第5話音無仁くんは、吸血鬼になったようです。1

仁くんは、吸血鬼になったようです。



1


TS騒動から数日。俺は、ある違和感で目が覚めた。



「 ぶり ( 凄い)喉渇いとる?」


朝日がカーテン越しに差し込む八畳ほどのフローリング張りの自室で、目を覚ました俺は、ベッドに体を起こした状態でそう呟く。

喉が酷く渇いてるというか、うまく表現できないけど、体全体が何かを求めてるのは確かだ。


朝起きたてだからか?それとも何か体調不良か? 水を飲めばおさまるだろ。

俺は、パジャマ代りに着てるTシャツに手を突っ込みお腹をボリボリかくというおっさん臭い行動をしながら、一階のキッチンへ向かった。


「 お早うっていないんだった。朝陽兄さん」


昨日の夕方休みだったのに急患が運びこまれたとかで、出ていたったんだっけ。まだ帰ってないってことは、まだ病院にいるんだ。

俺の両親もだけど、医者ってのは大変な職業だな。


「 今の状態の相談したかったけど、まあええか」


俺は、冷蔵庫からミネラルウォーターをとり出して、コップに注いで一気に飲むけど、一向に喉の渇きは収まらない。


「 水飲んだのに。まぁいい。だるいとかないけぇ、風邪とかじゃないじゃろ。」


俺は、コップを流しに置くと、自室に戻り、学校に行く支度をする。

喉の渇きが収まらないのが気になるが、こんな事で学校を休む訳にはいかない。適当に朝飯を食うと家を出た。



「 お早う。仁。」

「お早う。仁くん。」

「 お早う。バカップル。」


駅に着くと、今朝もお手てをつないで登校する渉と長谷川に嫌みを言ってやる。今朝は、ひなのやつがクラスメイトからヘルプを頼まれたとかで、朝早く学校に行ったからに俺一人だ。


「くそリア充共め。見せつけやがって。」

「 ひながいなからって、俺らに八つ当たりすんな。」

「 うるせ。」

「 渉。意地悪しない。」



電車を待っている間俺は、渉や長谷川とバカな会話を交わしながら、朝から続く喉の渇きをごまかしていた。

電車に乗り、駅から学校に向かって歩いていても、喉の渇きは収まらない。

それどころか酷くなっていってる。




教室に入ると、ひなが俺らに近寄ってくる。


「 お早う。仁とバカップル。」

「 ひなまで、そんな事言う。」

「 だって、事実じゃろ。ねぇ仁もそう思うよね?」


ひなに話をふられて、俺は、ひなの顔を見た瞬間、ひなの首もとにかじりつき、



「 仁、お前」

「 仁くん。」


渉と長谷川の驚愕するような声で、俺は、我にかえる。

――俺今何やった?

幸い他のクラスメイトに見られてないみたいで、渉や長谷川が呆然と俺を見ているだけだ。


「 俺、帰る。」


俺は、鞄を抱え、そのまま教室を飛び出しのだった。





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