250.唖然とする結果

 今日からあかねさんが出社。といっても、誰かに紹介するわけではない。シークレット社員なのだ。


 今日はうちの会社内に怪しい物がないかの確認をしてもらう。主に仕事で使っているPC。作業服に着替えてもらって会社内のすべてのPCをチェックしてもらう。


 ほかにあかねさんの紹介で、盗聴器などの調査をしてくれる友人を連れてきている。女性でコミケ仲間らしい。腕は確からしいので任せた。


 俺は仕事をしているとジンからスマホに連絡。


「なんかあった? 自由空間の習得の続きをやる気にでもなった?」


『……すまん。かけ直す』


「いやいや、冗談だら。それで、なんかあったの?」


『明日空いてるか? 頼みごとがある』


 頼み事なんてめずらしいね。まあいいけど。ということで、明日会うことを約束した。沙羅も誘ってみよう。


 お昼にあかねさんとその友人と一緒に重役弁当を食べる。あまりの豪華さに二人は驚いていた。まあ、普通に新鮮なお刺身が付いてくるからね。今日は社員のみなさんと別の部屋で食べているので、俺のお刺身は小太郎のご飯になっている。あかねさんと友人も半分くらい小太郎に貢いでいたけど。


「小太郎ちゃん、美味しい?」


「にゃ~♡」


 誑しだな。


 食べ終わった後に中間報告してもらう。PCのほうは外部用PCに侵入されている形跡が多数残っていて、定期的に内部の情報がどこかに送られているそうだ。まあ、外部用に重要な情報は無いので気にしない。メールのやり取りくらいかな。まあそれも、まだ重要なやりとりはないからいいか。


 内部用のPCには問題がないとのこと、まだ数台しか作業していないので午後から残りのPCもチェックすることになっている。


 問題は盗聴器類。ここに事務所を開設した時点で一度専門業者を呼んでチェックしている。なのに既に十個ほど盗聴器が見つかっているそうだ。そして驚いたのが、建物内部には無かったようだが駐車場にカメラを一つ見つけているみたい。


 ほかにも敷地外にだが、このビルを囲うように五つのカメラが設置してるのを発見。ただ敷地外なので手が出せないと言っている。常時、映像を送信しているタイプで、プロテクトもかかっていないので受信さえすれば誰でも見られる物らしい。


 まじかぁって感じ。誰かが侵入して設置したのか、前に雇った業者が設置したのかわからないが、とんでもねぇな。


 取りあえず、駐車場と敷地外のカメラも回収してこよう。相手に気づいているぞ、こっちも警戒しているからなってメッセージになる。一緒に行ってもらって、カメラに映らないように後ろから回り込んですべて回収。すぐに電池を抜いて機能停止にする。


「これ、もらってもいいですか?」


「いいんじゃない? でも、犯罪に使わないでくださいよ?」


「使いませんよ~」


 持っていても仕方がないので、盗聴器とカメラは欲しいというので差し上げた。すべては自己責任でお願いしますと念を押しておく。


 夕方、最終報告を聞くと、数台のPCに深夜の時間帯に起動したログが残っていたそうだ。使用者に確認したが、深夜の時間帯に使ったことはないとのこと。うちは基本、残業はない。たまに、一時間くらい残業する程度。


 そこまで重要な情報が入っているPCじゃなかったからいいけど、これは冗談抜きに早急に物理的なセキュリティ対策が必要だ。セキュリティ会社にお願いしているのにこのざま。会社に侵入されているなんてもってのほかだ。


 なので、あかねさんが連れて来た友人に定期的に依頼を出すことにした。ついでにあかねさんと一緒に、夜間用の監視カメラの設置などのネットワーク構築も依頼した。


 常駐で雇いたいと言ったのだけど、本業は主婦なのでパスと言われた。主婦なんかい!? 


 旦那さんが無線機関係の販売をしているお店をしているそうだ。盗聴器関係は旦那さんの店の仕事の一つでもあるとのこと。なので、そちらと正式に契約を結ぼうと思う。


 そこで、今の民間の警備会社との契約を切ることにした。どことは言わないが、外部と繋がっている可能性が出てきたからね。正直、そこまでやるかぁって感じだ。


 すべての報告を聞いた天水専務は顔が真っ青。まさか、ここまでとは思っていなかったって感じ。まだまだ、リスクヘッジが甘かったということだ。今回はいい勉強になったと思うしかない。


「出入口を完全にシャッターで塞ぐか……」


 なんて言っている。夜間の入り口を限定するってのはありかな。一階の出入り口を夜間完全に塞げば、後は非常口しかなくなる。


 今後、俺も屋上に住むから、非常口まで夜間塞がられると買い物などに行けないので不便になる。なので非常口は仕方がない。ならば取りあえず、非常口を中心に警備を固めればいいという話になった。


 今後、生活しやすいことも考えた、何かしらの防犯設備が必要になってくる。


 こうして、ビルの要塞化計画が始まるのだった。





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