245.人材登用

 売りたいもの、売れるものはいくらでもある。向こうから買う物も、武器防具以外でもおおよその目途がついてきた。


 あとはこちらでの体制が整えるだけ。なので、高性能武器防具以外の品も始めて行こうと思う。一定以下の性能の武器防具の購入も始めよう。


 正直、向こうのお金リルが余りに余っている。魂石の中間マージンにマーブル商会に卸している品のお金が、円に換えられず貯まり続けている。


 自衛隊に売った防具の代金があるから会社的には問題ないが、この状況が続けば資本金が底をつきかねない。宝石関係もまだ始動していない。早くリルを円に換える必要がある。


「一度、マーブルとアディールさんにも向こうに戻ってもらい、こちらで売る物の仕入れをお願いします」


「行ったばかりだから嫌にゃ~」


「働け! 駄猫。天水家出禁になりたいか? もう、美味い物も食えないし、だらけた生活もできなくなるぞ?」


「イエス、サー! 粉骨砕身頑張りますにゃ!」


 よろしい。沙羅とアディールさんは苦笑いだ。


「それと向こうからうちの会社の警備する人を雇いたい。各国のエージェントがうちを調べているらしいから、夜間会社にいていもらえる人が欲しい」


 日中は天水祖父の息のかかった元自衛隊二人を雇っているが、夜間はセキュリティ会社と契約しているだけ。もうすぐ俺も会社のペナントハウスに移るから、夜間の警備も必要になる。


 各国のエージェント相手となると荒事も出てくるかもしれないので、優秀な人材が欲しい。


「レイダーギルドに相談かにゃ?」


「現役のレイダーは厳しいのではないでしょうか?」


「引退した人でも構いません。実力があって斥候系のスキルを持った人が望ましいです。住み込みになりますので家族同伴でも可です」


「家族も呼んじゃうの?」


 逆に家族のいる人のほうが好ましいと思っている。ある意味、人質になる。向こうよりいい生活ができて、人質もいるなら裏切り難いと思う。まあ、人質のことは言わないでおく。


「今後のことを考えて、試験的にこちらでの生活をしてもらい反応を見たい。ギルドを作れば過疎地の異界アンダーワールドと鍛冶関係は向こうの人に任せたいからね」


「なるほど。わかりました。探してみましょう」


 打ち合わせはこのくらいだろう。今日のところはこれで帰ろう。


 翌日、友人に連絡を入れる。いつもどおり大学にいるそうだ。もしかして、大学に住んでいるのか?


「また、武器防具が必要か?」


 はにわくんの防具がボロボロなので欲しいところなのだが、向こうの世界で注文しようと思っている。


「いや、今回はその件じゃない。人材が欲しい」


「人材? 秘密基地で作るのか?」


 間違っているけど、あながち間違いでもないかも?


「正義のヒーローのお手伝いをしてくれる人を探している」


「ほう。お手伝いねぇ。準戦闘員か?」


 戦闘員も欲しいが、こればかりは才能がないと厳しいだろうからなぁ。


「情報セキュリティだ。内外問わず狙われている」


「内外?」


「各国のエージェントとだ」


「「「「!?」」」」


 驚いているな。だが、俺が冗談を言っているとは思っていないようだ。正直、こいつらの頭の中ってどうなっているんだ? 本来なら精神科を紹介すべきなのかもしれない。


「各国は言うに及ばず。日本政府からも司法取引された凄腕の元ブラックハットハッカーが送り込まれてくる。名目は各国のハッカー対策として。だが、本命はうちの内部情報が狙いだ。断れない以上、こちらで対処するしかない」


「そのための人材か」


「住み込みになるが給料は払うし、ちゃんと仕事をしてくれるなら空いてる時間は自由にしてもらっていい」


「引き篭もりには最高の職場だな」


 ただの引き篭もりでは困る。それだけの能力が必要だ。


「いるぞ。最高のニートが」


 だから、ニートはいらんから普通の才能のある人を紹介してくれ!


「落ち着け。そいつは普段はアニメを見たり、ゲームをしたり、コミケ用の腐女向けの漫画を描いているが、一度、某大国のセントラル・データ・コンピュータに入り込んだ強者だ」


 まじ? 遊びでやったらしいが入れてしまったらしい。すぐに逆ハッキングされそうになったが、いろいろ経由して擬装していたこともあり探知される前にPC自体をぶっ壊して難を逃れたみたいだ。


 それ以来、怖くなってハッキングはしていないらしい。


「腕には問題ないんだな? すぐに雇えるのか?」


「問題ない。すぐにでも送ってやる。雇用条件は本人と話してくれ」


「身元は大丈夫なんだろうな?」


「完璧だ。俺の姉貴だ」


 まじ?


 ってか、お前の姉かよ!


 確かに身元は完璧だが、ある意味不安だよ!







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