320.護衛は必要

 その日はお祝いということで帰らせてもらえなかった……。


 お寿司やオードブルが出前で運ばれ、小太郎とマーブルは大はしゃぎ。


 忠道さんと紗耶香さんも帰ってきて、俺と沙羅の婚約の話を聞けば、


「「沙羅も女だったと証明できたな(わね)」」


 と感慨深げに言われていた。


「酷い! 元から女だもん!」


 そんな、魂の叫びを上げる沙羅を尻目に、マーブルが近寄ってきて、


「やっとさらっちとあきっちが結ばれるにゃ。あちしも安心したにゃ」


 なんて、小声で言ってきたので、


「じゃあ、次はマーブルのお婿さん探しだな」


 って返してやった。


「にゃ、にゃ~⁉」


 マーブル商会は大きくなる。だから、マーブルの後継者も考えていかないといけない。ケット・シーの結婚適齢期を知らないけど、お相手は考えておいたほうがいい。


 変な男に捕まったらたまったもんじゃない。ちゃんと、俺たちでそのお相手を見極めないとね。


 明日は大学があるので控えめに飲んだけど、それでもやはり次の日は二日酔い。毎度の風月のお世話になった。沙羅もね。


 朝、大学の準備に一度下宿に戻り、ライナーさんをお供に大学に向かう。


 今日から、行き帰りはライナーさんが俺の護衛に就く。たいした距離じゃないけど、沙羅と違って車での送り迎えのない俺は悪い考えを持つ奴らの格好の的になるとの判断からだ。


 そんな護衛のライナーさんは北欧系のイケメン。俺と歩いていると異様に目立つ。特に最近の俺はわざとダサい伊達メガネなどを着けているから、対照的に目立つ。


 モデルの仕事をやったせいで、まだ少数だが顔バレしている節があるのだ。来月には、この間のモデルの仕事の雑誌が発売される。それだけでなく、渋谷の有名ビルの一面に俺と沙羅の姿が


 そうなると、顔バレする確率が上がるので、今から地味男に変装しているのだ。


 校門前に近づくにつれ女性陣からモデルさんかな~? などの小声が聞こえてきて、スマホでライナーさんを撮る者まで出てくる。


「生まれる前も含め、苦節うん十年。やっと、俺の時代がきたー!」


 あなた奥さんいるでしょう!


「あっちじゃ、ひょろい細マッチョは好まれないんだよ。人気があるのはマッチョ! ムキムキマンが女性の憧れなんだ。エレインがいようと、一刻の夢を見せてくれたっていいじゃないか!」


 馬鹿やって、エレインさんに怒られても知りませんからね。どう見ても、エレインさんのほうが強そうだからね。肉体的にも、精神的にも、家庭的にもね。


 取りあえず、大学の授業は真面目に受けている。正直、もう必要ないとも思うけど、卒業はちゃんとするつもりだ。これは、大学にいくチャンスをくれた、亡き祖母へのけじめだ。


 授業も真面目に受けるが、友人の兼好にダンジョンやラビリンス探索のマッピングをどうにかできないかの相談もしている。


 スマホが使えればアプリを作ってマッピングもできたのだが、スマホも使えないGPSも無いでは正直難題。本当はやっちゃいけないのだろうが、Cデバイスを渡して使えないか確認してもらっている。


 まあ、兼好は将来的に俺のブレインとして雇うつもりなのでいいだろうって感じ。絶対にこいつはドワーフの職人連中と気が合う。酒飲みとしてもな。間違いない。


 金曜の夕方に青梅のゲートについて打ち合わせ。


 天水専務は既に建築業者を連れて見に行っている。道は広く作られているけど、途中から舗装されていないのでそこを舗装したほうがいいとのこと。道路拡張も視野に入れているらしい。


 冬は雪も降るから舗装してあったほうが、除雪が楽なんだそうだ。なるほどね。冬でも食料品とかの配送が必要だから、トラックが通れるように除雪は大事。


 建物は自体は古いけど、しっかりとした造りなのでリフォームすれば快適になると判断された。だけど、今の建物の規模だと一家族、二家族ていどならまだしも、大人数になると狭い。なので、隣に新しい居住用の建物と作業用の建物を建てる必要があるという。


「明日、アディールさんとライナーさんを連れて見に行ってきます。向こうの生活様式のことも考えないと駄目でしょうから、二人を連れて意見を聞いてみます」


「我々にとっては常識でも、彼らにとっては非常識ということもあり得る。宗教的なことでタブーとされていることもあるかもしれない。その辺を纏めてもらえると助かる」


 こちらの世界のものは非常識だらけだろう。だけど、使えばもう離せなくなる。たとえ、宗教的なタブーとしてもだ。


 まあ、ライナーさんを見る限り、あんまりタブーみたいなものはなさそうだけどね。まあ、確認は必要だな。


 土曜日、朝早くから沙羅の家の車で出発。高速を使って青梅ICまで行き、そこから下道を行く。出発から四十分くらいで目的地に到着。意外と近かった


 でも、途中からの山道は大変。広い道とはいえ、大型車ではすれ違えない幅。駐車場も広くない。普通乗用車十台分くらい。工事をするなら拡張が必要だ。


 これはなかなか大変かもね。







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