226.連戦

 常時発現タイプのマギはとても珍しいがいるそうだ。だが、異界アンダーワールドの中でだ。異界アンダーワールドの外でも普通に存在しているのは小太郎くらい。


「ここ異界アンダーワールドの外じゃない!」


「「あっ」」


 今気づいたって感じだな。


「私は前にマスターギルド長と話をしているのを聞いていたので知っていました」


 あの時にいたんだ。覚えていない……。



「今現状、こうして現実世界に異界アンダーワールド怪異モンスターがいっぱいがいるじゃないですか。そう考えればおかしくないのでは?」


「そう言われると、そうなのかな?」


「違うから! なに騙されているんですか! 多田先輩! 騙されるのは男だけにしてください!」


「男に騙される、言うな! 一時の幸せを享受しているだけよ!」


 この人、駄目な人だ。探究者シーカーとしてはわからないけど、間違いなく人として駄目な人だとわかった。


 なんて話をしていると、怪異モンスターの大群第二陣がやって来た。やっぱり、餓鬼と邪鬼そして天邪鬼の混成部隊だ。


「十六夜は休んでいていいぞ」


「さて、ちょっとは体を動かすか」


 別に疲れていないけど、ニュアンス的に俺たちにも働かせろということだろう。じゃあ、俺は抜けてきた怪異モンスターりますか。


 土嚢の上から42式5.56mm小銃を怪異モンスターに向けている自衛隊員さんがいる所から、十メートルくらい前に立つ。フレンドリーファイアは勘弁してね。


 怪異モンスターの大群第二陣も先ほどと同じくらいの数に見える。錬さんたちと花音さんたちは危なげなく戦っている。こちらまで抜け出てくる怪異モンスターは数えるほどしかいないので、武器強奪を行なっている。


 別に売る気はない。質が悪いしこん棒などは売れないのがわかっている。たんなる暇つぶしだ。銃を構えた自衛隊員さんたちが不思議そうにこちらを見ているが気にしない。


 そうこうしていると、ギルド側の第二陣がやって来た。ギルドライフルーツのメンバーだ。


「助けはいらなさそうだな。どんな状況だ?」


「数は多いですけど、ザコ怪異モンスターなので」


 ライフルーツのリーダーさんに現状の状況説明。


「確かにザコだが、これが頻繁に来られると厄介だな。取りあえず、次は俺たちが出る」


 残りのギルドサンダーゲート浅草が来た時点で、自衛隊を交えてローテーションを決めると言っている。


 ちなみに、ギルドライフルーツは命蓮寺というお寺が母体のギルド。サンダーゲート浅草は……言わないよ! 言わなくてもわかるから! ダジャレか!?


 光明真会のメンバーが怪異モンスターの大群第二陣を蹴散らして戻って来た。


 俺の足元に転がる多数の武器を見て、


「俺たちが戦っているのに遊ぶ余裕があるとは、いい御身分だな。十六夜」


 と言ってくる錬さん。休んでいていいって言ってましたよね! それに、ちゃんと怪異モンスター倒してますから!


「ゴミを増やすな。十六夜」


 くっ……確かに金にならないこん棒ばかりだ。でもね花音さん、こん棒は薪になるんです! 火を焚いてる自衛隊にあげるんです! ちゃんと集めて収納しておく。


 その間に錬さんがライフルーツのリーダと話を済ませ、俺たちは一旦自衛隊の陣地内に入る。


 自衛隊員さんがコーヒーを用意してくれたけど、こういう善意が困りもの。俺、コーヒー飲まないから……。飲み終えた錬さんとカップを交換して、小太郎に水をやりながら俺も水を飲む。


 そうしていると、第三陣のサンダーゲート浅草のメンバーがやって来た。その間に来襲して来た怪異モンスターの大群は一度。ライフルーツ勢が殲滅している。


 待機していたライフルーツのリーダーを呼び、自衛隊と今後について打ち合わせを行う。その間は混合チームで戦うことになった。


 その打ち合わせ中、三度襲撃がありなぜか俺だけ最終ラインにずっと立たされた。まあいいんだけど、薪が増えたな……。


 自衛隊さんとの打ち合わせが終わり、リーダーたちが戻って来て怪異モンスターが来ない間に説明。


 怪異モンスターはあまり夜に活動しないようなので、ここの防衛と監視は自衛隊が行う。俺たちは日が暮れるまでここで防衛、日が暮れたらお休み。そして、明日の早朝から自衛隊の探究者シーカー部隊をここの防衛に残して、ギルド組は前進して調査を開始する。というスケジュールになった。


 まだ、お昼にもなっていない。これがあと半日続くのかぁ。連戦で自衛隊の探究者シーカー部隊がお疲れモードだったのもわかるな。


 昼を挟んで日が暮れる前までに九回の襲撃があった。お昼休憩以外、なぜか俺だけ最後尾にずっと立たされ続ける。そして、ゴミが増えていく……。


 このこん棒、固い木なので薪の大きさに割るのが大変だけど薪には最適。どうやらこの無人島、自然公園らしく勝手に木を切れないらしい。なので、自衛隊員さんたちには喜ばれている。


 日暮れ前の九回目の襲撃時、今度は俺だけ前に立たされた。自衛隊やほかのギルドが見てる前で、眷属召喚して戦えということらしい。錬さん的に、自衛隊やほかのギルドからイニシアティブを取りたいみたいだ。


 今日最後の戦いになると思われる怪異モンスターの大群。少し構成が変わっている。餓鬼、邪鬼が少し減って天邪鬼が増え、山姥も若干交っている。


 そろそろ、打ち止めなのか?


「はにゃ~」


「……」


「ヒヒィ~ン」


「にゃ~」


 おぉっ!? 珍しく小太郎がやる気だ。


 じゃあ、全員、突撃~!






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