第7話 音無仁くんは、吸血鬼になったようです。その2


「 俺、ひなの血吸ったよな?」


俺は、学校の最寄り駅 三城駅さんじょうえきのホームで電車を待ちながら、思考する。

朝目が覚めてから、ずっと続いていた異常なまでの喉の渇きはおさまってる。

―――ひなの血を吸ったからだ。

喉を通っていく血の味は今思い出しても、全然嫌な感じはしない。むしろ甘く

感じた。好きな人の血だからか?

――今は、そんな事どうでもいい!なんで、血を吸ったかだよ!


『 まもなく8時45分発 実原みはら行きの電車が五番ホームに到着します。』


俺の思考を遮るように、機械的な女性のアナウンスが俺が乗る予定の電車が来る事を告げる。程なくして四両編成の電車が発着メロディーともにホームに入ってくる。

この時間は、通勤通学ラッシュが終わってるから、止まった電車から降りてくる人からは、不審そうな目で見られてる気がする。 結果的に学校をサボった後ろめたさから、俺は人の視線を避けるようにして電車に乗った。電車の中では、自宅近くの駅まで五分程だけどえらく長く感じた。



「 ただいまー。」


こっそりと、家のドアを開けて入る。そのまま自分の部屋へ行くつもりが、朝陽兄さんに捕まった。


「 お帰り。えらい早いご帰宅だな? 」

「 へへっちょっとサボった。」

「 ほー、ばり(すごい)くそ真面目なお前がサボりとは。理由きかせぇや。場合によっちゃ、叔母さんに報告せんといけん。」

「 ――わかったよ。」


朝陽兄さんに連れられるまま、キッチンに向かうと、髪をツーサイドアップテールにした女の子が椅子に座ってお茶を飲んでいた。


「あれー? なんで、仁さんいるですか? ひなお姉ちゃん学校に行きましたよ。」

「 ミカンこそなんでおるん?」

「 うちの中学校昨日の日曜日に学校行事やったので、今日は休みです。」


女の子 ミカンはそう答える。彼女は、ひなが召喚魔法により、異世界から呼び出されたネコミミ少女だ。服部家の養女になって、地元の中学校に通ってる。ちなみに余談だけど、ネコミミは、髪の毛に変化するという魔法が施されたリボンを結んでネコミミは隠されてる。ツーサイドアップテールになってる部分がそうだ。


ミカンなら、俺がなぜ血を吸ったか理由がわかるかも知れない。

なぜなら、彼女のいた世界が俺やひなの先祖の生まれ故郷だからだ。


「 実は、俺、ひなの血を吸ってしもうたん。ミカンは、なんか原因知っとらん?」


重い感じにしたくなくて、俺は軽い感じで、ミカンに訊いたんだけど、ミカンは、顔に驚愕の色をにじませていた。


「 それってマジですか?」

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