232.なんとか到着

 あんなに苦労して身に付けた私って……と嘆く沙羅。


 お、お前らなかなかやるじゃないか!? と弟分が成長著しく動揺を見せる小太郎。


 どうでもいいけど、先を急ぎますよ!


 目の前に指令所の土嚢で出来た防壁が見え、怪異モンスターと小競合いしている自衛隊員たちがいる。


「はにゃ~!」


 勝手に突撃して行く我が精鋭たち……。


 いや、まあ、いいんだけどね。でもさぁ。なんか違うと思うんだよねぇ。


「生きていたか! 十六夜」


「まあ、なんとか」


「花音と横田はどうした?」


「俺たちの屍を越えて行けって……」


「そうか……惜しい人物を亡くしたな」


「死んでねぇーし! 普通に生きてっから!」


 知ってました。指令所に近づいてくると、少し後方に知っている氣を感じていた。


 向こうでは沙羅が花音さんに肩をバシバシ叩かれている姿が見える。どうやら、人を選んでやっているわけではないようだな。憐れ、沙羅。


 俺と花音さんは錬さんに連れられ指令所内部へ。沙羅と横田さんは疲れを癒すためベースキャンプへ移動となった。小太郎は沙羅と一緒だ。


「君と天水嬢が行方不明と聞いて正直肝が冷えたよ。無事でなによりだ」


 富岡二等特佐だ。お披露目会の時に天水祖父から紹介された人物の一人だ。今回の作戦のトップらしい。


 この指令所の会議室に集まっているのは、富岡二等特佐ほか幹部二名と実働班トップの炎の魔剣持ち如月一等特尉。


 ライフルーツのリーダー庄子さん、サンダーゲート浅草のリーダー神田さん、うちからは錬さんと昨日の報告のため花音さんと俺がいる。


「では、何があったのかの、説明を頼む」


 花音さんが出発して目的地から目的地に向かうまでの出来事を説明する。


「鬼火に亡者ですか。厄介ですね」


「でもよう。それってビンゴじゃね?」


「ああ、間違いないな」


 庄子さん、神田さん、錬さんの間で何か暗黙の了解が行われたようだ。


 その後、花音さんと別れてからの説明をして俺の役目は終了。正直、いらなかったんじゃね? って感じ。


「状況からして目的地近辺にゲートがあると考えるべきかね?」


「昨日現在、ほかの目的地で異常は見られませんでした。おそらく間違いなく」


 富岡二等特佐たちの間で話し合いが行われている。昨日の調査で異常があったのは俺たちだけ。怪異モンスターとの戦闘は多々あれど、鬼火や亡者が出てはいないそうだ。


 それから、さっき聞いた話だけど、亡者は怪異モンスターじゃないらしい。特殊な怪異モンスター(ここでは鬼火)が放つ負の理力により、未練を残して戦死者の霊が具現化したものらしい。なので、亡者に対して効果があるのは除霊らしく、御神塩、清め塩、散米、あずきなどが効果的なんだとか。さすがにすぐには用意ができない。


 そうこうしていると、今後の方針が決まったみたいだ。決戦は明日。ライフルーツ、サンダーゲート浅草、光明真会、自衛隊から一斑を出し目的地周辺を徹底調査することが決まった。


「花音と十六夜は戻って休め。明日は強行軍になるからな」


 錬さんたちは指令所の防衛を夕方まで続けるそうだ。


 ベースキャンプに移動し昼食を食べながら、沙羅に先ほどの話を説明。


「明日で決着がつくのかな?」


「つくならつけてほしい。大学の休みももうすぐ終わりだし、マーブルがちゃんとやっているかが不安で仕方がない」


「そうだねぇ。マーブルは……たぶん大丈夫じゃない?」


 その間はなに? それと、沙羅が何を根拠にそう言えるのかが不明。ぱっちゃんやプッカ、エリンのやつれた顔が頭に浮かぶ。頑張れ……。


 翌朝、早朝から重装備で指令所に全員集合。昨日のメンバーに自衛隊からも後方支援としてもう一班参加することになった。基本は通信と荷物持ちを請け負ってくれる。


 俺たちは完全な戦闘要員というわけだ。


 全体のリーダーは如月一等特尉。


「最短距離で目的地に向かう。先頭はライフルーツとサンダーゲート浅草、その後に我々のチームが付く。その後ろに後方支援班、最後尾は光明真会に任せる」


 サーチアンドデストロイでいくようだ。


「目的地に着いたら後方支援班は防衛ラインを構築し設営。守備隊を残し、それ以外はすべて調査に入る。以上」


 出発といっても結構な荷物が積まれている。これを後方支援班だけで運ぶのは大変。なのでお手伝いを申し出る。


 小太郎の出番です。まあ、俺も自由空間を持っているけど、バレると面倒だし、沙羅の持つ収納袋がバレるのはもっとまずい。


「にゃ~」


 小太郎が積まれている荷物の半分を収納。やりすぎるとまずいのでこのくらいに留める。光明真会以外のメンバーが目が点になる。光明真会では小太郎のことは、誰もが知る事実となっているので驚きはない。


「錬のところの新人は規格外だな……」


「ただの子猫じゃなかったのかよ……」


「ただの子猫を連れてくるわけねぇだろ!」


「「たしかに」」


 まあ、誉め言葉と受け取っておこう。









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