第8話音無仁くんは、吸血鬼になったようです。3
「それってマジですか?」
「うん、マジ」
ミカンは、真剣な顔で俺に質問してくる。
なんだろう?急に不穏な方向にいきそうなんだけど。俺は、ミカンの正面に座り話を聞く。
「 仁さん、確かこの前『 入れ替わりの魔法』でひなお姉ちゃんと入れ替わってましたよね?」
「 ああ。ほうじゃけど。それが何か関係するん?」
「 ――多分。ちょっと待ってて下さいね」
ミカンは、目を閉じるとしばし腕を組んでじっとしてた。彼女は一度聞いた話や一度読んだ書物の内容を隅々まで記憶できるという特技の持ち主だ。その内容は、必要に応じて思い出せるらしい。
――さしずめ歩く百科事典だな。
「 あのですね。ぼくが随分前に、吸血鬼族の古老から聞いた話なんですけど、吸血鬼族の人間は、大体十二才くらいまでに、吸血能力が顕現するらしいんです。昔は、それで一人前って認められたみたいなんです。今はそんな事ないですけど、むしろ吸血能力のある人のが珍しいです」
「 そうなん」
吸血鬼族なのに血が吸えないって、そんな事あるんだな。俺はそう思ったけど、あえて口には出さず、ミカンの話を聞いてた。
「 こっから先が重要なんです。昔は、血が吸えないない吸血鬼族の人間は、血が吸えるようになる為に、異性と交わりを持ったそうなんです」
「 それってまさか」
口に出して言えない事じゃないよな? 俺は、いつか友達と読んだエロ本の内容を思い出して、顔が熱くなる。
そんな俺の思考を読んだのかミカンは、咳払いをして続ける。
「 仁さんが、想像してるような行為とは違います! 異性と交わると言っても、お互いの血を飲む事らしいですよ。」
「 だよな。ハハハ。」
「 そうですよ。古老の話だと、吸血能力が無い者の血を採血して、異性で交換して飲むみたいです。」
「 あっほうなん。」
意外と淡々としたやり方だな。まあ、吸血能力を目覚めさせる為だけにやる事だからか。
「 だから、仁さんの吸血能力が目覚めたのも、『入れ替わりの魔法』のせいじゃないかと思うんですよ。これも異性と交わってますからね。ただ、ひなお姉ちゃんの場合は、既に吸血能力が目覚めてるから、仁さんの場合は微妙に違いますね。」
「 ――確かにな。」
ひなは、六歳の頃に吸血能力が目覚めてる。だから、ミカンの言う方法では、俺は、当てはまらない気がする。
「 でもきっかけになってるのは確かですよ。恐らく、仁さんの体に眠っていた吸血能力が刺激されたんでしょうね。」
「 うーん。いまいち納得できないけど、そう結論付けるしかないんか。」
俺は、そう言うと、椅子から立とうとすると、ミカンがポソっと一言。
「そう言えば、仁さん。吸血欲求とか制御する方法とか知ってるんです?」
忘れてた。一番肝心な事じゃないか。
ああ誰か助けてくれ!
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