321.マイゲート

 工事車両が入る場所の拡張工事が必要だけど、周りは木だけなので、いくらでも広げられる。


 この建物から五百メートルくらい離れた場所に沢があるくらいで、ほかはなにも無い。好きにしていいって言ったわけがわかったね。


 山の上のほうだけど、広い平地なので切土や盛土は必要ない。作ろうと思えば野球場やサッカーグラウンドだって作れる。


「どう思う?」


「悪くないと思うよ。道は少し拡張して舗装は必要だけど、思った以上にまともだったね」


 貴子様がただで寄こすくらいだから、俺も沙羅も絶対に酷い場所だと思っていた。こんなにまともな場所だとは……って逆に唖然としている。


 鍵を開け建物に入ると、少し昭和チックな古さを感じさせる。六畳くらいの個室五部屋、食堂、風呂、多目的ホールがあり、そして建物の裏に地下へのエレベーターがあった。


 光明真会の管理するゲート管理棟より、だいぶ貧相で全体的に少し狭い。まあ、あちらは常駐している探究者シーカーがいるから、不自由させないために広く最新の設備完備をしているのだろう。


「これでも、向こうの連中からすれば腰抜かす環境だぞ。こんな生活ができるなんて、王侯貴族くらいなもんだ」


「そうですね。商業ギルド副ギルド長時代でも、住んでいた家にシャワーどころかお風呂もありませんでした。井戸で体を洗うか、共同浴場に行くしかありませんでした」


 商業ギルド副ギルド長クラスの家にもお風呂は無いんだ。湯に浸かれるだけの潤沢な水に、それを沸かす燃料を考えれば王侯貴族でもなければ難しいのだろうね。


「マーブルは毎日お風呂に入っていたって言っていたわよ?」


「マーブルさんは桶に湯を入れ、猫化して入っていたと思われます」


 なるほど、そうすれば少ないお湯でも問題ないか。


「私も精霊魔法を使えば毎日でもお風呂にはいれたのですが、精霊魔法は制御が難しいので滅多に使いませんでした」


 精霊魔法で水やお湯を出せるけど、精霊さんの受け取り方次第で溺死、熱湯地獄になりかねないみたい。精霊さんの気分次第ってところが怖いね。


「新しい建物と工房建設は急務ですが、ゲートの管理も重要です。向こうのレイダーを雇おうと思いますがどうでしょう?」


「レイダーはピンキリです。厳選しなければ問題が起きると思われます。一応、講師の件で向こうで募集をかけていますが、まだレイダーギルどからは色よい返事はもらっていません」


「だろうな。まあ、間引きするモンスターはザコなんだろう? なら、まだレイダーとしてスレてない若い連中を雇えばいいんじゃね?」


 確かに中堅クラス以上になると、悪い意味でレイダーに染まってしまう。まともで真面目なレイダーもいるが、そういう人を見つけるのはなかなか難しいのが現実。


 なら、実力は二の次にしてまともなレイダーを雇えばいい。というのが、ライナーさんの考え。


「確かに、駆除するモンスターはザコですが、間引く量が半端ないです。大丈夫でしょうか?」


「ねえ、アキくん。ライナーさんに試してもらったらいいんじゃない?」


 なるほど、そのとおりだ。さっそく、ゲートにゴー!


 ゲートのシャッターを解放する。


 アディールさんも異界アンダーワールドに行ってみたいというので一緒だ。


「なにか変わりはありませんか?」


「なにもないな」


「私もです」


 異世界の人には異界アンダーワールド怪異モンスターが接触して、マギとはならないようだ。


「残念です。私も可愛いマギが欲しかったです」


 アディールさんは本当にガッカリしている。可愛いマギが来るとは限らないんだけどね。ライナーさんはまったく気にしてない。もしかしたら、もうレイダー稼業に戻る気がないのかも。


 ゲートを潜り異界アンダーワールドに移動。ぐるりと回りを見渡せば、二方向が平原、一方向が山、もう一方向の遠くに海? 湖? がある。


「いろいろなフィールドがあって楽しめそうだね!」


 軍神沙羅のお眼鏡にかなったようだ。


 ここはマイゲートとも言えるようになるので、気になっていたみたい。一面、砂漠とか湿地、雪原なんて困るからね。


 気温もちょうどよく、過ごしやすい。探索にはいい場所だ。





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