243.次なる商品……

 さすがに政府の紐付きはまずいでしょう。


「全然、問題ありですね。そのグループは政府の言いなりってことじゃないですか。対外的には安全でも政府には情報が突っつ抜けってことですよね?」


「ではどうするね。政府への情報漏洩はある程度看過するという話だったはずだが?」


「ある程度とすべてでは違いすぎる。わかりました。そのグループを見張るハッカーをこちらで雇います。屋上のペントハウスに部屋を追加してください。まだ、間に合いますよね?」


 そんなハッカーを紹介してくれる奴に心当たりがある。いつも世話になってる奴らだ。あいつらなら世界平和云々とか言えば喜んで紹介してくれるだろう。


「君の住む部屋は大方できているが、護衛関係の部屋はこれからなので、設計変更をかければ問題ない。だが、ビル内では駄目なのかね?」


「こちらで雇うハッカーは会社内には入れません。プライベート部分で仕事をしてもらいます。もちろんこのことはそのグループにも政府にも、ほか社員にも秘密。このメンバーだけの極秘事項にします」


「資金はどうする。会社名義にすればすぐにばれるぞ?」


「当面は俺のポケットマネーでやりますが、マーブル商会が政府から認証されればそちらから資金を出すつもりです」


 そのためにも早いところアディールさんや、これから来る異世界人の戸籍またはパスポートをどうにかしてしてほしいところだ。今現在、マーブル商会の銀行口座が開けない状態だ。


「信用できるのかね?」


「そちらのグループより何倍も信用できますよ。なにせ、名目は世界平和のためですから」


「「「世界平和?」」」


 あー、気にしなくていいです。


 話し合うことはこんなところだろう。最後に自衛隊に卸した鎧三種類を二十組色違いで注文してきたことを伝える。


「月彩 Tr.Coで売るつもりかね?」


「武器についてはまだ検討中と言っていましたが、防具はうちで扱っていいと言質を頂いています。色も四種類用意しますし、希望すればパーソナルマークも入れようと思います。国内の探究者シーカー向けです。それこそ、HPで宣伝しましょう」


「オークションには掛けないと?」


「防具は命を守るものですから、適正価格で売りたいです」


「転売対策はどうするね」


 そこなんだよね。頭が痛いのは。


「高額商品で数量限定なのでシリアルナンバーを付けて本人と紐づけ。メンテナンスもうちがやるということでどうでしょう? 数が出回るようになっても、これならおかしくないと思います」


「悪くないと思う。ついでにメンバーズカードも作っちゃおうよ!」


 それはナイスアイデアだ。沙羅さん。


 これからうちで扱う探究者シーカー関係商品は多岐にわたる。メンバーズカードはいい考えだ。うちの商品を買う人は最初にメンバーズカードを作り、それで商品管理できるようにすれば、転売対策になるな。


 それでもやられたら、その人は出禁だ。特対にそんな探究者シーカーに警告を出してもらってもいいな。


「了解した。その話で進めよう」


 女性陣のほうも騒ぎが収まり、プッカを交えてお菓子を食べながらのお茶会に移っている。少しだけ参加した後、今後の転移場所を確認して今ある品をプッカに収納してもらい終了。


 今後は定期的にプッカがここに来て品を持っていくことになる。


「じゃあ、また来ます!」


 女性陣の名残惜しいという哀愁を無視してプッカは元気に帰っていった。俺たちも天水家に戻った。


「疲れたにゃ~」


「マーブルはなにもしてないよ?」


 もっと言ってやれ。沙羅。


「マーブルは会頭にゃ。そこにいるだけでお仕事なのにゃ!」


「「「……」」」


 そんなマーブルは置いといて、次の議題を提示しよう。


 お題は、向こうで売る品を増やそうだ! ドンドン パフパフ!


 夕日化成がうちと一緒に向こうにインナーを売りたいと打診してきている。インナーといっても鎧の下に着る、防刃インナーのことなんだけどね。


 でも、俺が欲しいのはそんなインナーじゃない! 下着が欲しいんだ! なんか変質者っぽくなったけど違うからな。


「下着ですか。たしかにこちらで着ている下着や肌着は着心地がいいですね」



 アディールさんも納得の品質。俺はトランクス派だがアディールさんはブリーフ派のようだ。


 女性下着についても沙羅に市場調査してもらっている。もちろん女性用の下着はあるが、デザインはこちらの欧州中近世の時代のものそのものだ。


 ブラジャー胸を覆うだけ、下はドロワーズいわゆるかぼちゃパンツだな。ズロースなんても呼ばれている。


 もちろんストッキングなんてものはない。あれはナイロンが発明されたから作られたものなので、石油製品の発達していない向こうにはあるわけがない。目の粗いタイツはあるようだけど。


「一般庶民には普及しないのではないでしょうか?」


「アディールさん! それは違うと思う! 身分階級に関わらず女性は美を追求するものだよ!」


 おぉー、珍しく沙羅が強気だ。


「庶民にすぐに広がるとは思っていません。ですが、貴族ならどうです? 絶対に喰いつくと思うのですが?」


「貴族ですか。誰か有力な貴族にお知り合いでも?」


「有力な貴族? 何言ってるんですか、貴族のトップがマーブル商会の後ろ盾をしてくれているじゃないですか!」


「王様を使うのかにゃ!?」


 王様というより王妃様になるのかな。


「人というものは、ほかの人が持っていない良いものを手に入れると、必ずそれを自慢したくなる生き物なのだよ。マーブルくん」


「さ、さすが俗物代表のあきっちにゃ。説得力が半端ないにゃ……」


 誰が俗物代表だよ!



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