカルガールパッチ』というμチップの事情を知っている。

 どうしてなんだろうか?


「あぁ、貴様達には俺の名前を言おうではないか。俺の名前は渋谷しぶたに時彦。ロシアにとある事情で亡命した日本人だ。」


 嘘、この人、日本人なのにとある事情でロシアに亡命したのは一体、何があったんだろう。

 そして、このμチップの事情を知っていると彼はどうして私たちが『マジカルガールパッチ』のμチップを装着している事を気付いたんだろうか?

 私は彼の素性が解らない状況の中、彼が魔法少女ゲームの参加者である女子高生の首なし遺体について調べていた。


「なぁ、貴様らは例の『マジカルガールパッチ』を装着したからこの女子高生の末路を知っているよな。」


「どういう事…?」


 私にはこの女子高生はどうして頭しか傷がつかなかったのか疑問に感じつつ、彼女の身体が自立で少しだけ立ち上がる様子に不気味に感じたせいか、今でも悲鳴を上げたかった。


「怖いよ。藍那あいな。」


礼音あやね。私も…。」


「胴体の方は無事だ。頭の方は火葬されるが胴体はこれからも生き続ける。」


 私は時彦がどうしてμチップ埋め込んだ首のない女子高生が自立して立てるのか良く分からなかった。

 だって普通、首が切断された遺体が自立して立つ事なんてまず、ありえないでしょ。


「ねぇ、藍那。どうして彼女は首がないのに普通に立てるの?」


 礼音。私にもわからないよ。

 でも、このμチップが搭載されたパッチは何故か、若い女性の脳みそでしか埋め込められない不思議なパッチだと、彼が言ったけど、私達もこのゲームで負けたら私や礼音もこうなるよね。

 そう考えると何だか、怖いな。


「成程。貴様は頭がなくても行動できるか。なら、貴様は身体の方が死ななくなったから頭だけは専用の葬儀屋に頼んで親族や学校のクラスメイトに頭部だけ葬儀を出して火葬するからそれでよいか?」


 えっ、彼は何を言っているの?

 どうして頭だけ火葬するとか訳解らないよ。


「ねぇ、時彦。アンタは、どうして彼女の胴体は生きているの?首がないのに彼女が生きているのだけで怖いのに、あのゲームで私達もこんな風にされると余計に不気味で怖い…。」


 礼音。アンタは時彦に何か言いたい事があるんだね。

 だからここまで恐怖を抱きながらも彼に詳しい事を知りたいんだね。


「貴様が、礼音か。」


「そうだが。」


「礼音。藍那。貴様達きさまらは俺の能力で確かにμチップが破壊され、『マジカルガールパッチ』の効力は消えたからこのデスゲームからは離脱できた。だが、『マジカルガールパッチ』を脳みそに埋め込む際、特殊な細胞で身体の臓器は首から下の各臓器はそれぞれ脳みそに準ずる能力を持ち、不老不死を作る。」


「時彦。それって私たちは死なない事なの‼︎」


 特殊な細胞を埋め込まれた私達は老いと死を共に失った事になるなら、私達は確実に死ぬ訳にいかなくなる。

 だって、死んだら私達の身体がどうなるか分かるもん…。


「つまり、不老不死を失った事は閉経へいけいを失う事になるから、いつでも子供を生める体制が整えられる。」


 えっ、つまり私は高齢になっても子供が産める状態がいつまでも続くの…?


「さらに、首から下は絶対的な防壁により凶器を破壊する能力を得る。」


 えっと、つまり首から下は何も気付つける事が出来ないけど、逆に首から上は攻撃される恐れが高い事で間違いないよね…(^_^;)


「他方、貴様達は魔術能力以外の凶器で人や生きた動物を殺す事が出来なくなる。」


 うわぁ。何、この面倒くさい副作用は…(-_-;)

 でも、その彼がそのμチップを壊した影響で私はそのデスゲームから離れる事が出来たんだよね。

 なら、私はもっと前向きに行かないと…。


「そうなんだ。時彦さん。つまり私はμチップの効力を失った、細胞を書き換えられた副作用で細胞の不老不死が起きているのね。」


「そうだ。貴様達は首から下は守られる一方、頭部を狙われないように気を付けたまえ…。」


「ありがとう。時彦さん。」


「時彦。それで私達のμチップは壊したのに埋め込み後の副作用を消えないんだ?」


 私には凄く不可解なのはμチップの効力を消す事が出来ても、その副作用である細胞の不老不死化で私はずっとこの姿で生きなければならないと彼に宣言された。

 更に私はこの先、周りが年取っても私や礼音は死ぬ事が出来ない状態だとそれはそれで恐怖だった。


「俺は、渋谷美佳しぶやみかという妹を『マジカルガールパッチ』というμチップを搭載した殺人ゲームであいつの頭が死んだんだよ。」


「時彦。あんたの妹は、私達が買った商品で頭だけが死んだの?」


「そうだ。身体は無事に生きてたが頭は何も動くことが出来ず、頭の体温も冷えていた。不思議なのは、身体に死後硬直や体温低下がなかったが頭は逆に体温低下が既に始まっていたんだ。」


「時彦。アンタはその妹の影響で『マジカルガールパッチ』という商品を回収しているんだな。」


「そうだ。俺はアメリカの『レイスブック社』の儲け主義の怖さからロシアに情報を漏らす準備をしていた。」


「つまり、ロシアに逃げたのは『レイスブック』の情報を漏らした事が原因なんだ。」


 礼音。アンタはここまで暴くなんて凄いよ。

 でも、『レイスブック社』がやっている事は間違いなく企業犯罪というもので顧客の命を軽んじる行為だから普通、『レイスブック社』は裁判を仕掛けなければならないのにどうしてあの会社は裁判を仕掛けられないんだろうか?

 私は『レイスブック社』が訴えられない事情が凄く気になった。


「『レイスブック』は多国籍情報技術企業で世界中に『マジカルガールパッチ』の販売差し止め裁判を行った際に、多くの国では顧客側の敗訴が確定したんだ。」


 えっ、こんな危険な製品の販売差し止めした顧客がどうして裁判で負けるのか私には良くわかない。


「奴らは金で世界中の裁判官を買っているんだよ。俺はそれが嫌だった事、こんな腐った国アメリカに残るならアメリカの影響のない国に亡命しようと思った。だから謎の男に亡命のやり方を利用して有給休暇時にアメリカからロシアに亡命した。」


「つまり、会社の有給休暇を利用してロシアに亡命して『マジカルガールパッチ』の製品開発情報を漏らしたと。」


「そうだ。俺が開発者したが、それを『レイスブック』が悪用したからロシアに事情を話して漏らした。」


 時彦。アンタは妹が殺された過去から『レイスブック』の黒い部分を暴く為にロシアにわたってその情報を漏らしたんだ。

 私にはよくわからないけど、アンタが私達に埋め込まれたμチップを破壊した影響で私は不老不死が消えないながらもこの殺人ゲームの呪縛から外れた事を光栄に思いたい。


「時彦。アンタはどうしてμチップを壊せるの?」


 私は彼がどうしてμチップを壊せるのか非常に気になっていた。


「俺が体内に埋め込まれたμチップを壊せるのはロシアのとある男に契約して体内チップ破壊医師になったからな…。」


 時彦さん。

私にもその能力が欲しいです。

そうすれば多くの女性を救えるから…。

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