322.間引き検証

 ライナーさんもアディールさんも武器を持ってきていないので、俺の武器を貸す。ライナーさんにはカットラス二本、アディールさんにはコンパウンドボウを渡した。


「いい感じの長さで使いやすそうだ」


「変わった弓ですね。これは滑車ですか?」


 なぜか、沙羅も武器を出している。今日は軍神の出番は必要ないですよ?


「じゃあ、やりますよ」


 ジミーの家から貰っておいたお祭り用の爆竹に火を点ける。けたたましい音が鳴り響き、遠くからこちらに怪異モンスターがやって来始める。


「おいおい、まじかよ……」


「わざわざ、モンスターをおびき寄せるのですか……」


 ライナーさんもアディールさんも、ないわぁーって顔しているが、俺も最初の時はあんな顔をしていたんだろうな。


 だがしかし! 軍神沙羅だけは違う。その表情は、これから始まる殺戮劇を想像してか喜色満面。喜びを隠せないでいる。


 前回、間引きで使った日本製の爆竹と違って、ジミーの家から貰ってきた爆竹は量も音も桁違い。怪異モンスターたちがわらわらと寄ってくる。


「おいおい。これはなんぼなんでも数が多くないか?」


「これでは矢が何本あっても足りませんよ?」


 だね。爆竹のせいか間引きが不十分だったのか、俺の想像を超える数の怪異モンスターだ。


 さすがに、これはまずい。


「はにゃ~」


「……」


「ヒヒィーン」


「みこ~」


 全員召喚。


「ミコちゃん、おひさ~」


 ミコと沙羅がハイタッチ。その後、お馬さんが沙羅に擦り寄る。はにわくんとはにわくんミニは、新人ミコに自分の場所を奪われ呆然。


 誰一人? として本来の主人に挨拶に来る者はいない……。


 いや、いいんですけどね。でも、なんかそれって違くない?


「なんか変なのが出てきたな……」


「召喚術でしょうか? 高度な術と聞いていましたが……」


 怪異モンスターは四方八方からやって来る。なので、ライナーさんとアディールさん、俺、沙羅、召喚組の四方に分かれることにした。


「みこ~!」


「ヒヒィーン!」


 先陣を切ったのはお馬さんに乗ったミコ。怪異モンスターたちの中を縦横無尽に走り回り、吹き飛ばしていく。お馬さんがね。ミコはなにもしていない。、もしかしたら、方向はミコが指示しているのかも。


 それに続けと走り出すはにわくんとはにわくんミニ。怪異モンスターが武器を持っていようと持っていまいと、このザコ程度なら瞬殺。


 気合を入れた軍神沙羅も、負けじと走り出す。


「はぁ、これは負けていられないな。フォローだけお願いします。アディールさん」


「矢が尽きるまではお付き合いします」


 アディールさんにはカーボン製の矢を五十本渡しているけど、すぐに尽きると思う。その後は、ライナーさん一人で頑張ってもらわなければならない。


 さて、俺もりますか。


 陸軍二四式長剣拵りくぐんにじゅうよんしきちょうけんごしらえを両手に持つ。儀礼用のせいか、普通の長刀だが柄は片手用になっている。本来であれば、よほどの怪力の持ち主じゃないと、片手で刀を扱うと十全の力を発揮できない。


 だけど、ここは異界アンダーワールドで、俺は探究者シーカー階位レベルの恩恵を受けられる。そのうえ、乱舞高揚も発動した。陸軍二四式長剣拵を軽く感じる。俺的には竹の棒を持っているくらいの感じだ。


 ただ斬りつけただけでも怪異モンスターを倒せるが、ここはしっかりと訓練の場としたい。右手は打狗棒法、左手は霊蛇杖法など刀法以外も組み合わせ、並列思考を使い怪異モンスターを倒していく。


 凄く、いい訓練だ。経験値が貯まっていくのが実感できる。


 徐々に武器を持った怪異モンスターも現れ始めるが、今の俺の敵ではない。現れている怪異モンスターは光明真会のゲートとほぼ同じ。稀に大きな蛙が混じっている。


 こいつが微妙に厄介なんだ。長い舌での攻撃が食わせ物。意外と早い動きで、手に絡みついてきて離れない。反対の手の刀で舌を斬るしか今のところ方法を見つけられていない。


 両腕を絡められたらどうすればいいんだ?


 どうやら、沙羅も俺と同じように訓練モード。無双するのかと思いきや、いつもの薙刀を使いながらの魔導書を使うといった器用なことをしている。


 魔導書は宙に浮いているので、手に持つ必要がないのでできる芸当だね。ただ、魔導書の威力はこのレベルの怪異モンスターにはオーバーキル。


 魔導書から放たれた炎弾が怪異モンスターに当たれば爆散して影も形も残らない。これが範囲攻撃なら周りを巻き込んでいいのだろうけど、単体攻撃なので無駄。まあ、訓練だからいいか。


 最初に担当方角の怪異モンスターを全滅させたのは召喚組。はにわくんとはにわくんミニを置いてけぼりにして、暴走列車と化したミコとお馬さんは強かった……。


 納得できない顔して残敵処理をしていたはにわくんとはにわくんミニは、倒す怪異モンスターがいなくなるとライナーさんたちの領海侵犯を狙って走り出す。


 そこまで戦いたいのか、君たちは!




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