239.新しい装備

「いいですよ。僕、マーキングあんまり使っていませんので。姉さんが来るのを待つより、僕が取りに行ったほうが滞らないと思いますから」


 できた弟だ……。


 そんなできた弟のプッカにはマグロ一匹をプレゼントしよう! 月読様の所からお土産にもらってきていたものだ。


「しゅ、しゅごいでしゅ!」


 沙羅に抱きつかれなでなでされているプッカのお口からよだれの滝が……。


「マーブルも食べるにゃ!」


 マーブルは食べんでいい! 天水家でいつも食べているのだから、みんなに譲りなさい。


「あきっちはケチにゃ……」


 なんとでも言うがいい。




「出来てるぜ」


 職人ギルド着いたらギルド長がいて、俺を見ての一言だ。


 小霊王の革鎧 品質 最良 耐久3000/3000 防御+380 斬撃耐性+170 打撃耐性+200 理力特性+150 火炎耐性+80 水氷耐性+120 歓喜の雄叫び(敵に勝利すると怪我、体力、理力が小回復)


 叛意の大鎧 品質 最良 耐久4000/4000 防御+450 斬撃耐性+150 打撃耐性+220 刺突耐性+120 理力特性+100 土泥耐性+140 風嵐耐性+70 毒耐性+90 夢幻の猛牙(戦う時間が長ければ長いほど見えない牙が相手を襲う)


「酒を浴びるように飲んでノリに乗った結果、会心の出来になった」


「さ、さすがギルド長にゃ!」


「「……」」


 沙羅も俺も目が点状態。ドワーフに酒を飲ませると桁が外れるらしい。今度また頼む時は酒も一緒に渡そう。


 ギルド長曰く、竜の大回廊の怪異モンスターだからこの出来になったと言っている。同じデミパズズでも魔獣の樹海と竜の大回廊のでは階位レベルが違いすぎて比較にならないそうだ。


 そういえば、前に初めてマーブルと転移したときグシオンビートルっていうカブトガニ怪獣を持てきたことがあったけど、あれもこんな性能になったのかな?


「そいつを手に入れた奴は運がいい。本来ならこれほどの性能にはならんだろうが、この階位レベルの素材なら誰が作ってもそこそこの鎧にはなるだろうぜ」


 何気に俺の腕があってこそって言ってるけど、実際そうなのだろう。


 そして俺の隣に目をキラキラさせ私も欲しい~を笑顔で表現する人がいる。


 しかしだ、沙羅の装備しているアラクネのローブはこれらの鎧に比べれば性能は落ちるが向こうでは絶対に手に入らない性能の装備。


「欲しいの?」


「大鎧、格好いいよね!」


「残念だけど、これは俺とジミーたちと幽斎師匠激闘の証だからサラの頼みでもあげられない」


「じゃあ、狩りに行こう!」


「無理……」


 幽斎師匠クラスを何人も連れて行かないと俺たちではぺっちっと潰されちゃう。現実的に無理なのだ。


「マーブル。竜の大回廊の五十階に行けるレイダーを雇うとしたらいくらかかる?」


「そうだにゃ~。この国にいるトップランクのレイダーパーティーが、三パーティーが依頼を受けてくれることが前提にゃ。マーブルがマップを提供するとして一か月と考えると……最低七千万リルは必要かにゃ。もちろん全滅もありえるにゃよ?」


 ゴリラ怪獣は金貨五十枚で五百万リル。カブトガニ怪獣は金貨四十枚で四百万リル。一つ間違えば全滅もあり……割に合わなさすぎる。


「諦めるよ……」


 しょぼ~んとなった沙羅も可愛いな。


 仕方がない、奥の手をだそう。


「ギルド長、見ていただきたい素材があるのですが」


「また面倒くせい依頼か?」


「もちろん、旨いお酒を上納させていただきます」


「やります。やらせてください! お客様は神様です!」


 変わり身早ぇーよ!


 建物の裏に行き俺の自由空間から、沙羅の鎧の素材となる怪異モンスターの亡骸を出す。


「見たことがにゃい怪異モンスターだにゃ。でも、にゃんか凄そうにゃ」


「確かにスゲーな。内包された力をビリビリと感じやがる。相当な階位レベル怪異モンスターだぜ」


 封印されていたとはいえ、平安時代に国を揺るがせた妖怪だ。同一の妖怪かは知らないけど倒しきれず封印されたのだか大妖怪には違いない。


「アキくん、これって?」


「あの時の怪異モンスターで土蜘蛛と鵺だよ」


「倒してたの!?」


「土蜘蛛は鵺が倒したのを収納した。鵺は本当は戦うつもりはなかったのだけど、鵺に見つかってね、やむを得なく戦った。まあ、鵺は満身創痍だったから、修行の成果を試すにはちょうどいいかもって思ったからだけど」


 結局、つまらない決着になったけどね。


「全部使っていいのか?」


「使ってください」


「鎧一つにローブ一つ、武器もいくつか作れそうだ。残りの素材を売るとして差し引き金貨二百五十枚ってところか。安くした分、酒は多めにしてくれよ」


「まあ、妥当だにゃ」


 マーブルがそう言うなら間違いないのだろう。


 安くはないが安いのだろうから、それでお願いした。








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