237.封印地

「では、怪異モンスター同士が戦って相打ちになったと?」


「はい」


 如月一等特尉を筆頭にここにいる全員に異界アンダーワールドに来てからのをする。土蜘蛛と鵺のことも容姿や特徴だけを伝えて終わり。


「土蜘蛛か?」


「まさか、鵺じゃないわよね」


 有名どころの大妖怪だけあって、すぐに解答ににたどり着く。


「丘の上にストーンサークルがあるだと? まじか? 十六夜」


 ストーンサークルではなく、ようなものです。花音さん。


 疑っているので、全員で丘の上に向かって確認することになった。


「こ、こいつは……まじヤバもんぞ」


 ライフルーツのリーダー庄子さんの顔が真っ青。


「どうヤバいのか説明してほしい」


 如月一等特尉たち自衛隊組は探究者シーカーとしては優秀でも、所詮は自衛隊員。こういった古の術などにはまったく門外漢。まあ、俺も人のことは言えないけど。代わって沙羅は意外とこういうのに強い。


「おそらくここは封印地。古の術者たちで倒しきれなかった怪異モンスターをこの地に封印したのだと思います」


 小笠原諸島は僻地も僻地。昔なら尚のことこの地に来るのは困難だったはず。誰にも見咎められることもなく、たとえ封印が解けても人的被害皆無の場所だと考えたんだろうな。


「強固な封印のうえ、強力な結界に守られていたと考えられますが、何者かによって結界が壊され、二つの封印が解かれたようです」


「何者かによって?」


「はい。結界が壊され、封印が解かれたのはこの様子を見るとここ最近のことです。正直、このままだと残りの五つの封印が解けるのも時間の問題かと……」


 それはヤバい。あのクラスの怪異モンスターが無傷で五体も現れたら、このメンバーではお陀仏だ。幽斎師匠クラスが十人は必要になると思う。


 如月一等特尉は確かに優秀だ。炎の魔剣の力も凄い。しかし、真の実力では幽斎師匠に遠く及ばない。


 現探究者シーカートップの飯島さんがどれほど強いかわからないけど、幽斎師匠クラスを十人というのは現実的じゃない。


「作為的ということか……。一体なんのために?」


 愉快犯的な? わざわざこんな所に来てまでやることじゃない。


「そもそもがここに異界アンダーワールドがあることを知っていて、危険な封印地であることを知っている奴ってことだな。意外と限定できるんじゃねか?」


 そうなんだよね。錬さんの言うとおり、ここにこんなものがあるってことを知っていたってことだ。それにこの封印って陰陽師関係だよね? さらに限定できるんじゃないだろうか?


「ここで考えていても意味がない。一旦、仮設営地に戻り本部に報告。その後、仮設営地をゲート近くに変更する」


 決まれば早い。外に出てサンダーゲート浅草のメンバーに引き続きこの場所を任せ、仮設営地に戻る。


 如月一等特尉が本部に連絡を入れている間に、全員で設営地を解体。土を入れた土嚢袋のみ小太郎の自由空間に収納して、残りはみんなで手分けして持つ。


 本部との連絡が終わり千本鳥居に移動して、ゲートのある鳥居を囲むように土嚢を積む。その横に仮設営地として設営を開始。終わったのは陽が暮れた後だった。


 夕飯は特別に自衛隊から戦闘糧食I型が支給された。ひと缶に二合のご飯が入っているので、みんなでシェアして食べた。


 俺は人気の鶏飯、おかずはウインナーとまぐろの味付け。小太郎は赤飯と野菜のスープみたいなのをもらって食べていた。沙羅は白米にハンバーグだった。自衛隊の缶飯なんでもありだな。


 夕食後に明日の行動予定が説明される。自衛隊班を残し掃討作戦を行う。ゲートを抑えたことで、これ以上外に怪異モンスターが増えることがないと判断され、この島に残っている怪異モンスターを掃討することになった。


 異界アンダーワールド内のことは本部から本土に連絡され探究者シーカーギルド上層部と対応策が練られるみたいだ。対応待ちってことだな。時間的に間に合うのか?


 それと俺と沙羅は早ければ明日でお役御免となる。本音は異界アンダーワールド内のことは俺たちレベルがいても役に立たないと判断されたっぽい。まあ、大学も始まるから俺も沙羅も早く帰りたいので承諾した。


「しかし、お前たちだいぶ腕を上げたな。いい師匠にめぐまれたのか?」


 今日は花音さんとではなく、錬さんと組んでの掃討作戦に参加している。だけど、はにわくんたちと沙羅の独壇場となっている。錬さんは見てるだけ。俺は毎度の如く無線機担いでの連絡係だ。


「はい! 可愛い師匠に恵まれました!」


「可愛い師匠ってなんだ?」


 それは、うさぎ師匠のことですか? 月読様のことじゃないよね? 沙羅さん。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る