240.パーソナルマーク
土蜘蛛と鵺はすぐに解体するそうでどこかに運ばれていった。
沙羅の体のサイズも測られ(女性が測りました)後は出来上がりを待つだけ。もちろんすぐには出来ないけど。
さて、ここからは別件の話になる。場所を移して会議室に移動。ギルド長だけでなく副ギルド長や主任クラスも同席。書記としてギルド長の秘書さんも同席。秘書、いたんだね。普通の普人族の女性だ。
「それで話ってのはなんだ?」
「宝石と鉱石の話にゃ」
外務省分室チームから預かった、鉱石のサンプルを出して渡す。
「こちらの鉱石を見たことはありますか?」
ここからはマーブルに代わり俺が話す。
ギルド長たちがサンプルを見て触って嗅いで舐めて議論が始まる。って舐めるんかい! 毒だったらどうすんねん!
「大丈夫にゃ。ドワーフ族は鉱石毒に耐性があるにゃ。あのくらいにゃら毒でも舌が痺れるくらいにゃ」
スゲーなドワーフ。でも、鉱石毒だけの限定か。
「半分は知っている。四分の一は見たことがあるが俺たちは使ったことがねぇ。最後の四分の一はまったく見たことがねぇな」
「半分の知っている鉱石は頼めば売ってもらえるものでしょうか?」
ギルド長がうーんと考え込む。
「この中の五分の一の種類なら売るくらいは量があるが、ほかは無理だな。正直驚いたがドワーフ族でも秘伝の類の鉱石だ。どこで知った? ドワーフ族に裏切り者がいるとは思えねぇ」
「我々と取引のある別の国からの依頼です。どの国かというのは守秘義務があるのでいえません。ほかの鉱石はどうでしょうか?」
「見たことがある鉱石は売るのは構わねぇ。が、欲しがるってことは使い道があるってことだろう? 見たことがねぇ鉱石も探してやる代わりに用途を教えろ。それが売る条件だ」
俺に答える権限はない。ないというより、俺もこの鉱石が何なのか知らない。危険な物ではないとだけ聞いている。
「わかりました。先方に話しをしてみます。あまり期待はしないでください。向こうにとっても秘匿すべき情報でしょうから」
「おう。そこまで期待はしてねぇよ。まあ、誠意ってやつだな」
「そう、伝えておきます。次はこちらをご覧ください」
沙羅が資料をみなさんに渡す。
資料の最初のほうは鎧のデザイン画だ。
「なんだこりゃ!?」
マンガやアニメなどからパックってきた絵を載せている。
「みなさんの作られる鎧などの性能は申し分ないのですが、素材が違うだけで一様に形が同じであまりも個性が感じられません。自分の装備を誇るためや周りと一線を画したいと思っている人も多いはずです」
「それがこれか?」
「そうです。オーダーメイドはもちろん、既製品でも何種類かの形や色を分ければそれだけ自由に選ぶことができます。赤色が好きとか角ばった鎧が好きとか」
「森の中とかで目立つのは不味いんじゃねぇのか?」
言いたいことはわかる。わかるんだが、
「五ページ目をご覧ください。たしかに斥候などが目立つのは不味いですが、今の色が最適かと言われればノーです! そのページにあるように実際に森の中などでは今の鎧の色でも目立ちます」
森の中で茶色系一色または黒一色は逆に浮いて目立つ。
「次ページを見てください。本当に森に紛れ偽装するなら、そこに描かれているような迷彩柄が有効なのです。もちろん、鎧だけでなく着ている服も合わせる必要がありますが」
なるほど~と感心して絵を見つめるみなさん。
「それにです。自己主張は自己責任。自分の力量をわきまえず派手にするのは単なるお馬鹿です。でも、自己主張したいと言う人のために考えました。次ページをご覧ください」
「今度はなんだ?」
「全体の色や形を変えるのではなく、一か所にほかの人とは違うとわかるように主張するための方法を考えました。それはパーソナルマークです!」
「ぱーそなるまーく?」
「いろいろな形や文字などを組み合わせて一つの印にします。それは個人のまたはパーティーの唯一無二の
ギルド長はあまり反応を見せないが、ほかの人たちはおぉーといい感じに興味を示している。
「私の故郷では家ごとにその
ちなみに天水家の家紋は三つ割り剣三つ星、それとは別に沙羅の趣味で竹に雀の家紋も入れてもらうことにしている。
竹に雀といっても伊達家じゃないよ、上杉の竹に雀ね。有名なのは伊達家の竹に雀だけど、これは上杉家から伊達家に使っていいよって送られた家紋なんだよね。
ちなみに十六夜家は三引両紋だけど、月読様の子孫としては藤原家の藤か月に星辺りを使うべきなのだろうか?
月読様は気にしなさそうだけど。
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