228.捜索開始

 昨日、説明があったとおり島の調査はギルド側で行う。この場所が仮の司令部となり六つのチームに分かれ、司令部及び各チームと小型無線機で連絡を取り合う。


 俺のチームは花音さんがリーダーで横田さんと沙羅になった。


 異界アンダーワールドへの入口がどこにあるかまったくわかっていないので、少しずつ捜査範囲を広げながら探すしかない。


 各チームに担当ルートが描かれたマップが渡され出発。島の広さから隈なく捜索したとしても三日もあれば終わる広さだ。


 俺はマッパー兼無線担当となった。歩きながらマップを確認しながら木に目印のリボンを付けていく係。


 ちなみに、俺たちのチームのコードネームはアルファツーとなった。錬さんたちがアルファワンね。ほかのギルドはブラボーとチャーリー。


 映画か!? なんて思ったらフォネティックコードと呼ばれるものらしい。ABCDE……を表す世界共通のものなんだそうだ。てっきりジョークかと思っていた。


「十六夜は戦闘しなくていいから、あのはにわを出しとけ~」


 戦闘しなくていいと言っているが、はにわくんを出すということは結局俺が戦闘していることになるのではないだろうか?


 俺たち四人はYの字隊形になり、先頭は花音さんと横田さん、その後ろににはにわくん、俺、沙羅と続き、殿にはにわくんミニがつく。


 遊歩道を外れると、そこはさながらジャングル。気温も高いし、湿度も高いので蒸し暑い。虫が多いので長袖、長ズボン、ネット付きの帽子は必須。


 はにわくんは枝や蔦、下草を気にせず進むが、俺たちはそうはいかない。花音さんと横田さんに予備のカットラスを渡して枝払いしながら進んでいる。


 そして散発的に怪異モンスターと遭遇。出てくるのは天邪鬼や山姥、たまに鬼婆や鬼女。餓鬼と邪鬼は狩りつくしたのだろうか? ほかのチームのほうは遭遇そしているのだろうか?


「こちらアルファツー。目的地に着いた。目的物の発見なし。休憩後、目的地に向かう。オクレ」


「アルファツー。こちらCP指令所了解した。引き続き捜索を続けられたし。オクレ」


 なんかそれっぽくて格好良くない? ~オクレとかってさ。自衛隊員さんたちが使っていたので真似してみた。通信最後に言う、以上とかオーバーの意味がある自衛隊用語だな。


「しかし、暑いな」


 横田さん、見た目がマッチョなだけにそれだけで見ているこちらも暑苦しいい。


 みんなに水のペットボトルを渡す。


「「サンキュー」」


「ありがとう。アキくん」


 荷物のほとんどは俺が預かっている。各自が持つのは必要最低限の荷物だけ。小太郎が収納スキル持ちと教えて俺が荷物を預かった。


「出てくる怪異モンスターは典型的な日本の怪異モンスターだ。特殊な異界アンダーワールドではなさそうだな」


「特殊攻撃がないのはいいですけど、その分地力が強いのが厄介ですね。花音さん」


 花音さんと横田さんが話しているのをカロリースティックを食べながら聞いている、俺と沙羅。小太郎は水だけ飲んでいる。


「地力が上ってどういう意味でしょうか?」


「ん? そうか、天水たちはうちの異界アンダーワールド以外はほとんど行ったことがないんだったな」


「お前らまだ行ったことがないのか。まあ、その内行く機会もあると思うが、特殊な異界アンダーワールドだと日本固有の怪異モンスター以外の怪異モンスターが出てくるんだぜ。そいつらがやっかいなんだ」


 日本固有の異界アンダーワールドは物理攻撃が主体なのだが、特殊な異界アンダーワールドに出てくる日本固有以外の怪異モンスターは物理攻撃だけでなく、特殊攻撃も満遍なく使ってくる。


 ようするに、人工迷宮のゴブリンやスケルトンのように上位種が理力攻撃をしてくるということだ。俺たち的には慣れている戦い方だな。それにしても、日本固有の怪異モンスターって脳筋ばかりなのか?


 それと俺と沙羅ってどちらかというと、日本固有以外の怪異モンスターと戦っていると思う。人工迷宮以外あまり探索していない……。


 そういえば、花音さんも横田さんも物理一辺倒な戦いっぷり。理力は苦手なのか? 氣を使っているのはわかるのだけど、理力を使っているのはまだ見ていない。


 まあ、こんなところで炎弾みたいなのを使ったら、火事になって目も当てられないからしかたがない。沙羅も使っていないしな。


「取りあえず、今日は目的地ろまで捜索したら終わりだ」


「やれやれ。じゃあ、さっさと行きますか」


 片づけをして出発。自然公園なのでポイ捨ては禁止。ゴミは持ち帰る。これ常識。


 出発してすぐに怪異モンスターと遭遇。鬼女かなと思ったらその上位種で般若というらしい。力は悪鬼と同じくらいだそうだ。


 そこからは散発だが般若と悪鬼以外出てこなくなる。


「雰囲気が変わりましたね。花音さん」


「ああ、そうだな。横田、気を抜くなよ」


「了解」


 正直、どう雰囲気は変わったのかわからない。沙羅に目で確認するが、沙羅も首を傾げる。小太郎は欠伸をしている。


「止まれ」


 少し進んだところで花音さんが俺たちが進むのを止める。


「あれは鬼火か? 花音さん」


「そのようだな。厄介なのが出てきたな」


 これ以上厄介事はいらないんですがねぇ。









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