251.ジンの頼みごと
今日は沙羅とお出掛け。といっても、ジンに呼ばれたので話を聞いた後にデートって感じ。
待ち合わせ場所のお高いチェーン店のコーヒーショップに着いた。ジンはもう来ていて隣に厳つい壮年の男性がいる。俺を見つけると手お挙げてコイコイしてきた。
「悪いな。それと、沙羅ちゃんも連れて来たのか?」
「気にしなくていいよ。俺たち、まだ春休み中だからねこの後、デートでもしようかと」
「デ、デート!? ……こ、こんにちは。ジンさん」
厳ついおじさんに、俺たちをもの凄くジロジロ見られているのだが……なに?
「まあ、適当に頼んでくれ」
「ジンの奢り?」
「当然だ」
じゃあ、お言葉に甘えて、俺はアイスコーヒー、沙羅はカフェオレそれとチーズケーキ二つを頼んだ。
ちなみに、今日は小太郎を連れてきていない。加奈ちゃんが春休みに入ったので小太郎を預けてきた。もうすぐ、引っ越すのでなかなか会えなくなるから。
「ジンって呼ばせているのね。妬けちゃうわ。
「こいつは俺の弟。身内だから当然だ。
「「……」」
俺と沙羅は目が点。まさか、この厳ついおじさんがオネェ言葉とは思いもしなかった……。
それより、台湾のイングリッシュネームってあだ名みたいなものだと聞いている。ジンの本名は
「二人ともいいわねぇ。特に今話題の謎の貴公子、撮り応えがあるわ」
「なんじゃ、その謎の貴公子って!?」
「あら、本人のことなのに知らないの? この業界じゃ有名人よ?」
どうやら、アレックとニッキーのMVとPVに出てことで、名前も素性も不明の謎の人物と噂になっているらしい。
「それで、頼みってなに? 話しが見えないんだけど」
「実はな……。頼む! モデルをやってくれ!」
「はぁ~?」
話しを聞けば、本来のモデルさんであるジンの事務所の後輩が先日バイクで事故ったらしい。このカメラマンの
そして、この
そこで、昨日のジンからの連絡となる。
「えぇー、嫌なんですけど~」
「兄ちゃんを助けると思って、そこをなんとか頼むよ~。アキ~」
「モデルねぇ。一応、これでも社長業やってるんですけど? サラはどう思う?」
「大叔父様に確認を取ったほうがいいかも?」
ジンの頼みだから断り辛いんだよなぁ。天水専務に電話して事情を説明して聞いてみる。以前、少し話に出たことがあることから、弁護士と相談して連絡を返してくれることになった。
「謎の貴公子君って社長さんなの?」
「名乗りが遅れて申し訳ありません。
名刺も渡しておく。
「本当に社長さんなんだ~。そっちの魅力的な女性は奥様かしら?」
「ふぇぇぇ!? お、奥さま!」
「まだ、二人とも大学生なので結婚はしていません」
「け、結婚!?」
「大学生なんだ~」
ゆでだこ状態の沙羅を放っておいて、チーズケーキを食べアイスコーヒーのおかわりをしたところで天水専務から連絡があった。
本名と素性は明かさないことでOKが出た。
「まあ、そのくらいならなんとでもなる。実際にそういうモデルもいるからな」
「じゃあ、決まりね。みっちゃんのほうは準備できてるのかしら?」
「いつでもOKってメールできてる」
みっちゃんというのはジンのマネージャー。会ったことはないが、前にジンからモデルをやらないかと言われた時にその方の名刺をもらっている。
急いでタクシーで移動する。今回は時間がないので、ロケ地での撮影はなし。都内のスタジオでの撮影となる。
最初は慣れたジンから開始するみたい。その前に、ジンのマネジャーさんとご挨拶。
「今回はオファーをお受けくださり、感謝の念でいっぱいです! 今後ともよろしくお願いします。当事務所と専属契約をしてくれると嬉しいかな~と」
「今回限りで勘弁してください」
なに言ってるのこの人。三十代くらいのやり手のキャリアウーマンみたいに見えるが、怪しさ満点だ。
ジンと一緒にメイクさんから髪型のセットやメイクをしてもらう。その間も衣装さんからの衣装などの説明が入る。正直、まったく頭に入らない。唯一残っているのは今回の撮影は秋物ってことくらい。
まだ、季節は春なんだけどねぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます