225.乱舞高揚スキル

 さあ、おいでませはにわくん、はにわくんミニ!


「はにゃ~!」


「……」


 はにわくんを知らない三人がギョッとした目で驚いている。


「な、なんで、マギが出るんだ!?」


「十六夜くん。最初からマギを出して飛ばしすぎると、長時間持たないよ!」


 小幡さんは俺が異界アンダーワールド以外でもマギを出せることを知っているようだ。マギを多く持つ探究者シーカーもいることから、ありがたい助言が入るがご心配無用。


 それにはにわくんはマギじゃありません。俺のマギは首の後ろのフードの中にいますから!


「おばっちゃん、そいつのことは気にするな! 好きにやらせろ!」


「いいのかい!?」


「やれるな! 十六夜」


「うぃーす」


 さあ、はにわくんたちやっておしまいなさい!


 はにわくんとはにわくんミニが怪異モンスターの大群に突撃を開始。俺もカットラス二刀流で前に出る。この程度の相手なら氣もアビリティも必要ない。ついでに武器もいらない。


 はにわくんが怪異モンスターの大群と接触。六角棒を振り回せば一度に二、三体が宙に舞う。はにわくんミニも矛を構えて突進。複数の怪異モンスターを串刺しにしながら暴走列車の如く突き進む。


 我が眷属ながら、なんて頼もしいお姿。


「にゃ~」


 なになに、お馬さんも出せとな?


「にゃ~」


 あの中に突っ込ませる気か!? 


 小太郎も酷なことを考える。が、採用!


 お馬さん召喚! 行け! お馬さん突撃だ!


「ヒヒィ~ン!」


 走り出したお馬さんは止まらない。怪異モンスターの大群を跳ね飛ばしながら、縦横無尽に走り回る。


 怪異モンスターたちは逃げ惑ってるな。


 なんか、はにわくんたちで事足りそう? 


 俺は魂石充填のために歩き回り、ついでに生き残った怪異モンスター斬り伏せていく。


 この大混乱中の大群から抜け出して陣地方面に向かって行った怪異モンスターは数体。錬さんたちの任せていいだろう。


 それにしても、弱い! 弱すぎる! こんなに弱かったっけ? と思うほどに差がある。動きがスローモーションに見えるとまでは言わないが、周りを 囲まれても恐怖や焦りをまったく感じない。戦っていて楽しくてハイテンションになってくる。


 気づけば怪異モンスターがいない。


 あれ? 俺ってこんな性格だったっけ?


 異常状態か? と思い自分を残月で見ると乱舞高揚というスキルが発現している。乱戦になると高揚感が高まり全能力が二割増しになる良スキルのようだ。


 気配察知さ~ん、どこ行った?


 ついでに階位レベルが上がり、アビリティの朧月も覚えた。効果はスピードUP。二割五分増しで効果時間は三分、効果時間はレベルに依存。いいアビリティだな。


 はにわくんたちを労ってから帰還させ、陣地方面に戻る。


 沙羅以外、錬さんたちは呆れ顔。陣地から銃を構えていた自衛隊員さんたちからはなんか畏怖されているように感じる。Why?


「男子、三日会わざればって言うが……十六夜、化けたな」


 化けてはいませんが、強くなったのは感じてます。錬さん。


「十六夜くんは新人じゃなかったんですか!?」


 間違いなく新人です、小幡さん。


「十六夜! なかなかやるようになったじゃないか! 私の修行の成果が出たな!」


 肩が痛いのでそんなにバンバン叩かないでください。花音さん。小太郎もびっくりしています。


「アキくん、アキくん」


 なんでしょう? 沙羅さん。


「誰も気づいていないようだったけど、目が光ってたよ。赤と青に」


 まじ!? 


「今は元に戻っているよ」


 俺のことだけど、俺には何もわからない。聞いていませんよ、月読様!


 乱舞高揚ってスキルを覚えたのが理由か? それとも乱舞高揚を使うとそうなるのか? 検証が必要だ。


「十六夜。お前、途中から人が変わったように動きが良くなったが、あれはスキルか?」


「途中で乱舞高揚スキルというのが発現しました」


「乱舞高揚ねぇ。って、覚えたのかよ!? 高坂、知ってるか?」


「確か、身体強化系スキルにそんなのがあったような?」


 能力を説明する。


「そのスキル、アクティブなら最高だったな。状況依存のパッシブだと使い勝手が悪いな」


 乱戦なんてそうないからな。常日頃から、そうならないように注意しているし。


「そんなことより、三体同時にマギを出したら長期戦に耐えられないでしょう! 錬さん。気にするなとは、どういうことですか!」


「あれは十六夜のマギじゃねぇ。なんだっけ? 十六夜」


「アビリティで呼び出した眷属です」


「そう、眷属だったな。それと、そいつのマギは常時発現タイプのそいつのフードに隠れている子猫だ」


「にゃ~」


 小太郎、フードからちょこっと顔を出してご挨拶。


「「「常時発現タイプ!?」」」






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