第百十五話 為政者の失政と結果
「なっ、なんだこりゃぁっ! くっ、痛てえええっ、畜生、なんでっ?」
「ぐわあああ」「痛てえっ、痛てええよぉっ」「ひぎいいいっ」「ひっ、手がっ、足がぁっ!」
「お帰りなさい、大魔王様。
みなさん、とりあえず止血してください」
「はい、フェンミィ様」
両手足を切断された二十名からの元奴隷兵士を見ても、顔色一つ変えないフェンミィが魔法治療師に指示をだす。
君もいろいろと修羅場をくぐってるよなぁ……。
「話し合いにはなりませんでしたね」
「ああ、もう無理だ。
全員を裁判にかける。
残りの元奴隷兵士達は、直接大魔王城へ送った方がよさそうだ。
ホールをいくつか、臨時の牢獄にしよう」
残念そうなフェンミィにそう答えた。
大量の凶悪犯罪者で、全員の手足を切り離して無力化するつもりだが、それでも管理には多くの魔法治療師と兵士が必要になるだろう。
幸いなことに、大魔王国の王都住民は元兵士が多く、近衛兵だけでも四万を超える人数が居た。
絶対に嘘がつけなくなる魔法が存在するので、とても公正な裁判が行われたのち、刑に服してもらう事になる。
大魔王国の刑法では、
「大魔王陛下、全員の止血が終わりました」
魔法治療師がそう報告すると、
「痛てえええっ! ちくしょぉぉっ! 不当だ! こんなの間違ってる!」
反乱元奴隷兵士のリーダーだった男が叫ぶ。
「俺は長い間苦しんだんだ! やり返してなにが悪い! くそおぉぉっ、許せねえっ! 許さねえぞ、大魔王!」
「魔法治療師の皆さん、この人たち全員を眠らせてください」
「はっ」
「ちくしょ……ぐぅ」
フェンミィに命じられ、魔法治療師達が睡眠の魔法で元奴隷兵士達をだまらせた。
「すみません、勝手な事をしました」
「いや、ありがとう」
頭を下げるフェンミィに礼を言った後、俺はその場に指示をだす。
「城塞都市を占拠した元奴隷兵士を排除し終わった後、みなさんは自治領の兵士と協力して、都市内部に残された被害者の治療にあたってください」
◇
「みなさん、こんな時間までお疲れ様でした。
今回の任務はこれで終了、解散となります。
魔法治療師の方々は、明日、有給休暇となるよう手配しますので、ゆっくり心と体を休めてください」
「お疲れ様でした」
大魔王城の前庭で、俺が仕事の終了を告げると、みんなホッとした顔で応じてくれた。
無理もない。
長時間の過酷な仕事で、ここへ全員で戻った時には、午前零時に近い深夜となっていた。
城塞都市に残された女性達の外傷は治療を終えたのだが、精神的なケアも必要となるだろう。
明日、大魔王国から専門家を派遣して、領王と協力して治療にあたる手筈となっていた。
城内へと戻っていく皆を見ていると……はっ! 視線を感じる!
また来たな。
城の玄関から顔をだしたオルガノンが、俺をジッと睨んでいた。
こんな遅い時間でもお構いなしだ。
「オルガ……」
話しかけて近づこうとすると、いつも通り走り去ってしまう。
困ったな、どうしようもない。
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