2話

「それで、どんな被害にあってるんだ」


「主に家に手紙がくる、って感じですね……内容は「裏切るな!」とか書いてました。これです」



そう言って斎田さんが持ってきていた手紙をこちらに寄越す。

紫苑さんがじっと手紙を見ている。



「監視カメラで見てれば現れるんじゃないのか?」


「それが、マンションのカメラ見せてもらったんですけど、不審な人はいつまでたっても現れなくて……でも手紙は入ってるんです……」


「不思議だな……」


「それに字に見覚えがあるっていうんですよ。女の字なのに」


「昔から見たことがあるような気がして……でも女の人は苦手で関わってこなかったんだが……」


「苦手なのにアイドルしてるのか……」



困惑した様子の紫苑さんに少し笑いそうになる。



「それなんですよ……俺がやるって言ったらついてきちゃって。困っちゃいますよね」


「うるせぇ、今その話じゃねぇだろ」



嬉しそうにする斎田さん……ファンが見たら卒倒するんじゃないか……



「それで、今は俺の部屋に匿ってるんですけど、そろそろ俺の服勝手に着るのやめてほしくて」


「それはわかるぞ……一緒にいると勝手に服着られるよな……」


「……もしかして俺のことっすか……」


「当たり前だろ、いい加減にしろよ」


「す、すいません……」


「まぁ、お前たちの事情はわかった。こっちでも家の周り調べてみるが、そっちでも用心して過ごしてくれ。犯人は思ったより近くにいるもんだ」



部屋の住所と部屋番号を教えてもらい、その日はこの後仕事があるというので帰っていった。次に会うのは明後日だ。

監視カメラにも映らないなんて不思議な話だ……



「紫苑さん、どう思います?」


「ファンではないんじゃないかとは思うが……俺たちのほうでも監視カメラの確認しに行ったほうが良い」


「いつ行くんすか」


「客の入り具合にもよるが、明日あたりにでも行こう。マンションの管理人に連絡つけておく」


「了解っす!」



その夜、夕飯を食べてからテレビを見ているとスパークリングの二人が生放送の歌番組に出ていた。

仕事っていうのはこれのことだったのか。



「紫苑さん、テレビ見ましょうよ~出てるっすよ!」


「今行くからちょっと待ってろ」


「はやくはやくー!」



呼んだら紫苑さんが来た。いつもなら「俺はいい」とか言うのに……

歌う前のトークで、強羅さんが後輩アイドルと話していた。



「こいつは誰だ?」


「小学生時代からの後輩らしいっす。ほかの番組でも言ってたの聞いたから間違いないっすよ。ちなみに、斎田さんとは高校で知り合ったみたいっす」


「後輩……そんなに嬉しいもんなのか?」


「強羅さんのこと追いかけてきたみたいっすから、嬉しいんじゃないっすか?俺も紫苑さんと仕事すんの楽しいし!」


「……それは少し違ぇだろ……」


「照れてるんすか……?」



そっぽ向いた紫苑さん、照れちゃって……酔っぱらったときは同じこと言うくせに、ツンデレっすね。



「あ、そういや……この後輩、強羅さんのとなりの部屋に住んでるらしいっす」


「……!怪しいやつがいたらこいつも見てるはずだろ……ぜひ明日あたり話を聞きたいが……」


「どうやって会えばいいっすかね……スパークリングの二人に掛け合うと時間かかりますし……」


「明日行ってから考えるか」


「そうっすね、運よく家にいるかもしれないし……」


「最悪管理人にいろいろ聞けばいいだろ。忍、テレビ見たら早く寝ろよ?」


「わかってるっすよー!朝はお店のお手伝いっすよね!」


「わかってるならいい」


「いっつも思うんすけど俺、店にいたら怖がられないっすか?」


「……俺よかマシだ」


「あー、確かに紫苑さん花束に見せかけて銃とか持ってそう」


「訳の分かんねぇこと言うな。普通に傷つくだろうが」


「……すいません」


「ふっ、少しからかいすぎたな」



笑いながら頭を撫でられて、今度は俺が照れる番だった。

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