236.固有技無絶
とはいえ、一度仕切り直し。こちらには準備が必要だ
宵月と月城はおよそ三分しか使えない。さっき使った分はもう切れている。
なので、俺の全力を出せる時間は三分のみと限定される。その準備の時間を稼ぐため、はにわくんたちを再召喚し竜牙兵とともに時間稼ぎをお願いし、その間に宵月と月城を使用。
はにわくんがサムズアップし笑顔を残し消えていく様を横目に鵺に迫る。
風師匠から頂いた打己棒とは違い九字村正には刃が付いている。俺を狙い振るってきた鵺の左腕を、九字村正は蛇の如く這い上がりながら斬り裂いていく。
鵺が驚き左腕を引いた瞬間、鵺の懐に潜り込みワンインチパンチ! 手加減なし、全力の六陽掌を叩き込む。まあ、実際はパンチじゃなくて掌打だけど。
苦痛にゆがむ表情の鵺が二歩、三歩と後退り大量の吐血。
竜牙兵がその隙を見逃さずわき腹に渾身の突きをを放ち、深々と剣が突き刺さる。
叫び声というより悲鳴に近い声を上げる鵺。剣が深く刺さり抜けなくなったようで竜牙兵が剣を手放した。
その間も小太郎が攻撃を続けているおかげで、けん制になってくれている。
武器を失った竜牙兵に以前オーガから奪ったオーガメイスを取り出し投げると、片手で受け取りその勢いのまま振り回し右足の膝裏に一撃。
鵺が膝カックンになった!?
これは大チャンス!
膝カックンしたことでちょうど手頃なところに首がある。九字村正を大量の氣で纏った後に固有技無絶発動。理力がすごい勢いで九字村正に吸い取られる。
九字村正が怪しい紫の光に包まれたと思うと、体が勝手に動き出す。あれ~。
鵺の胸元に高速の三連突きを放った後、アクロバティックに宙返りで鵺の背後に回り一閃。マンガで擬音が出るかの如く、鵺の首がギィギィギィィとこちらを振り向こうとして首がぽとりと落ちた。
手応えを全く感じさせない斬れ味、そして常軌を逸した動き。炎の魔剣の灰神楽のような派手さはない。だが、タイマン勝負でなら、灰神楽を上回る攻撃力。灰神楽では鵺に止めは刺せなかったと思う。
しかしだ、凄いとは思うけど気に入らない。
あれは俺の動きじゃない。何者かに勝手に体を乗っ取られ鵺を倒してもらったにすぎない。あれのどこにも俺という存在はなかった。
なにが無絶だ。なんてつまらない技だ。この技は二度と使うことはないだろう。せっかく鵺を倒したのに興ざめだ。
レベルが二つ上がり魂石が溜まって自由空間に鵺の亡骸をしまうが、なんというか焦燥感が漂う。
丘の上の巨石をもう一つ叩き割ろうかという、バトルジャンキー的思考が横切るが、今以上に大変なことになるのが目に見えているので思いとどまる。
はぁ~って感じだ。不完全燃焼という言葉がぴったりだ。
竜牙兵を竜牙に戻し、この
まあいい。疲れたから少し休憩しよう。それほど耐久値は減っていないが、左目
終わったところで、自由空間からコンロを出しクッカーでお湯を沸かし、紅茶パックを入れ香りを楽しむ。小太郎も頑張ったのでお水とカリカリを出してあげた。
「おうおう、ティータイムとは余裕があるな。十六夜」
「アキくん!」
紅茶のマグカップを口に付けたときに、目の前の空間がゆがみ錬さんと沙羅が現れた。
「紅茶ですけど飲みます?」
「頂こう」
「私はダージリンがいいな」
残念ながらサー・トーマス・リプトンさんから名前をもらった某有名会社のティーパックしかありません。
二人の紅茶を用意する間に、俺が消えてからのことを聞かせてくれた。
俺がいなくなったことはすぐに気づいたみたいだ。どこを探しても見つからない。すぐに
悪鬼はすぐに倒されたが、どうやって
何度か再現を検証し繰り返した後、全員でもう一度話し合い。そこで沙羅が小太郎のことに言及する。
しかし、小太郎は特殊。普通はこちらでマギは呼び出せない。試しに沙羅が最後の鳥居の前で水龍を召喚したら呼び出せた。
あらまあ、びっくりってやつだ。
水龍が呼び出されると同時に最後の鳥居に揺らぎが生じる。ゲートが繋がったことに気づいたライフルーツの方がゲートを固定。
固定ってそんなことできるんだ。凄いね。
って言ったら、そういう術を持っている方だから、今回呼ばれたそうだ。
へぇ~、そうなんだ。凄い人なんだね。
とりあえず、先遣隊として沙羅と錬さんが来たらしい。サンダーゲート浅草のチームを向こうに残し、順番にほかの人たちも来ることになっている。
ということで、向こうの説明は終わり。
こちらの説明はこちらに皆さんが来てから説明することにした。何度も説明するのは面倒だからな。
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