227.聖臣無双

 全員が怪異モンスターに向かって走り出す。先頭はお馬さん、次点は予想外ではにわくんミニ、次が俺、最後がはにわくん。


 お馬さんが一足先に怪異モンスターの大群い接触。怪異モンスターを吹き飛ばしながらモーゼの十戒の如く、怪異モンスターの海が割れていく。


 はにわくんミニが右側の怪異モンスターに突っ込んで行ったので、俺は左側に向かおう。俺が怪異モンスターに接近する前に多数の怪異モンスターの上半身と下半身がお別れ。


「にゃ~!」


 小太郎か!?


 小太郎の能力を把握する暇はないが、間違いなく小太郎だろう。今度は風系の攻撃能力か。小太郎は万能型のようだな。


 なんてことを思いながら、怪異モンスターの大群に突っ込み、並列思考全開でカットラス二刀を振り回す。気分が高揚してきた。乱舞高揚スキルが発動したようだ。氣も理力も使わずに全能力が二割増し。


 全能力ってことは理力の量も二割増しになっているのか? どうせこれで今日の戦いは最後だろうし、一丁派手にいってみますか。


 宵月(攻撃力二割五分増し)、月城(防御力二割五分増し)、朧月(スピード二割五分増し)を同時に使う。これで、攻撃力、防御力、スピードが四割五分増しになっている。


 ここに更に氣をのせると七割以上能力がUPすることになる。月読様のところではにわくん相手に氣の全力を出したことはあったけど、アビリティ使用での全力は初めて。それに乱舞高揚スキルの分も上乗せされている。


 一丁派手にいってみますか。なんて言ってみたけど、ちょっとビビっている。


 全力の状態で動き始めると、自分の考えと体の動きが合わない。怪異モンスター動きがスローに見えるのに、俺の動きは早い。


 しかし、俺の動きが早すぎて俺の思考が追いついていない!?


 体の思考より先に本能で動いている感じ。頭痛が酷いうえに、自分の動きが早すぎて視点がブレ、脳が揺さぶられているような感じだ。う~、気持ち悪くなってきた……。


 一度、動きを止める。周りはスローモーション状態。音はよく聞こえない。自分だけ別の世界にいるようだ。


 怪異モンスターが襲って来ても、その進行方向上にカットラスを持っていくと怪異モンスターが勝手に突き刺さる。スローモーションの怪異モンスターの後ろに回って、首を刎ねるのも簡単。


 でも、頭痛が酷い。並列思考を使っている分二重の痛みを感じる。並列思考にも弱点があったようだ。頭痛に悩みながら怪異モンスターを倒していると急に頭痛が消えた。


 何が起きた? まあいい、これは好機だ。まずは怪異モンスターを殲滅しよう。


 二度、宵月、月城、朧月をかけ直し戦ったところで、立っている怪異モンスターがいなくなった。アビリティを三回使ったってことはおよそ十分くらいで殲滅したことになるな。はにわくんたちとハイタッチして帰還させる。


 いやぁ~、強くなったな、俺。


 ジミーたちに追いついたかな? いや、まだだろうな。でも、この全力の状態の上に、俺はもう一つの力がある。印瞳術、天之尾羽張神あめのおはばりのかみの力だ。意外といい感じかも?


「十六夜……。お前、まだ余力を残していたのかよ……」


「アキくん、凄かったよ! 凄い速さでスパスパって斬ってた!」


「今度、私と手合わせしてみないか! 十六夜」


 遠慮しておきます。花音さん。


 沙羅と花音さん以外はちょっと引き気味。やっちゃった?


 頭痛が消えた原因を調べるため残月で自分を見ると、思考強化(微)スキルがある。高速思考じゃないんだ。それに(微)なんだ。まあ、有用そうなスキルだから良しとしよう。


「十六夜残して帰るぞ」


 勘弁してください!



 港に戻って食事の用意。用意といってもギルドで用意したレトルト食品を温めるかインスタント食品にお湯を注ぐだけ。種類は豊富にあるので少しの間は飽きずにすみそう。


 俺が選択したのはお湯を注ぐだけで出来るチャーハンにレトルトのホワイトシチュー。味は……まあ、こんなものだろう。


 夕食後はお風呂。食事は用意してもらえなかったけど、自衛隊さんがお風呂は用意してくれた。大変、助かる。


 風呂に入った後は何もすることがない。スマホは繋がるけど充電はソーラー式の大容量ポータブル電源を使用しなければならないので、面倒なことから誰も使っていない。明日以降は自衛隊から小型無線機が支給されるそうなので、日中もスマホは持ち歩かない。


 女性陣は小太郎をモフモフしながら姦しい。男性陣はお酒も飲めないので寝ている。俺も少し気配察知の修行をしてから寝よう。


 翌朝、夜明け前に起床し朝食を食べ、リュックに水や食料などを詰め自衛隊の陣地に移動。


 そこでミーティングとなり、今日の予定が聞かされた。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る