231.天才か⁉
生きとし生けるものには氣があると月読様は言っていた。ある意味、はにわくんも埴輪とはいえ生きているのでは? そもそも、俺の眷属なのだからはにわくんも氣を持っていてもおかしくはない……とか?
いつの間にか雨がやんでいる。外に出ると濃霧へと変わっていた。やはり数メートルぐらいしか視界がないのは変わらない。
はにわくんたちはテントを守るように前と後ろに立っている。そのはにわくんたちを呼んで手を繋いで円になる。
「これから俺の氣を流すから、何か感じるか教えてほしい」
「はにゃ~」
「…(コク)…」
両手からはにわくんたちに氣を送る。すぐに氣が繋がりはにわくんたちの体全体も覆っていく。
「はにゃ~!」
「…(コクコク)…」
どうやら、何かを感じているようだ。
今度は手を離して、
「さっきの感じたものを自分の中に感じ取れるかやってみて」
いつものおとぼけ顔が、う~んと唸っているようなへん顔になっている。
「はにゃ~!」
「…(コク)…」
って、わかったんかい!? もしかして、はにわくんたちは凄い逸材なのか!?
「じゃ、じゃあ今度はその感じたものを動かして手に集めてみて」
また、へん顔になって唸っている。が、俺にはわかる。はにわくんたちの手に微弱ながらも氣が集まっていることに。
こ、こいつら天才か!?
はにわくんミニは持っている矛にも氣を微弱ながら這わせられている。反面、はにわくんは六角棒に氣を這わせるのに苦労しているようだ。
はにわくんミニの矛ははにわくんの六角棒と違って、元から持っていた体の一部のようなもの。その分、氣を這わせやすいのかも。でもこれで、はにわくんミニの突撃攻撃が亡者に対して有効になった。これは大きい。
苦労しているはにわくんに一言助言。
「はにわくん。まずは自分の剣でやってみたらいいんじゃないかな」
「はにゃ~~はにゃ!?」
本来の剣に持ち替えて再挑戦。できたみたいだね。まじ、天才か!
簡単にできすぎてはにわくん自体が驚いている。感覚を掴んだはにわくんは六角棒で挑戦し成功。
「はにゃ~!」
ドヤ顔だな。だがこれで戦力アップはなった。それに切り札的竜牙兵もまだ未使用。実際に竜牙兵が霊系の
はにわくんたちが気の修練をしている横で、俺は気配察知の訓練を再開。そのうち、白々と夜が明けてきた。テントの中でごそごそと音がしたので沙羅も起きたのかもしれない。
お湯を沸かしておこう。朝食は五目御飯のアルファ米とインスタント味噌汁だ。
アルファ米を食べるのは実は初めてなのでちょっと楽しみ。本当に炊き立てのご飯のようになるのだろうか?
「おはよう」
「にゃ~」
「おはよう。朝食の準備ははできているよ」
アルファ米の袋に直接適量の熱湯を入れる。マグカップににもインスタント味噌汁を入れお湯を注ぐ。十五分ほど待てば出来上がり。小太郎はカリカリとお水ね。
「思った以上に美味しいね」
確かに美味しい。炊き立てとまではいかなくとも、非常食と考えれば満足できる味だ.。昨日食べたインスタントチャーハンとは大違い。フリーズドライとの違いなのだろうか。それに非常食だけあって五年という長期保存ができる、驚愕だ。
便利なのだが俺の場合、保管したまま忘れて六年後くらいに発掘されるオチが見える…….
朝食を食べ終え沙羅と今後の相談。目的地いに向かうか目的地いを無視して指令所に戻るかだ。
「私たちのいる場所ってわかる? アキくん」
「昨日、目的地ろから目的地い方面に走った。それほどの距離を走ったわけでもないし。大きく道も反れていないと思う。探せば目印を見つけられるはず」
「無線機は壊れているんだよね?」
「うんともすんともいわないから、使い物にならないね」
「そうなると、やっぱり指令所に戻るべきだと思う。なにより情報がないのと、結局無線機がないと調査を再開できないよ」
行動指針が決まったので装備を整え、テントを自由空間にしまい出発。霧は陽の光を浴びて薄れている。完全に霧が晴れるのも時間の問題だろう。
アナログ時計は装備済みなので太陽の位置から南を確認。腕時計を水平にして太陽に時針を向け文字盤の十二時との真ん中が南方向になる。南がわかったことでおおよその自分たちの位置を割り出し移動開始。
三十分ほどで目印を見つけることができた。これで自分たちの位置が確定。こうなると、わざわざ目的地い経由して指令所に向かうより、目的地いを無視して最短コースを取ったほうが時間のロスが少ないと判断し指令所に直接向かう。
「はにわくんたち強くなっていない?」
「にゃ~?」
「なっています。昨日の夜の間に氣を会得しました」
「うそ……」
「にゃ!?」
「本当です」
「はにゃ~!」
「…(コクコク)…」
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